著者は1930年代のソヴィエト・ロシア史を研究するロシア連邦の第一人者。ロシア連邦国立文書館に長く勤務し、現在モスクワ大学歴史学部教授。スターリンの伝記はたくさん出ているが、本書を読むと今まではっきりしなかったことが明確に書かれている。
一つ目はスターリンの最期の様子だ。彼は1953年3月2日に脳卒中で倒れたが、側近の幹部は部屋に入ることをためらい、スターリンの病状を把握できなかった。なぜスターリンの部屋に入らなかったかというと無断で入ってスターリンの怒りを買うことを恐れたためであった。それほどスターリンは恐怖政治を敷いていたのだ。やっと医者を呼んだがすでに手遅れだった。幹部連中が臨終に立ち会ったが、「死の苦悶は恐ろしいものだった。まさに最後の一瞬のように思えたときに、彼は突然目を開き、部屋にいる全ての者たちを一瞥した。その一瞬の眼差しは恐ろしく、狂ったものなのか、あるいは怒った者なのか、いずれにせよ死への恐怖で満ち満ちていた。彼は突然左腕を上げて、何か上にあるものを指さしながらわれわれ全員に呪いをもたらしているかの楊だった。その動きは理解しがたく、脅迫に満ち溢れていた。(後略)」と娘のスヴェトラーナが回想している。彼女は最後の数日間を父の傍らで過ごしていた。事程左様にスターリンはデモーニッシュな存在なのであった。
二つ目は農民に対する弾圧の模様だ。彼は集団農場コルホーズに農民を囲い込むために、クラーク(富農)を攻撃し、財産と農具を剥奪した。コルホーズは、農産物や他の資源を急速かつ効率的に農村から汲み上げ、工業へ送り込むための導管として役立つと考えた。農民は国の最大部分であるが、国家への重大な脅威にならないという考えで、彼らを弾圧して大飢饉へと導くことになった。これで500万人以上の餓死者が出た。毛沢東の大躍進運動と同じ構図である。このことは第3章「彼の革命」に詳しい。
三つ目は「独ソ戦」開始前のスターリンの動揺の様子である。最初彼は、ナチスが攻め込んでくることは想定外であって、スパイのデマだと考えていた。この当時彼は共産党内の粛清を実行している矢先で、疑心暗鬼に陥っていたからである。しかし、ナチスの侵攻が現実のものとわかってからも、その対応が稚拙で赤軍と市民に大きな犠牲を強いることになった。
四つ目は権力者としての在り方について、著者は言う、「彼はソ連の人々がどのような条件下で生活しているのか、彼らは何をどこで買い、どのような医療や教育を受けているのかとする関心を、一度も抱かなかった。彼のもとに届く普通の市民からの手紙や苦情をjほとんど読まなかった」と。自分の敵を粛清しそれが高じて国民を大虐殺する結果を招く。全体主義の通弊である。
レーニンの陰に隠れながらトロッキーのような弁舌の才能もない元神学生が権力を奪取していく様は、どこかの小宰相と似ている。権力の乱用は本当に怖い。
一つ目はスターリンの最期の様子だ。彼は1953年3月2日に脳卒中で倒れたが、側近の幹部は部屋に入ることをためらい、スターリンの病状を把握できなかった。なぜスターリンの部屋に入らなかったかというと無断で入ってスターリンの怒りを買うことを恐れたためであった。それほどスターリンは恐怖政治を敷いていたのだ。やっと医者を呼んだがすでに手遅れだった。幹部連中が臨終に立ち会ったが、「死の苦悶は恐ろしいものだった。まさに最後の一瞬のように思えたときに、彼は突然目を開き、部屋にいる全ての者たちを一瞥した。その一瞬の眼差しは恐ろしく、狂ったものなのか、あるいは怒った者なのか、いずれにせよ死への恐怖で満ち満ちていた。彼は突然左腕を上げて、何か上にあるものを指さしながらわれわれ全員に呪いをもたらしているかの楊だった。その動きは理解しがたく、脅迫に満ち溢れていた。(後略)」と娘のスヴェトラーナが回想している。彼女は最後の数日間を父の傍らで過ごしていた。事程左様にスターリンはデモーニッシュな存在なのであった。
二つ目は農民に対する弾圧の模様だ。彼は集団農場コルホーズに農民を囲い込むために、クラーク(富農)を攻撃し、財産と農具を剥奪した。コルホーズは、農産物や他の資源を急速かつ効率的に農村から汲み上げ、工業へ送り込むための導管として役立つと考えた。農民は国の最大部分であるが、国家への重大な脅威にならないという考えで、彼らを弾圧して大飢饉へと導くことになった。これで500万人以上の餓死者が出た。毛沢東の大躍進運動と同じ構図である。このことは第3章「彼の革命」に詳しい。
三つ目は「独ソ戦」開始前のスターリンの動揺の様子である。最初彼は、ナチスが攻め込んでくることは想定外であって、スパイのデマだと考えていた。この当時彼は共産党内の粛清を実行している矢先で、疑心暗鬼に陥っていたからである。しかし、ナチスの侵攻が現実のものとわかってからも、その対応が稚拙で赤軍と市民に大きな犠牲を強いることになった。
四つ目は権力者としての在り方について、著者は言う、「彼はソ連の人々がどのような条件下で生活しているのか、彼らは何をどこで買い、どのような医療や教育を受けているのかとする関心を、一度も抱かなかった。彼のもとに届く普通の市民からの手紙や苦情をjほとんど読まなかった」と。自分の敵を粛清しそれが高じて国民を大虐殺する結果を招く。全体主義の通弊である。
レーニンの陰に隠れながらトロッキーのような弁舌の才能もない元神学生が権力を奪取していく様は、どこかの小宰相と似ている。権力の乱用は本当に怖い。