爪の先まで神経細やか

物語の連鎖
日常は「系列作品」から
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作品(4)-2

2006年06月27日 | 作品4
JFKへの道


 しばらく経って部屋に入り、音楽をかけた。フランス人の女性歌手が歌う懐かしいポップスが、その日の気持ちには会っていた。そして、ベッドに寝そべりながら、今夜の予定について考えてみた。自分の父親が、芸術の援助にも力を入れていて、ある集いに出席しなければならなかった。いくらか気が重かった。うんちくや思い込みの多い会話が飛び交う席に同席するのに、自分自身が向いていないと何度も思ったりもした。だが、今日は父が欠席するため、自分がある客たちをもてなす役目に廻らなければならなかった。

 勢いをつけて跳び上がり、ベッドを後にしシャワーを浴びた。そして、その会合にあった服装に着替えた。服自体がかすかに自己主張をするような色やデザイン。あまり奇抜すぎもせず、また壁に消えてしまうこともない衣装。育ってきた環境にも依存するが、服装のことを考えるのが好きだった。その身につける服によっても、気分が多少、変わることもあった。ちょっと女性的かなと思うこともあったが、直ぐに打ち消す。

 また車に乗り、あるホテルに着いた。ある女性の画家。父が注目をしていた。彼女と、簡単だが丁寧な挨拶をすます。会うのは何度目かだが、今日は一緒にその娘もついてきていた。よく似ていた。そして、彼女の周りには、光が放っているような印象を受けた。でも、こうした場に、来るのに馴れていないのか、それとも彼女のもっている朗らかな様子が堅苦しい挨拶やら人間関係にしっくりいかないだけなのか分からなかった。

 その場を離れて、彼女と話しても良いかな、と考えてもみたが、今日はそう自由に行動できそうにもなかった。2時間ぐらい、あちらこちらを回り、挨拶をしてお世辞を使い、父親の普段の世話のために頭を下げ、などと行動していたら、あっという間に時間が過ぎてしまった。それから、ロビーで画家の娘にも、今度会えることを楽しみにしていると雰囲気にも、また実際の言葉でも告げ、お別れをした。

 車に戻り、ネクタイを緩め、それから安美の家に向かった。学生時代からの因縁。かれこれ6年ぐらいの交際期間が過ぎていた。仕事を終え、一人で簡単に済まそうと食事を作っているところだった。もう、言葉のやりとりも必要ないほどの関係。それが良いことだとも思ってはいないが。ずるずるとそうした関係に終止符を打てずにいる。
「服装、決まってるね」
「そう。いつもの父の趣味の会合でね」
「誰か、面白そうな人に会った?」
「ああした現場、知ってるだろう? 金をもっているおじさん達ばかりだよ」
「そう? お腹空いていない?」
「ちょっとね」
「だったら、ビールでも飲んでて、もう一品だけ作るから」
 缶を開けて、最初の泡を口にする。女性の嗅覚。ソファに身体を預け、音楽を小さくかけた。彼女は小さなときから音楽に親しみ、その趣味がとても良かった。高尚すぎて、自分にも分からないことが多いが、彼女が、それについて説明し、自分の足りない部分を補った。ヴァイオリンの音色が好きなときもあるが、安らかに聴けないときもある。しかし、今日は心にしっくり来た。誰の作曲かもわからない演奏だが、幾十年も前から、今日聴くことが約束されていたように隅々まで理解できた。そこへ、彼女が料理を持って入ってくる。良い匂いがして、急に空腹感を感じ始めた。
「疲れたでしょう」
「そうだね」
「なんか顔にそう書いてあるよ。もう二度とごめんだって」
「役が取れない俳優もいるし、それに比べたら演じる内容があるんだから。ありがたいよ」
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作品(4)-1

2006年06月26日 | 作品4
JFKへの道


 誰かに自分の気持ちを打ち明けることが出来なかった。黙り込むか、または、ユーモアという防御をはるか。行き着く道は、同じこと。他の人を笑わせれば、自分のこころに付け入る隙を与えない。上手くカーテンを作れる。

