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竹とんぼ

家族のエールに励まされて投句や句会での結果に一喜一憂
自得の100句が生涯目標です

道に弾む成人の日の紙コップ 秋元不死男

2021-01-11 | 今日の季語


道に弾む成人の日の紙コップ 秋元不死男


晴て飲酒を許される成人の日の若者の声が聞こえる
少々の羽目外しも大目にみられる
紙コップの酒は弾んで飲むより零れるほうが多いかもしれない
女子は晴の装いで久の幼馴染と語り合う
そこぬけの祝いに酔いしれて親も感慨はひとしおである
(小林たけし)


【成人の日】 せいじんのひ
◇「成人祭」 ◇「成人式」
戦後定められた国民の祝日。満二十歳に達し成人となった男女を祝福する日。

例句 作者

足袋きよく成人の日の父たらむ 能村登四郎
山畑を遠回りして成人す 吉田鴻司
徴兵ない成人の日の孫らへ酌む 大木石子
成人の日の生温き水を飲む 長谷川はるか
成人の日をくろがねのラツセル車 成田千空
新成人川なき橋を渡りけり 対馬康子
明日に履く新成人の靴大き 八木筬大
遠富士や成人の日の観覧車 井上匡
風の名を一つ覚える成人日 佐藤日和太

そくばくの余命を惜しみ寒灸 西島麦南

2021-01-10 | 今日の季語


そくばくの余命を惜しみ寒灸 西島麦南

余命をそくばくと憂いながらも惜しむとは
業を知る達人の生きざまだ
厳しい寒さの中の灸である
おかしいようで笑えない
(小林たけし)


【寒灸】 かんきゅう(・・キウ)
◇「寒灸」
漢方療治のひとつの灸は四季を通じて行われるが、極寒に行う「寒灸」と8月の炎暑の「土用灸」は殊に効くと言われる。

例句 作者

風の子や裸で逃げる寒の灸 一茶
方丈に子らを遊ばせ寒の灸 香川はじめ
寒灸や悪女の頸のにほはしき 飯田蛇笏
寒灸の効きくる膝をしかと抱く 渡辺青萠
文弱の身を自愛して寒灸 鮒田美智子
百会からたましいのぼる寒の灸 丹後日出雄




寒雷やびりりびりりと真夜の玻璃 加藤楸邨

2021-01-09 | 今日の季語


寒雷やびりりびりりと真夜の玻璃 加藤楸邨


真夜の玻璃
真夜中のガラス窓のたてる音
大きな寒雷に実際は聞こえていないガラスの悲鳴
びりりびりり のオノマタベはなかなか言えない
(小林たけし)


冬の雷】 ふゆのらい
◇「寒雷」
冬に鳴る雷。一般的に雷は夏のものであるが、少ないが冬にも鳴る。特に日本海側では多いとされる。しかし、夏の雷とは異なり、少し鳴って止んでしまうが、重厚な響きが心に沁みる。

例句 作者
帯結ぶ手を止め聴きし寒雷や 小坂順子
兵馬俑八千起たす寒の雷 久保千鶴子
寒雷をひとつころがし海暁くる 阿部みどり女
寒雷や地べたに坐り炭ひけば 菖蒲あや
冬の雷家の暗きに鳴り籠る 山口誓子
寒雷や針を咥へてふり返り 野見山朱鳥
ついに鳴り轟きにけり寒の雷 川島彷徨子
寒雷の音高ければ地軸揺る 高橋欣也
寒雷雨唐竹割りに滝落とす 國定義明




あらたまの春著に着かへ用のなき 久保田万太郎

2021-01-08 | 今日の季語


あらたまの春著に着かへ用のなき 久保田万太郎


なんとも万太郎俳句らしい俳句ではないか
新たまっての気分は高揚しているのだが
誘われもせず、誘う相手もいないことに気づく
せんのないやるせない作者に
「ヨッ、ご同輩」と声をかけたい
(小林たけし)



春着(はるぎ) 新年

子季語 春衣、春著、正月小袖、春小袖、花小袖、松がさね、初重ね、若草衣、初衣裳
関連季語  
解説 女性や子どもが正月に着る晴着をいう。旧暦のころ、正月は春を迎えることであり、正月
に着る春の着物が、春着そのものだった。
来歴 『滑稽雑談』(正徳3年、1713年)に所出。

例句 作者

いささかの他人行儀も春着かな 森岩雄
お百度を踏みて春著に目もくれず 浜渦美好
かかる丈の衣桁の春著着るものか 爽雨
かざしては復も春着の袖を見る 山口誓子
かの壁にかかれる春著焼け失せし 桂信子 黄 瀬
からたちの垣に沿ひけり春著の子 加藤三七子
ぎこちなき夫の手借りて着る春着 黒川悦子
すと立ちて帯が光りぬ春著の妓 高濱年尾

人日やカルテの山が崩れそう 髙橋悦子

2021-01-07 | 今日の季語


人日やカルテの山が崩れそう 髙橋悦子

新年も7日ともなれば日常に戻る
作者は医師なのだろうかと思う
診療所に座れば棚や机におびただしいカルテが積まれている
身をひきしめている作者が映る
(小林たけし)


【七日】 なぬか
◇「七日」(なのか) ◇「人日」(じんじつ) ◇「人の日」(ひとのひ)
正月七日。七種粥の行事の行われる日であり、この日門松や注連飾りを納めるので元日からこの日までを松の内という。人日。

例句 作者

ドア開けて人居ぬ人の日なりけり 橋場千舟
人日のあたまの下に在るからだ 安西篤
人日の野に語部の一人消ゆ 二村秀水
人日の野山一気に晴れわたる 白澤良子
人日やわたし留守です羊です 横須賀洋子
人日やドラマ途中の湯が沸いて 斉藤京子(つばさ・犀)
人日や一日猫を可愛がる 望月富子
人日や受診の予約確かめる 跡治順子

島を出て海女も睦月の髪を結う 小池白苑

2021-01-06 | 今日の季語


島を出て海女も睦月の髪を結う 小池白苑

海に潜水の海女は普段髪を洗う習慣がないのだが
正月睦月には海女では結えない髪形になる
作者のやさしい眼差しを感じられる
(小林たけし)


【睦月】 むつき
◇「太郎月」(たろうづき)
陰暦正月の別称。陽暦にすれば、だいたい2月上旬、立春以後から3月の初めにあたる。むつびづき。

例句 作者

ちりめん菜むらさきしたる睦月かな 勝又一透
野も山も神の灯ともる睦月かな 新海非風
山深く睦月の仏送りけり 西島麦南