新自由主義経済学者である著者が、アメリカのサブプライムローン破綻による世界経済の恐慌を目の当たりにして、これではダメだということで新自由主義からの転向を宣言した書である。小泉構造改革の先駆的な広告司令塔的役割を担って来ただけに発売と同時に大きな話題になった。そして今回の衆議院総選挙で自民党が惨敗を喫したことを思えば、政治の大転換を予言した書とも言える。一読して、暴走する資本主義に対してその波に呑み込まれた日本の問題点と反省が縷々述べられ、アメリカかぶれの経済学者(自分も含めて)の責任が批判的に描かれている。1960~1970年代のアメリカの豊かさは日本の比ではない。テレビでみるアメリカの中流階級の輝くばかりの生活は我々貧乏な日本人からすれば羨望の的であった。「パパは何でも知っている」というテレビドラマはそういうアメリカの中流家庭の日常を描いて、大いに視聴率を上げていた。高校生が車を所有して日常的に運転するという生活がそもそも日本ではありえないことだった。広い家に大きな冷蔵庫、広いキッチンに大型犬、美人の妻にエリートの夫、アメリカはまさに地上のパラダイスだった。そういうアメリカの名門ハーバード大学大学院に一橋大学を出て学んだ著者は日本のエリートで、アメリカに魅了され、批判的にみる視点を持ち得なかったとしても無理はない。
本書はこの懺悔の部分が一番面白く読めた。その他は経済史・世界史の復習のような感じで、特に目新しい記述はないが、経済においても「信頼」というものが、大切であると説く部分に懺悔の心情が色濃く出ていると感じた。「信なくんば立たず」というやつである。政権を取った民主党はこの自民党が残した新自由主義による負の遺産をどう処理するのか、興味深い。同じ轍を踏まないことを祈るばかりだ。それにしても、小泉元首相の下で、アメリカの言いなりになって規制緩和の旗を振った竹中平蔵氏はいつ懺悔・転向の書を出すのだろう。
本書はこの懺悔の部分が一番面白く読めた。その他は経済史・世界史の復習のような感じで、特に目新しい記述はないが、経済においても「信頼」というものが、大切であると説く部分に懺悔の心情が色濃く出ていると感じた。「信なくんば立たず」というやつである。政権を取った民主党はこの自民党が残した新自由主義による負の遺産をどう処理するのか、興味深い。同じ轍を踏まないことを祈るばかりだ。それにしても、小泉元首相の下で、アメリカの言いなりになって規制緩和の旗を振った竹中平蔵氏はいつ懺悔・転向の書を出すのだろう。