 子供のころから、すべてのものを手に入れることが出来ていた。広い家。田舎にある夏休みや長い休暇を楽しむ二番目の家。きれいに刈られた芝生。その為に雇われている人々。
 たくさんの車も乗り回したよ。多くの時計を腕にはめたよ。でも心からの大笑いをしたことがあるだろうか。車の中で、一人になることしか考えていなかったのか。

 ぼくの父親は仕事上の成功者だった。経済誌にも時々のる。それは読者の尊敬を受けるに値する男性として。しかし彼が、本当の成功者だろうか。人生で一番良いものたちを手に入れているのか。また、周りの人間の長所を引き出せているのだろうか。
 僕の人生を語る上で、どうしても避けることが出来ない問題。プロット。もちろん恩恵も多いに受けている。
 ニュースで知る無残さ。明日はどんな悲劇が待っているのだろう。多くの人々が蒙る痛手も、われわれの家族は、その父親と彼が生み出す金銭で、きちんと塞がれていた。決壊することがないダムや河川のように。

学生の時も先生たちに怒られることが少なかった。特別、周りの生徒と比べて出来がよかったわけでもないから、優遇されていたのだろう。それが嬉しいかというとそうでもないというのが実感だった。敵にするとメリットがないからだろう。しかし、友人たちが、その幾らか恐れられている先生たちの胸の中に、するりと入っていけるのが羨ましかったのも事実だ。ぼくは、そんなことを習っていない。父の作り出す雰囲気や、その多忙な生活のため、対等に渡り合える男性、親身にぶつかってくれる男性がいなかった。

母も自分で作り出している計画に、またその遂行に忙しかった。それに変わる役割の人間は大勢いた。でも、いびつで普通とは違っていることを、ある程度、年を経てから知った。最優先にする順番が、ほかの家族にはあるらしかった。しかし、自分の家には、父親の名声と、その人生に対する姿勢と見栄と、そうしたことで、具体的な目の前にいるものの同情などでは成り立っていなかった。いろいろなものを選んでいる振りをしてきたが、実際には、選択してきたものなど、たかが知れていた。

スポーツにも打ち込んだときがあった。これこそが、生活の実感として、また生きがいとして捉え、かなりの時間を費やした。だが、本当の努力をしてきただろうか。最初から、そこそこ出来、あるレベルに達すると興味を失ってしまうのが、いつものパターンなのではないか。もちろん、日本全体が、恵まれない地域などではない。ボール一つで夢を叶えてみせるというような場所ではない。それにしても、自分の心の入れ込み方は、いつも手緩かった気がしてしまう。自分の気持ちより、他にどう映るか。劇的であるか。印象的であるか、などが最重要事になっている。そして、自分にとっては、それがとても大切なことだった。なによりも動機の先頭に来るものだった。拍手と微笑みを待ち焦がれての生活。美しい女性の軽い微笑み以上に重要なことがあるだろうか。しかし、それを手に入れてみたいと思うのは、ほんの時々だったが。彼女らは、そうすることが当然のようにも見受けられるし、また、天然の演技者でもあるし、また最高度にそれを出来る女性を見つけられないのかもしれない。ハンカチと笑顔。なびく髪と伏せた眼。今日は、母親の帰りを車で迎えに行った。同じ方面の女性も一緒に乗る。静かに抑えた声だった。その人が降りてから、家まで母が話していたが、あまり聞こえてこなかった。車の中に、軽い香水の匂いが残る。家に着き、母が降りた後も、しばらく残り、音楽が終わるまで、座席の背もたれに寄りかかっていた。
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こりゃ駄目だ

2006年06月25日 | Weblog
アルゼンチン 一つの国で オールスター
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そうだったのか!

2006年06月23日 | Weblog
ロナウドが 今まで仮病を 使ってた
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作品(1)

