
緑なす松や金欲し命欲し 石橋秀野
誰にでも、季節は平等にめぐりくる。が、受け取り方は人さまざまだ。病者にとっては、とくに春のつらい人が多い。中途半端な気温、中途半端な自然の色彩。あるいはそこここでの生命の息吹きが、衰えていく身には息苦しいからである。そんな心境を強く表白すれば、この句のようになる。この句を読んで、誰も「あさましい」などとは思わないだろう。今年も、元気者だけのための「ゴールデン・ウィーク」がやってくる。(清水哲男)
作者が山本健吉氏の妻女と知って
もう一度句をしみじみと読んでみた
(小林たけし)
【新緑】 しんりょく
◇「緑」 ◇「緑さす」
初夏の樹木の目の覚めるような若葉の緑をいう。「新緑」という語感からも爽やかさが感じられる言葉である。
例句 作者
みどりの夜子は一本の眠れる矢 高野ムツオ
みどり差す背中の張りし半跏像 浪本恵子
わが城あり緑を窓に工場崩れ 堀葦男
人頭に鳥身みどりの夜を歩き 高野ムツオ
公園の見取図どこも緑濃し 伴場とく子
大学の緑を濃くす培養基 中村路子
嬬恋に友あり句碑あり緑濃き 松本真津子
子の皿に塩ふる音もみどりの夜 飯田龍太
弱き祭行けど片側をみどりの森 和田悟朗
恐ろしき緑の中に入りて染まらん 星野立子
戦後みどりなす柳屋のポマード 川名つぎお
新緑や手を高々と交差点 高橋和彌
木のみどり草のみどりに罠かける 津根元潮
みどりの夜子は一本の眠れる矢 高野ムツオ
みどり差す背中の張りし半跏像 浪本恵子
わが城あり緑を窓に工場崩れ 堀葦男
人頭に鳥身みどりの夜を歩き 高野ムツオ
公園の見取図どこも緑濃し 伴場とく子
大学の緑を濃くす培養基 中村路子
嬬恋に友あり句碑あり緑濃き 松本真津子
子の皿に塩ふる音もみどりの夜 飯田龍太
弱き祭行けど片側をみどりの森 和田悟朗
恐ろしき緑の中に入りて染まらん 星野立子
戦後みどりなす柳屋のポマード 川名つぎお
新緑や手を高々と交差点 高橋和彌
木のみどり草のみどりに罠かける 津根元潮