竹とんぼ

家族のエールに励まされて投句や句会での結果に一喜一憂
自得の100句が生涯目標です

桃の花家半ばまで陽が入りて 森 澄雄

2021-03-10 | 今日の季語


桃の花家半ばまで陽が入りて 森 澄雄

長い暗い重たい冬がどうやら退いて
梅の花が咲く春が訪れた
その喜びを
開け放った縁側から座敷の半ばまで
日がさしこんでいる
待ちかねた春到来のよろこびが見事に表されている
(小林たけし)

【桃の花】 もものはな
◇「白桃」 ◇「緋桃」(ひもも)
バラ科の落葉小高木。中国原産。4月頃、葉に先立って淡紅色または白色の五弁の、蘂が長く鄙びた愛らしい花を開く。桜や梅にくらべて花が大きい。果実は大形球形で美味。古くから日本に栽培、邪気を払う力があるとされた。雛祭には欠かせない花である。

例句 作者

ふだん着でふだんの心桃の花 細見綾子
葛飾や桃の籬も水田べり 水原秋櫻子
鶏鳴も花桃ねむき彼方より 飯田龍太
ゆるぎなく妻は肥りぬ桃の下 石田波郷
桃花園へ降るふらんねるの太陽 伊藤敬子
にはとりが鳴き牛が鳴き桃の村 杉 良介
百姓に今夜も桃の花盛り 永田耕衣
桃咲いて隣りに赤子生まれさう 山本洋子
イヴ居ずや砂地に桃の咲き満てり 大高弘達


桃始笑
七十二侯は「桃始笑(ももはじめてさく)を迎えました。


桃の木はかつて中国で魔を払う力がある霊木とされてきたため、「兆す」の字をあてられています。理想郷やユートピアとしての「桃源郷」も、不老不死の桃の実がなる仙境の伝説からきていますし、鬼を退治にいく桃太郎伝説もここから来ています。

由来はともあれ、実際の桃の花や枝ぶりをみると、素直というか、無邪気というか、梅のような品格はなく、桜のような豪華さもないけれど、女の子のとびっきりの笑顔のような愛らしさがあります。

女の子の成長を祝う「桃の節句」のルーツは、中国最古の詩集『詩経』の「花嫁の歌」にあります。桃はいわば気立てのよい女の子の象徴で、古代の中国では旧暦三月の桃の咲く頃に結婚式を挙げる風習があり、嫁ぐ娘たちの幸せな門出を祝う歌だったようです。