
春風や恥より赤きドレスを着て 中烏健二
はて、どんな色だろう、「恥より赤き」色とは……。などと考えてみても、もちろんわかりっこない。そもそもが「赤恥」というときの「赤」それ自体が色彩ではないからだ。これは、作者のちょっとした思いつきで書かれた句。書いてみたら、作者にはなんだかとんでもなくトンチンカンな色彩が現出してきたようで、面白い味が出たというところか。春風のおおらかな気分ともマッチしている。言葉遊びの句には飽きてしまうものが多いが、少なくとも私のなかでは、この句、けっこう長生きなのである。『愛のフランケンシュタイン』所収。(清水哲男)
作者の前を闊歩する婦人のドレスの真紅
かってこれほど鮮やかな朱色をみたことがあったろうかと目を疑う
さてこの婦人
作者の細君ではないか
でなければ「廃棄より赤い」はなかなか出るまい
(小林たけし)
【春の風】 はるのかぜ
◇「春風」 ◇「春風」
暖かくのどかな春の、東または南から吹く柔らかな風。ときには強風が吹くが、寒くない。とくに春風と言う場合は、駘蕩たるおだやかな風である。
例句 作者
膝抱いてゐる手を春の風が解く 粟津松彩子
泣いてゆく向ふに母や春の風 中村汀女
春風や闘志いだきて丘に立つ 高浜虚子
春風に暮れてひと冷ゆ大伽藍 原 石鼎
国曳いて来よ春風の真ん中を 榎本好宏
春風や堤長うして家遠し 蕪村
退院の一歩春風まとふなり 朝倉和江
春風を腹いつぱいに河馬沈む 白岩三郎
大原女の荷なくて歩く春の風 星野立子
長男として春風の家にあり 森田 峠