竹とんぼ

家族のエールに励まされて投句や句会での結果に一喜一憂
自得の100句が生涯目標です

春浅し心の添はぬ手足かな 多田まさ子

2020-02-02 | 今日の季語

春浅し心の添はぬ手足かな 多田まさ子

立春といっても時折日差しの温盛に気付くぐらいで
春だという実感はほとんどない
しかしながら報道や世情は春の到来を鼓舞してはばからない
気持ちはそれに呼応するのだが
手足はそれを納得していない
心のまぬとはよきぞ言いえたと感嘆した
(小林たけし)

なにが嫌、というわけでもなく、どこか具合が悪い、というわけでもなく、今日も朝から忙しく働いて1日が過ぎる。これ以上青くはなれない二月の空、ひとあし先に春めいてきた日差しとまだまだ冷たい風。そんな季節の狭間の戸惑いに、内なる戸惑いが揺り動かされ、静かに作者の中に広がる。春の華やぎの中で感じる春愁より、季節も心持ちも茫洋としてつかみどころがない。でも風が冷たい分、その心情はすこし寂しさが強いように思う。ともかく、しなければならないことが山積みでゆっくり考えているヒマがないことが良いのか悪いのか。ただ、こうして動いている手足は自分のもので、これからはだんだん暖かくなっていくのだ、ということは確かなのである。『心の雫』(2009)所収。(今井肖子)

【春浅し】 はるあさし
◇「浅き春」 ◇「浅春」(せんしゅん)

早春とほぼ同じであるが、春になって間がなく、まだ春らしい気配が十分に感じられないさま。

例句 作者
春浅き水を渡るや鷺一つ 河東碧梧桐
春浅き海へおとすや風呂の水 飴山 實
病牀の匂袋や浅き春 正岡子規
春浅し若狭かれひの透ける身も 原田青児
春浅し相見て癒えし同病者 石田波郷
春浅く火酒したたらす紅葉かな 杉田久女
白き皿に絵の具を溶けば春浅し 夏目漱石
春浅き水音めぐる都府楼址 能村登四郎
春浅し空また月をそだてそめ 久保田万太郎
春浅し一緒にのぞくマンホール 根津芙紗