竹とんぼ

家族のエールに励まされて投句や句会での結果に一喜一憂
自得の100句が生涯目標です

一人づつきて千人の受験生  今瀬剛一

2020-02-11 | 今日の季語


一人づつきて千人の受験生  今瀬剛一

受験生の孤独
そして壮烈なる闘争
まだ春寒いなか白い息を吐きながらあ一人ずつ試験場へ
やがて数えきれない闘争相手が並ぶ
受験とはそもそもは優生学からの選別なのだ
(小林たけし)

俳句に数字を使う時、ともすれば象徴的になる。特に「千」は、先ごろ流行った歌の影響もあってか、以前よりよく見かける気がするし、つい自分でも使ってしまう。ようするに、とても多いという意味合いだ。しかしこの句の千人は、リアリティのある千人。象徴的な側面もあるだろうけれど、まさに、見ず知らずの一人ずつが千人集まるのが受験生だ。しかも、同じ目的を持ちながら全員がライバル、というより敵である。そしてそれぞれ、千人千色の日々と道のりを背負っている。一と千、二つの数字を本来の意味で使い、省略を効かせて受験生の本質を詠んだ句と思うが、さらにひらがな表記の、きて、がそれらをつないで巧みである。二月も半ば、中学入試が一段落して、これから高校、大学と受験シーズン真っ只中。この季節は、一浪しても第一志望校に拒絶されたことと共に、あれこれ思い出され、幾つになってもほろ苦い。当時は、全人格を否定されたような気持ちになったが、まあ今となれば、生きていればいいこともあるなと思える。街に溢れるバレンタインのハートマークを横目に、日々戦う受験生に幸多かれ。『俳句歳時記 第四版 春』(2007・角川学芸出版)所載。(今井肖子)

【入学試験】 にゅうがくしけん(ニフ・・)
◇「受験」
高等学校、大学あるいは私立の小・中学校などの入学試験をいう。ほとんど2月から3月にかけて行われ及第が決定する。

例句 作者

受験禍の母子電柱に相寄りて 中村草田男
受験期や多摩の畷の土けむり 中 拓夫
甘えたき時は腹へる受験の子 染谷佳之子
受験生呼びあひて坂下りゆく 廣瀬直人