2006年06月22日 | 作品
ゴー・オン キープ・ゴー・オン

 そして、音楽はつづいているのである。私たちが生きている限り。

 仕事から帰って来た。その日は早目の6時だった。冷えたビールの缶を開けると、少しだけ泡がこぼれた。急いで流しのステンレスの上に缶を持っていくと、西陽が目の隅みに痛かった。3月前に出て行った名残の品物、歯ブラシやいつの間にか貯まった化粧品のビンが彼女の存在を、再び浮かばす。ぼくは大人ではなかった。それだけは認めなければいけない。
 暑かった日々は過ぎ去ろうとしている。手首の時計の日焼け跡も目立たなくなってきている。隣りのうるさかった犬も引越しとともにいなくなってしまった。物思いにふけるのには充分すぎるほど環境が整っている。
 どこから、この感情を切り開こうか? 思いの断片をつなぎ合わせようか? 
 まず、彼女の首を思い出す。春に小さな小さなカラフルな花を覗くときにみせたきゃしゃな首がセーターから出ていた。それは、精巧な芸術家が作った像よりも、ぼく自身を喜ばせた。振り返ってその花を説明する様子。数学の大発見でもしたように彼女は感動していた。もっとその時に耳を澄ましていればよかった。
 また洗車が好きなこと。日曜の出掛ける前にいつも車をピカピカにしていた。こっちはコーヒーを飲んで、メジャー・リーグの結果に一喜一憂していたら、彼女が玄関に入ってくる。髪の毛を上手く小さくまとめていた。
「お気に入りの選手は打った?」と決まってたずねた。
「まあまあね。いつもいつも結果を出せるはずもないからね」と答えた。
 そして、あっという間に彼女は着替え、化粧も終えて部屋から出て来る。
「早く、出よう。日曜も終わっちゃうよ」と、まだ午前の10時すぎに彼女は言った。

 桟橋の横に、車を止めるといつも屋台で作っている料理の香ばしさが匂った。釣りをしている人。肩を寄せ合って歩いている男女。子犬と子供。そうしたさまざまな情景が、週日に擦り切れている心を暖めた。

「最近、仕事どう? あんまり話さなくなったね」
「うん。ごめん、あまり心配もかけたくなかったから」
「そんなに上手くいってないの」
「そんなこともないけど、どこから切り出して説明したらよいか分からなかったので、打ち明けにくくて」
 仕事上で、転勤が決まりそうになっていた。彼女がその状態について来てくれるか、それともこのまま関係が終わってしまうかが、とても心配だった。
「移動のこと?」
「まあ、そうだね」
「私だったら」
「なに?」
 そんな状況の時に、近くまで大型犬が近づいていて、彼女のそばに鼻を寄せた。その後を飼い主が急いで走り寄ってきた。時々、見かけたことのあるいつもこざっぱりした服装をしている紳士だった。
 彼女の父は、11歳の時に車にはねられ亡くなっていた。それからずっと母親と、本当によく似た母親と暮らしていた。

 出会いのこと。そう始まりのこと。学生当時、アルバイトで配達の仕事を請け負っていた。友人の父親が古本屋を営んでおり、店番とたまに依頼があった画集を近くに住んでいる画家に配達を頼まれていた。本という形体を愛していないその家の子供にかわって。
 配達先へ何度か足を運ぶうちに、その女性が描いた油絵のモデルに心を惹かれていった。当初は、自画像かと思っていたら、話の弾みで自分の娘をモデルにしていたことが判った。だから会う前に、その当人に出会う前に動かない彼女に夢中になっていた。だが、数ヶ月も本人に会うことがなかったが、ある日、その本屋の店番の帰り道、駅の改札から出て来た制服姿の横顔をみて、あの画の女の子が眼の前を歩いてくるのを、間近に迫ってくるのに気付き当惑した。しかし、当然のこと彼女は、ぼくの存在に気付かなかった。

 しばらくの間、配達の依頼がなかったが、店主というか友人の父だがにきくと、現在、その女性の画家は近くの病院に入院していたらしい。
 数日後、意を決して、花を持ちお見舞いに行くと、彼女も学校の帰りに寄っていた。そこで、はじめて紹介された。
 彼女の習い事の時間があるので、偶然に駅まで一緒に帰ることになった。会話をしてみると、大学の進学で悩んでいたが、ぼくが通っている大学も志望校の1つだという。でも、すでにぼくは、今の会社に内定が決まっていたので、同じ時期に通うことは出来そうになかった。
 その後、本屋でのバイトの帰りに会うようになった。数ヵ月後には、会社員と大学生として会うようにもなっていた。大学生になった彼女は、小さな女の子にピアノを教えていた。ちょっと扱いづらい女の子であったらしく、よく愚痴をきかされた。しかし、彼女の口からでるすべての言葉は神秘的で、ぼくにとってはいつも美しく響いた。
 
