1914年とは、第一次世界大戦下、ドイツ軍が立て籠もる青島要塞の攻略戦で日本陸海軍の飛行機が偵察や爆撃、ドイツ軍飛行機との空中戦など、初の実戦を体験した年である。1945年は勿論敗戦の年である。この間、日本は制空権の獲得の重要性から、飛行機の量産体制を視野に入れて、国民に飛行機の宣伝をいろいろ行なっていたというのが本書の概要だ。
従来日本海軍は戦艦大和や武蔵に代表されるような「大艦巨砲主義」に囚われて、飛行機の重要性を認識していなかった。これが敗戦の原因になったということが言われているが、これは誤りだということを、多くの資料を使って論証している。なるほどあの戦艦大和や武蔵は巨費を投じて造られた最高速度速度27ノットを誇る素晴らしい戦艦である。しかし就航して以降、華々しい活躍を見せることなく、武蔵はレイテ沖海戦で、大和は沖縄へ向かう途中で、敵の飛行機の総攻撃を受けて沈没した。あのイメージが「大艦巨砲主義」の欠点を助長したことは否めない。
例の真珠湾攻撃は、航空母艦から飛び立った飛行機の爆弾投下によって戦果をあげたのであるから、山本五十六指令長官を始めとして、海軍の幹部は飛行機の重要性を認識していたはずである。そうでなければこのような作戦は計画しないだろう。にも関わらず、「大艦巨砲主義」批判が起こる所以は、戦後の戦争責任を議論する中で、「軍独特のひずみ」を象徴するものとして取り上げられたことにあると著者は言う。ワシントン条約以降、(「百発百中の一砲能く百発一中の敵砲百門に対抗し得る」という)この非科学的思想は軍縮戦法に、訓練に、造艦造兵思想にひろがったという軍事史家・大江志乃夫の説などが影響していると述べている。
「天皇の軍隊」は「国民の軍隊」でもあり、その国民ともたれ合うようなかたちで無謀な開戦に突入していった点は忘れてはならない。その「もたれあい」の証拠として著者があげるのは、国民による陸海軍への飛行機献納活動(一人一人がお金を出し合うこと)である。陸海軍は飛行機の重要性をことあるごとに国民に宣伝して、その重要性を訴えた。将来日本が敵機に空襲され甚大な被害を被る可能性を示唆し、それを迎撃する飛行機を持つ必要があるといったことなどである。この空襲への恐怖は防空演習などで国民に刷り込まれた。また飛行機の宣伝の一環として、貧困層の立身出世の手段として航空兵になる道を勧めたことや、学校が航空兵志願に親への説得など一役買ったことが記されている。
戦争はしてはならないというが、政府のプロパガンダによって国民がじわじわと巻き込まれる様子が、飛行機礼賛運動にみてとれる。新書にしては分厚くなったのは、その資料を私たちに提供してくれたからだ。
従来日本海軍は戦艦大和や武蔵に代表されるような「大艦巨砲主義」に囚われて、飛行機の重要性を認識していなかった。これが敗戦の原因になったということが言われているが、これは誤りだということを、多くの資料を使って論証している。なるほどあの戦艦大和や武蔵は巨費を投じて造られた最高速度速度27ノットを誇る素晴らしい戦艦である。しかし就航して以降、華々しい活躍を見せることなく、武蔵はレイテ沖海戦で、大和は沖縄へ向かう途中で、敵の飛行機の総攻撃を受けて沈没した。あのイメージが「大艦巨砲主義」の欠点を助長したことは否めない。
例の真珠湾攻撃は、航空母艦から飛び立った飛行機の爆弾投下によって戦果をあげたのであるから、山本五十六指令長官を始めとして、海軍の幹部は飛行機の重要性を認識していたはずである。そうでなければこのような作戦は計画しないだろう。にも関わらず、「大艦巨砲主義」批判が起こる所以は、戦後の戦争責任を議論する中で、「軍独特のひずみ」を象徴するものとして取り上げられたことにあると著者は言う。ワシントン条約以降、(「百発百中の一砲能く百発一中の敵砲百門に対抗し得る」という)この非科学的思想は軍縮戦法に、訓練に、造艦造兵思想にひろがったという軍事史家・大江志乃夫の説などが影響していると述べている。
「天皇の軍隊」は「国民の軍隊」でもあり、その国民ともたれ合うようなかたちで無謀な開戦に突入していった点は忘れてはならない。その「もたれあい」の証拠として著者があげるのは、国民による陸海軍への飛行機献納活動(一人一人がお金を出し合うこと)である。陸海軍は飛行機の重要性をことあるごとに国民に宣伝して、その重要性を訴えた。将来日本が敵機に空襲され甚大な被害を被る可能性を示唆し、それを迎撃する飛行機を持つ必要があるといったことなどである。この空襲への恐怖は防空演習などで国民に刷り込まれた。また飛行機の宣伝の一環として、貧困層の立身出世の手段として航空兵になる道を勧めたことや、学校が航空兵志願に親への説得など一役買ったことが記されている。
戦争はしてはならないというが、政府のプロパガンダによって国民がじわじわと巻き込まれる様子が、飛行機礼賛運動にみてとれる。新書にしては分厚くなったのは、その資料を私たちに提供してくれたからだ。