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くれなゐの水飛沫なり囀りは 石倉夏生
掲句に出会いあらためて「くれなゐ」の意をしらべると
なんとも雅な深い意味合いに感嘆した
「くれなゐ」を冠した小説、和歌などは
ほとんどが恋の様々を表意している
語感もの響きも美しい
掲句の「くれなゐの水渋木」は正に恋の騒乱なのだと分かる
作者のしかけにほとほと感心させられた一句だ
(小林たけし)
【囀】 さえずり(サヘヅリ)
◇「囀る」
春の鳴禽類の囀りをいう。地鳴きと区別して、高音を張ったり、声を長く複雑に続けて鳴いたり、色々な文句を交唱したりする鳴き方に言う。特に繁殖期における雄鳥の鳴き声をいう。
例句 作者
いしぶみの表裏に雨意の百千鳥 宇多喜代子
おおぶろしき弟のさえずりと聞くよ 末永こるり
さえずりの1/2のすりらんか 山本敏倖
さへずりや遍路の笠の花結び 吉田未灰
だんだんに囀りの木の濡れてきし 岡本高明
みほとけはいづち見給ふ百千鳥 上田五千石
サンドイッチの面積を囀りぬ 赤羽根めぐみ
一木の沈黙永し百千鳥 三橋敏雄
一樹にして森なせりけり百千鳥 山口青邨