10月25日に5年に一度の中国共産党大会が終わり、今後5年の新指導部(政治局常務委員)が選出された。習近平と李克強以外の5人は新メンバーで、全員60代。通例後継者として50代の委員を選ぶのだが、今回は見送られた。これは5年後も習近平が引き続き総書記として君臨するための布石だというのが大方の見方である。大会での3時間半の演説が話題になった。かつてのソビエト共産党のようだ。それにしても最近の習政権の言論弾圧の強化を目の当たりにすると、国内の格差・人権問題に非常に敏感になっており、強権で反政権の言動を封じ込めようとする意志が強固である。そして唱えている題目が、「新時代の共産主義」である。西欧の民主主義とは違う中国独自のやり方でやっていくということだが、独裁の危惧はどうしても払拭できない。毛沢東と鄧小平と並ぶカリスマになろうとしているようだが、奈何せん彼らのようなオーラがない。軍部も掌握して、こわもての外交を目指しているようだが、国内問題でつまずく危険性もある。それが経済問題だ。10月27日の朝日新聞の「中国、社会主義強国の道」という題のフオーラムで、現代中国研究家の津上俊哉氏が、習近平への権力集中は、経済分野では感じられないと述べたうえで、次のように言う、「中国には避けられない未来があります。一人っ子政策を緩和しましたが子どもはさほど増えず、労働人口の減少で経済成長は鈍化します。そして30年以降は高齢化による年金の負担が爆発的に増大する事態が待っています。その手前の段階で、すでに公共投資の債務が積み上がっている。国際通貨基金(IMF)は,22年には中国の政府、民間を合わせた債務がGDP比で300%近くに達すると警告しています。厳しい未来がはっきりしているのに、習氏の報告に抜本的な対策はない。それでいて30年後には世界のトップレベルになると、輝かしい未来が裏付けなく提示されている。私の目から見ると空虚で、説得力がないのです」と。津上氏の見解は最近の記事の中では秀逸で、傾聴すべきだと思う。氏の発言で出てきた「一人っ子政策」について、それが中国にどういう影響を与えたのかを論じたのが本書である。
この政策が発表されたのが、1980年9月25日。以来35年間続けられたが、労働人口の減少と父母の高齢化に伴う介護の問題等が危惧されて廃止になった。しかし、それで子どもが増えるかと言うとそうでもないのが現状だ。今のサラリーではとても2人目を生む自信がない等々、一人っ子に慣れた生活習慣と社会システムはそう簡単に変えられないのが現状だ。この政策がとられた背景には、国民一人当たりのGDPを手っとり早く上げるためには、生産性を上げると同時に、人口増加を抑制しなければならないという課題があった。すると人口増加を抑制する方がはるかに容易だと考えた指導部はこれを実行に移したのである。この政策の理論的根拠はロケット学者の宋健という人物で、彼は中国の出生率を抑制する数学的方法論を編み出し、指導部がこれを採用したのである。そして併行して一人っ子政策を厳重に取り締まる計画出産委員会ができた。人口警察とも言われる巨大な組織で、8500万人のパートタイム指導員がいて、無理やり2人目を人工中絶させたことも多々あったようだ。政策を順守するために人権を無視したやり方が横行する。共産党の官僚主義の悪しき一面が現れ、人民を恐怖に陥れるのだ。その他一人っ子政策による余波と言うべき問題が具体的にレポートされており、読み応えがあった。
習政権は一人っ子政策の負の遺産をどう継承し、問題解決していくのか。前途は多難である。
この政策が発表されたのが、1980年9月25日。以来35年間続けられたが、労働人口の減少と父母の高齢化に伴う介護の問題等が危惧されて廃止になった。しかし、それで子どもが増えるかと言うとそうでもないのが現状だ。今のサラリーではとても2人目を生む自信がない等々、一人っ子に慣れた生活習慣と社会システムはそう簡単に変えられないのが現状だ。この政策がとられた背景には、国民一人当たりのGDPを手っとり早く上げるためには、生産性を上げると同時に、人口増加を抑制しなければならないという課題があった。すると人口増加を抑制する方がはるかに容易だと考えた指導部はこれを実行に移したのである。この政策の理論的根拠はロケット学者の宋健という人物で、彼は中国の出生率を抑制する数学的方法論を編み出し、指導部がこれを採用したのである。そして併行して一人っ子政策を厳重に取り締まる計画出産委員会ができた。人口警察とも言われる巨大な組織で、8500万人のパートタイム指導員がいて、無理やり2人目を人工中絶させたことも多々あったようだ。政策を順守するために人権を無視したやり方が横行する。共産党の官僚主義の悪しき一面が現れ、人民を恐怖に陥れるのだ。その他一人っ子政策による余波と言うべき問題が具体的にレポートされており、読み応えがあった。
習政権は一人っ子政策の負の遺産をどう継承し、問題解決していくのか。前途は多難である。