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爪の先まで神経細やか

物語の連鎖
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メカニズム(21)

2016年09月03日 | メカニズム
メカニズム(21)

 サッカーにはサッカーのルールがあり、ラグビーも同様だ。ふたりで暮らせば自ずとルールができる。破れば不満であり、また反対にルールというのは設定の限界ではないということがあらためて浮き彫りになる。

 ひとみはいつもの時間に帰ってこなかった。はじめてのことだ。事故とか、いやなことを想像する。しかし、文字が送られてきて、心配は不要とのことだった。そうはいっても心配するのが人情である。友人の家に泊まるとのことだ。友人というのも、いかにもアバウトな表現だった。

 読まれない物語ができる。一夜だけ生き延びたアラビアン・ナイトである。猶予というものは良いものであった。眠れなかったので急に思いつき、浴槽やトイレを掃除した。汚れというのは至るところにあった。世界で最も力を有しているのは、何らかの菌のようでもある。有用なものをいくつか発見すれば有名になれるのかもしれない。しかし、もちろんそんな才能には恵まれていない。蛇口をきゅっと強く閉め、いったんは掃除を完了させる。これも、完了というものは本質的に生きている間はない。そっと、棚上げだけだ。

 いつも見ない時間帯のテレビを流す。夜にいろいろなものを売りたがっていた。こちらは買いたがっているという共通条件があるようだ。腹筋をして、肌を整える。いくつかの健康食品を飲み込み、身体は痩せる。世界はブ男のままでいさせてくれない。

 すべては電気があるお陰だ。ぼくはスイッチを切り、ベッドに入る。気付きもしなかった時計のチクタクという音が耳のそばで反響する。敢えて、擬音を使ってみる。そんなことを考えていると引っ込み思案の眠りの入口はさらに遠くなる。しかし、いつの間にか寝入っている。

 目を覚ますとひとみがいる。卵を割っている。かき混ぜる音がして、フライパンのうえにジュッと勢いよく放り込む音もした。香ばしい匂いもした。腹が空くから食べるのか、食べたいから腹が空いたような錯覚がするのか、どうでもよいことをベッドのなかで考える。大人の男性は追求をどこまですることが許されているのか分からない。ひとみはノートを開いて、昨夜の分を読みはじめてしまったので、一夜の猶予も同時に消えてしまった。



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