 また、彼女の母親の作品はその頃、世間から受け入れられ支持されていった。自分の娘を描いた作品も多かったので、よく二人で催されている会場に観にいった。ある人たちは、そのモデルになった子に気付くらしく、不思議そうに彼女の顔を見ていた。その時の彼女は、居心地の悪そうな顔をしていたが、後でよく二人になると、わざと面白い顔を作って笑わせてくれた。
 どうしても欲しかったので、母親に頼んではがき程のサイズに描かれた彼女の10歳当時の絵を譲ってもらった。本当に生まれたばかりのようなみずみずしさがそこにはあった。だが、なぜか彼女はその自分の姿を気に入らないらしかった。あまりにも真面目過ぎて座っている姿が、本当の彼女とはかけ離れているからだ。
 
 仕事は段々と覚え、軌道に乗っていったが、その分平日に時間を見つけるのが難しくなっていった。その埋め合わせのように休日には、いろいろな誘いを断り彼女との時間を作っていった。彼女は自動車の免許を取り、突然ぼくなんかより数段と運転の技術が上達していった。遠くまで、彼女の母の知り合いの別荘に、よく出掛けるようになった。水や食料を買い込み、二人で料理をし、夕方には静かな森の中を散歩した。また、彼女がピアノを練習する横で、仕事関連以外の普段、読むことができない本を開いた。地球上で誰も読まなくなってしまったゴーリキーもその時読んでいたと思う。時には、持ち込みたくない仕事もするようになってしまったが、彼女はよい顔をしなかった。
 週日中に起こったさまざまな出来事を話し合いたかったからだ。

 彼女の美しさを恐れたこと。大学生は何かと飲み会があるらしく、彼女もよく出掛けるようになった。不機嫌な顔をしないように繕ったが、言葉の端々に彼女を責める口調が表れていた。その時には、貰った画を見て、痛々しい気持ちがなぜか自分の心に芽生えるのだった。
 化粧の仕方が洗練されていったこと。母親との付き合いで、僕との関係のない世界に入り込んでしまっていたこと。たくさんの財界人や芸術家に、母親が知られていった為、その分つられて彼女の交友範囲も拡がっていった。
 仕事をしたてのまだ自分に自信が持てない、過去の自分の姿が哀れに悲しく思い出せる。でも、彼女自身からも、たくさんの勇気をもらったことも否定できない。
 ドレスアップして彼女の好きな音楽家のコンサートに行ったこと。演奏後、小さなレストランで、手際よく音楽の説明をしてくれたこと。それでも、言いたいことが多くありすぎて、彼女の言葉やボキャブラリーが間に合わなかったこと。赤ワインと彼女の爪がきれいに融合したこと。あの瞬間を永久に閉じ込められればよいと思う。コルクで、その甘美な時間に蓋が出来ればよいが。

 フィレンツェのこと。ウフィッツィ美術館の内部。その匂い。そして、ラファエロのこと。本物の美しさに触れるように、また彼女の母の頼まれごとを果すためにもその地に行った。母親もまた彼女の年齢の時に行っていたらしい。
 秋だった。彼女のコートやマフラーの質感。歩き回った後のバールでの美味しいエスプレッソの温もりやジェラートの軽やかな舌触り。
 ポンテ・ベッキオを渡っている途中、彼女の靴のかかとが道路の隙間に挟まって一瞬身動きがとれなくなって見せた困った表情。
 美術館の2階にあった、ラファエロの傑作群。世界中から音が消えた瞬間。このように実際に美しさを、そのまま画布に移す能力を持っていたら。
「どうしたの? 見惚れてるねぇ」
「うん。あまりにも美しすぎて」
「ほう。そうですよね。普段きれいな人をみてないからね」と彼女はからかい半分に言った。しかし、その絵の肌の色は彼女のちょっと寒い空気に当たっていた皮膚とよく似ていた。
 イタリアのネクタイを選んでくれたこと。リラという単位の桁があまりにも分りにくかったこと。彼女に親切に説明してくれたハンサムな店員の優雅な態度。どこに行ってもレストランの給仕も彼女にはとても好意的だった。世界中が彼女にウインクを投げかけているように暖かく見るものが新鮮だった。

