著者はベラルーシ出身で、2015年度のノーベル文学賞の受賞者である。この時は村上春樹が取るのではないかという予想が有力だったが、この人の名が上がったとき意外だという人が多かったのではないか。私もその一人で、彼女のことは知らなかった。しかし本書を読むと、村上の世界とはまるで違い、非常にシリアスで重い素材を扱っており、こちらの方がノーベル文学賞にふさわしい。中身は第二次世界大戦でソ連の兵士としてナチスドイツと戦った従軍女性(500人以上)の戦後のインタビュー(1978~2004)を集めたものである。
ソ連は連合国の一員として第二次世界大戦に勝利したが、戦争の初期にドイツ軍に攻め込まれたあと、18歳以上なら男女の別なく軍務につけた。女たちが飛行士、狙撃手からパルチザンの仲間という具合に実戦の構成員であった国はない。驚きの事実である。中には年齢を偽って15~16歳で軍隊に潜り込んだ少女もいる。男に混じってドイツ軍と戦った従軍女性の封印された歴史が語られる。しかし彼女たちが戦争体験を語るまでには相当の紆余曲折があった。戦後彼女たちに浴びせられたのは「戦地に行って男の中で何をしてきたやら」という心ない中傷であった。男たちもこの中傷にまともに立ち向かわず、女性たちが孤立し、口を開かなくなった。その中での証言集めである。その苦労如何ばかりであったろう。
彼女たちによって語られる「戦争の生と死」の諸相は、戦争の残虐・無慈悲を改めて読者の胸に刻みつける。
狙撃兵として初めてドイツ兵を撃った時の回想、「敵と言ったて人間だわ」と撃つことを決めた時に一瞬閃いた。両手が震え始めて、全身に悪寒が走った。恐怖のようなものが、、、、、。今でも、眠っている時、ふとあの感覚が蘇ってくる。ベニヤの標的は撃ったけど生きた人間を撃つのは難しかった。銃眼を通して見ているからすぐに近くにいるみたい、、、。私の中で何かが抵抗している。どうしても決心できない。私は気を取り直して引き金を引いた。彼は両腕を振り上げて、倒れた。死んだかどうかわからない。その後は震えがずっと激しくなった。恐怖心にとらわれた。私は人間を殺したんだ。この意識に慣れねばならなかった。そう、一言で言えば、、、たまらないって感じ。忘れられない。
戦場は殺すことの罪悪感を希薄化する。やらなければ、こちらがやられるという恐怖心は殺人を正当化する。しかしこのトラウマは生き延びて戦場を離れたあと心を苛む。悲劇以外のなにものでもない。
別の回想、戦闘は激しいものでした。白兵戦です、、、、。これは本当に恐ろしい、、、、。人間がやることではありません。殴りつけ、銃剣を腹や眼に突き刺し、喉元をつかみあって首をしめる。骨を折ったり、呻き声、悲鳴が渦巻いています。頭骸骨にひびが入るのが聞こえる、割れるのが、、、戦争の中でも悪夢の最たるもの、人間らしいことなんか何もない。戦争が恐ろしくないなんていう人がいたら絶対信じないわ。、、、
政権与党の幹部はこれを読んで、戦争の恐ろしさを肝に銘じてほしい。女性が輝く社会も良いが、くれぐれも戦場で活躍することのないように。
ソ連は連合国の一員として第二次世界大戦に勝利したが、戦争の初期にドイツ軍に攻め込まれたあと、18歳以上なら男女の別なく軍務につけた。女たちが飛行士、狙撃手からパルチザンの仲間という具合に実戦の構成員であった国はない。驚きの事実である。中には年齢を偽って15~16歳で軍隊に潜り込んだ少女もいる。男に混じってドイツ軍と戦った従軍女性の封印された歴史が語られる。しかし彼女たちが戦争体験を語るまでには相当の紆余曲折があった。戦後彼女たちに浴びせられたのは「戦地に行って男の中で何をしてきたやら」という心ない中傷であった。男たちもこの中傷にまともに立ち向かわず、女性たちが孤立し、口を開かなくなった。その中での証言集めである。その苦労如何ばかりであったろう。
彼女たちによって語られる「戦争の生と死」の諸相は、戦争の残虐・無慈悲を改めて読者の胸に刻みつける。
狙撃兵として初めてドイツ兵を撃った時の回想、「敵と言ったて人間だわ」と撃つことを決めた時に一瞬閃いた。両手が震え始めて、全身に悪寒が走った。恐怖のようなものが、、、、、。今でも、眠っている時、ふとあの感覚が蘇ってくる。ベニヤの標的は撃ったけど生きた人間を撃つのは難しかった。銃眼を通して見ているからすぐに近くにいるみたい、、、。私の中で何かが抵抗している。どうしても決心できない。私は気を取り直して引き金を引いた。彼は両腕を振り上げて、倒れた。死んだかどうかわからない。その後は震えがずっと激しくなった。恐怖心にとらわれた。私は人間を殺したんだ。この意識に慣れねばならなかった。そう、一言で言えば、、、たまらないって感じ。忘れられない。
戦場は殺すことの罪悪感を希薄化する。やらなければ、こちらがやられるという恐怖心は殺人を正当化する。しかしこのトラウマは生き延びて戦場を離れたあと心を苛む。悲劇以外のなにものでもない。
別の回想、戦闘は激しいものでした。白兵戦です、、、、。これは本当に恐ろしい、、、、。人間がやることではありません。殴りつけ、銃剣を腹や眼に突き刺し、喉元をつかみあって首をしめる。骨を折ったり、呻き声、悲鳴が渦巻いています。頭骸骨にひびが入るのが聞こえる、割れるのが、、、戦争の中でも悪夢の最たるもの、人間らしいことなんか何もない。戦争が恐ろしくないなんていう人がいたら絶対信じないわ。、、、
政権与党の幹部はこれを読んで、戦争の恐ろしさを肝に銘じてほしい。女性が輝く社会も良いが、くれぐれも戦場で活躍することのないように。