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メカニズム(17)

2016年08月20日 | メカニズム
メカニズム(17)

 なんだかひとみの服装や仕草が変わる。ひとは変わるものなのか、幼少期からのその成り立ちの変更を拒むものなのか、自分には分からない。ただ、世間の波となる流行がある。老若男女がその一部を支え、構成するのも事実だ。そして、ある瞬間が瞬時に過去となって写真や雑誌のなかに急速冷凍のように閉じ込められる。なつかしいとか、恥かしいとの赤面をともなう感想が生まれる。

 古びるものもあって、古びない輝きを維持するものもある。どちらも正しい。ぼくは数ヵ月だけ古びる。サイズは変わらない。爪と髪だけが成長している。

 短い読み物が増えていく。ディケンズのような巨大な本を考えてみる。誰かが待ってくれれば、収入の確保の目途があれば、やってみたい気もする。これもいつもの言い訳のひとつだ。するひとは直ぐに行動に移す。

 ぼくは甘えている。収入が最近はほとんどない。貯蓄もしなければ、利殖もない。どんどん減っていく収入。しかし、生活に困ることはない。いまのところは。世間の一員に加わっていないという不安があるのみだ。上司の悪口も言ってみたい。同僚と帰りに居酒屋で飲んでみたい。後輩のミスを棚上げにして誰かに頭を下げてみたい。どれからも自由であり、どれからも招かれていない。オレは、ひとなのか?

 うだうだと考えているのもあきらめ、日課になっているノートの書き込みをすすめる。新聞に四コマ漫画を描いている方の苦労を知る。ノートの隅にイラストを描いている。これは広告なのだ。絵もきれいな額があってこそだった。

 近未来の世界。ひとは考えることをあきらめ、遂行ということしかできなくなる。車輪にのるモルモットのようなものをイメージする。近未来の映像が、身近で手頃なものになってしまう。自分にはこの方面の能力がないのだろう。欠落。新聞に挟まれているチラシがポストの横に捨てられていたので興味本位に拾ってきた。ぼくはソファに横たわりそれを眺める。世界には商品がたくさんあった。他店よりいくらかでも安く。芸術とは、どういうものだろう。他人より、いくらかでも高い名声と、流通するお金での評価を。開眼。ぼくは、そのスーパーに足を運ぶ。時間だけが、ぼくを苦しめる唯一の原因のようだった。

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