イタリアという地に生まれた天才たちのこと。それも同時代に生きていたこと。またやるべき仕事が多かったが、彼らはきちんとそれぞれ生きた年数にかかわらず成し遂げたこと。力強さや繊細さ。すべてを兼ね備えていた。 時代も要求されていることも異なっているが会社という小さな世界に嵌め込まれている自分。ものの見方がいくらか変わってしまった。
帰りの飛行機でぼくの肩にのせた彼女のちいさな頭。ランプの下で頼りなくなったこと。また一生この重みの責任を取りたいと思ったこと。
「寝れないの?」
「いや、面白い映画もやってるし」
「眼、真っ赤よ」
「終わったら、ちょっと寝るよ」

 喧嘩のこと。トラブルの種類。人々の幸福はいくらか似ているが、不幸の種類はさまざまだ、と言ったのは誰だったか? それとは逆に幸福な女性の顔や表情はたくさんの種類があるが、幸福ではない女性の顔は似ていないだろうか。
彼女にそういう様子が表れてしまったこと。彼女の皮膚に貼り付いた悲しみ。それを見た自分も不幸になったこと。責任の一端を担ったことが苦しかった。
「なんで、そんなこと言うの?」小さなうめき。
 若者の努力を礼賛するテレビ番組を2人で見ていたときのことだ。
「だって、報われない努力だってあるだろ?」強い口調。
「そんなこと言ったら何も出来ないじゃない」
 人生を肯定的に受け止めるべきか。一歩、身を引いて颯爽と乗り過ごすべきか。自分の存在を笑いつつ、流れていくべきなのか。
「ちやほやされてきた人に分かるかよ」確かに言い過ぎていることを確信していたが、つい口から出てしまった。
「本当にそう思っているの?」
「いや、言い過ぎたね」
その後、2人で散歩にでた。確かに、近くの公園でもバスケやダンスに励んでいる若者たちの輝きは本物かもしれないと思った。
「さっきは、ごめん。全然、仕事でも責任を任されそうになったのにしくじったような気がしていてね。つまらない八つ当たりだよ」
「いいの。気にしてないから」
カフェに入った。スイートなスイートなソウルミュージックのこと。その響き。音の重なり。大学時代の交際相手のこと。その思い出。
「この曲、好きだよね」
「なんで、知ってた?」2人の空間に、どんな過去も入って欲しくなかった。
「知ってるよ。写真見たもん」
「どこで?なんの?」
「大学の時バイトしてたお店の友達に見せてもらったじゃん。4人でどっか行った写真。その時につき合ってた人とカセットテープもあったよ」
 色褪せた記念。過去の勝利。
「終わったことだけどね」そう、ピリオド。片付いてしまったこと。
 あの瞬間には未来は継続していた。いつ終わるか分からないバルセロナのあの建設。同じような時間の単位が2人の前に拡がっていた。

 フランス文学の授業。系譜。過去の書物を生き返せる視点。生命を与えなおす努力。彼女の勉強を手伝って一緒に本を読み直した。
「最高の小説家って誰だと思う?」
「フランスならバルザック」
「量ですか?」
「全体で」
 彼女の朗読の迷宮。固くもない柔らかくもない声の質。2人でよく冗談半分にセリフの部分を読みあった。
 ユゴーとロダンを敬愛する助教授の話。その講義内容。熱弁。自分の思いを相手に伝える方法。伝達力。彼女はよくその人の真似をした。見たこともないその先生が身近に感じられた。
 授業が終わった後、よく待ち合わせをして図書館で調べ物にもつき合った。インターネットの広まっていない時代。何かを追求する作業。年代のこと。歴史、地理、年表。そうしたものが幾らか頭に入った。
 またセリーヌのこと。やけっぱちの生活。その図書館に一緒に通った時期にはじめて知った。ある人生とは別に二重に生きること。それがいかに困難か、またある面でいかに1人の人生を救うか。
「面白い本でも見つけたの?」
「まあね」
「良かったね。今度読ませて?」
「いつかね」あまり純真でもない読み物。本当の意味での芸術。

 2人の人生の捉え方。進歩や成長の傾向が違うこと。当然だが、彼女も将来の方向を考えていた。母親の再婚も決まりそうになっていた。10年間の父親の空白。だが今さら、彼女の人生を導く新たな局面に関与しすぎることは、その男性にも出来ないはずだった。ぼくも何回か一緒に食事をした。本当に良い男性だった。話もあった。彼女がいなかったら会わなかった男性。いろいろなことも相談した。ぼくにとっての父親の不在の解消のようだった。
 教えてくれたこと。いや自然と習えるように道筋をつくってくれたもの。年上の女性との話の合わせ方。また後輩の女性のやる気を起こさせるアプローチ。こっそりお酒を飲む場所。彼と2人で会うことすらした。歳の離れた兄弟でもあった。
 
 そして彼女の大学4年になった時に彼ら2人は結婚した。彼女は与えられたマンションで1人暮らしをした。長電話もたびたびした。ビデオもよく観た。
 ジョニー・デップの哀しい眼のこと。彼女はその深い表情がとても好きだった。

 そのような時期に就職活動もするようになった。彼女の勤め先として、ある大手旅行会社にほぼ決まっていた。やっと、ぼくの保険会社の仕事も順調になっていき、その分さらに会う時間も減っていってしまった。近々の転勤のうわさ。次のステップ。東京から離れたことがないこと。でも新しい業務も興味があった。
 後ろを振り向いて、大事なものを暖めとおすことか、次の入り口を開くことの方が大切か、ぼくは迷っていた。
 
 決定的なこと。彼女の一番よい面を引き出せてはいないかと感じはじめた時。
そうした能力の疑い始め。彼女の内面の愛情の固まりのようなものが発酵できる余地。
 転勤から1年経ち、彼女の就職からも同じだけ過ぎた6月だった。27歳と23歳になっていた。何度か彼女は暇をみつけて名古屋まで会いに来てくれた。うれしい反面。なにかがしっくりいかなくなっていたこと。どうにも止められない空間が、一瞬の隙も見逃さないサッカー選手のゴールのように挟まってしまった。

 見送ったこと。遠ざかる彼女の車の丸い背中。夏が始まろうとしていたこと。彼女の母親の絵を陰ながら支援しつづけてくれた方の子供。彼女は、その男に気持ちが傾いているようだった。

たくさんのものを失った気がする。ある時期の自分を知っている他者。いつもそばにいたこと。慣れること。彼女のいない世界に慣れること。
気がつくと、いつの間にか深夜になっていた。空になったグラス。尻尾を失った爬虫類。でも、まだ生きている。
もう1度、誰かを真剣に愛することが出来るだろうか? その不安の書。スタートの覚え書。
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ものうい

2006年06月21日 | Weblog
忘れたい 記憶という名の サーバーが
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作品(3)-10

2006年06月21日 | 作品3
システム・エラー
10

普通の人より、歩く速度が遅いのかな。なんでかっていうと、女性と一緒に歩いていて、そのことを思い出そうとすると、女性の後姿しか覚えていないんだ。大体、無防備な後ろの、とくに背中なんかに、その人らしさが表れるよね。自分がどう見られているのかも、よく分からないし。

そうなんだ、前に話した歌手のことを、ついつい思い出してしまうことがよくあってね。もう日常的なものかな。その後姿も、普段街中を歩いているときにでも、背の高さが似ていたり、また髪型がそれとなく雰囲気が同じような場合ね、自然と彼女の立体像と重ねあわすというか、作り直す作業を頭の中で構築するんだろうね。

これが未練ていうのかな。だったとしたら、未練たっぷりだよ。いつか電話をしたことがあるんだ。やり直そうと意を決して、かけてみたんだけど、どうしても最後の言葉が言えなかった。なぜだろう。どうでもよい会話を続けて、切る寸前に、元気で、また、みたいな終わり方になっちゃたけど、もうちょっと勇気があったらね、とか思うよ。

そろそろ、そのことに決着をつけてもよい時期かもね。遅いぐらいなんだ。でも、楽しかったことも多かったし、別れて、その反芻にすら楽しい記憶が紛れ込むよ。やっぱり、ここでも彼女がピアノを弾きながらの、歌うときの背中を思い出すよ。リハーサルの時に、関係者としてライブ会場に入ったんだ。でも、本番のステージが始まったときに、後ろの方の席で見たんだけど、その小さな背中が愛おしかったのと、また逆に、その大勢の前で歌える彼女の度胸に、ちょっとビビッてしまったのも事実だよ。なんで、あんなことができるんだろう? とか正常な神経の持ち主なのか? とかもね。

もう、外は明るくなるのかな。旅に出なきゃいけないんだよ。ぼくの作ったゲームを原作にした映画があってね、外国での公開に向けて、いままで奔走してきたんだけど、やっと実を結んでね。それで今回もろもろのスタッフと一緒に行くはめになったんだ。いつでも旅行ってたのしいな。今度はヴェネツィアにも寄るんだ。そこでもちょっとしたインタビューを受けるんだけど。その前に、ちょっと個人的にもまわって下調べがてら、2月ほど前にも行ったんだけど、その時の旅行会社の担当者が、女性なんだけど、初々しくてね、そうなんだ、ぼくは女性にすぐ心ごと持って行かれそうになるんだよ。今度の、ゲームの主人公のイメージにも合ってね、なんかそれで上手く行きそうな予感も感じているんだ。ゲームの方だよ。さっき未練がまだあるって言ったばかりじゃないか。空港まで、車で送ってくれるんだよね。いつでも、旅立つ前って興奮するよ。好きなんだ、空港で、だらっとしながらジュースを飲んだり、周りで期待を膨らませた旅行寸前のはしゃぐ人たちを見るのが。それから、飛行機に乗って、ラジオを聴いてね。この前、行ったときには、彼女の新しい曲も、その音楽のプログラムの中にも入っていたよ。なんか涙が出そうになった。彼女の頑張っている姿を、とてもよく知っているしさ。こうなったらよいというビジョンを話してくれたけど、売れたことを抜きにしても、そのことに近づいているのか、呼び寄せたのか、そのパワーにも感激するね。そうメジャー的に売れるのが、すべて正しいとも思っていないけどさ、なんか基準だもんね。音楽家の名声って。もう準備は出来ているんだ。みんなが来る前には出るよ。居ないときの予定とか、連絡先も残したし、あとは本人が消えるのみだよ。ぼくがいなくても仕事だけは、楽しく快適に捗っていてほしいな。居ないとき、さぼるような人材はいないつもりだけど、まあ人間だもんね。仕方ないよ。じゃあ、荷物を車に載せるね。ありがとう。話も聞いてくれて。帰ってきたら、旅行中の楽しい思い出も話せると思うんだ。眠くない? 空港のそばのホテルに、帰りにでも寄るといいよ。無理させてごめん。ぼくは飛行機のなかで熟睡できそうだよ。一晩中起きていたしね。
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作品(3)-9

2006年06月19日 | 作品3
システム・エラー


会社に遅くまで残っていて、一人で仕事をした後、大事な所に鍵を閉めて、それから、後ろを振りかえって、今日も終わり、なんてつぶやきながら、ビルを出る瞬間が好きなんだ。そして、タクシーの後部座席から、東京タワーが見えてね、今日も輝いているな、とか思って、オレもまだまだ、なんかそうした状況のときに、幸福感が腹の底から浮かんでね。たまには、一人で飲みに行ったりもするよ。その店は誰にも教えていないんだ。良い音楽もかかっているし、素顔を取り戻す瞬間なんだ。

やっぱり、ビリー・ホリディにつながるんだ。格好つけていない気がするもんね。なにもかも引っ剥がしたような潔さがあるじゃんか。なんか体裁とか見栄えとかに、汲々としている自分がほぐれていく気がするよ。そうした部分を誰にもみせたくないしね。どうしても一人で飲んじゃうんだよ。入院なんか、もし仮にすることがあっても、誰にも見舞いなんかに来て欲しくないね。なんか弱った自分を見せるのか恐ろしいんだよ。よく他の人は、あまり親しくない人にも、パジャマ姿とかを見せられるのかな、とか思ったりしてね。

でも、そうして一人で飲んでいても、声をかけられてしまうこともあるよ。雑誌に顔写真を載せてしまったからね。あんなこと、しなければよかった。適当に相槌を打ったりもするけど、本心はそっとしておいてほしいよ。お酒と音楽のある場所ではね。音楽の順位とかも分からないんだ。ジャンルにも拘泥しないしさ。でも、部族くさい音楽が好きなのかな。体臭を感じさせる音楽だよ。

そして、くつろいだ後、やっと自宅に戻るんだ。そこからはメールを返したりさ。いたって普通だよ。テレビ見て、ベッドに入ってさ。そして朝だよ。これも、一番に会社に着くんだ。たまに抜かれるけど。掃除のおばさんが、一生懸命に掃除をしているでしょう。なんかお世辞を言ったりしてね。おばさんに好かれてしまうんだ。なんか知らないけど、こっちはやっぱり若い子に人気が出てほしいと思うけど。なかなかね。それから、たまに打ち合わせと称して、ふらふらと徘徊するんだ。刺激がないと、仕事にも直に影響するし、まあ流行を追っている仕事でもあるし、仕方がない部分があるよ。

ランチを豪勢にしてね。昼間に飲む酒が一番だね。そんなに飲まないけど、ヨーロッパに行ってからの癖でね。なんか労働者に混じって、飲んでみたり。真実の言葉が聞けるのも、そんな場所であったりもするしね。気取っている人って笑っちゃうよね。デパートに行って、ペットと一緒に乗れるエレベーターがあったんだ。そこに、お金持ちそうな女性が、ずっと文句いいながら、その箱に乗っていた。ペットなんか連れてくるなって。あんなに可愛い動物たちなのに。

また会社に戻り、いろいろ心配も出てくるよ。ただ面白いゲームを作っていただけなのに、また作れそうな人間を集めていただけなのに、業績があがると、そうした分野に注目が浴びすぎちゃって、取り巻きも増えるし、会社自体に狙いをつけてくる人たちも出てくるしね。そろそろ本当に危ないんだ。利益追求の結果が見えてきた感じがするよ。また違う方面を模索しなければならなくなりそう。その時は、助けになってくれよな。相談だけじゃないよ。実際に、資金からさ、調達する努力もしてくれよ。ここで、ちょっと成功したけど、あまりこのジャンルにしっくりいかなくなってきたんだ。飽きっぽいのかな? また新たに力を発揮できる分野をみつけないと。誰か拾ってくれるかな。可愛い子犬だったら。放って置かれないけど、こっちは飼い主の手を噛みそうなほど、強暴だしね。そろそろ、この会議室も閉めるのかな? まだ大丈夫かな。もう一杯コーヒーを入れるね。あと少しだけ、まだ大丈夫だろう?
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作品(3)-8

2006年06月18日 | 作品3
システム・エラー


 人間って、長持ちしない生命体だと思ってさ。そのことを考えると憂鬱になるんだ。あと、幸せの形態の最高が、家族を増やすことにあるとしたら、なんか南米的な大らかさで、増やすことでもあるんだけど、それぐらい親にしてあげたいな、と考えるのが自然の帰結かなともね。公園で孫と歩いているお祖父ちゃんとか、お祖母ちゃんて、あれぐらい絵になる姿もないと思うよ。でも、欠陥があるんだろうね。駄目なんだよ。そのウエットすぎる関係が。

でもさ、証明したいこともあるんだ。ぼくは、数人の男兄弟なんだけど、誰も料理とかしなくてさ、自分の母親が、意外と料理うまかったんだぜ、とか言っても誰も証明できないんだよ。証拠の未提出だよ。消えゆく記憶かな。少しでも、こうして口には出しているんだけどね。やっぱり、能書きより実物だよね。だからといって、他のものが食べられないこともないし、マザコンでもないよ。料理に対しては、口うるさくない人間の一人だよ。

ただ、親が入院している姿なんか見たときには、自分のバックグラウンドの危機みたいなものを感じない?それを当時の恋人に言ったんだけど、なかなかね、理解してくれなかった。ああいうことから隙間って、広がっていくんだろうね。

でも、いまは多くの時間を、一人で生まれてきて、一人で死んでいくんだろうな、とか考えているよ。刹那的とかでもなく、自分だけが真理をみつけたんだ、とかそういったおごった気持ちはまったく抜きにしてね。実感でもあるし、さばさばした気持ちでもあるんだ。しかしね、たくさん陰で助けられているんだろうな、とかそうしたひっそりとした予感もあるんだ。まあ、一人の人間の実力なんて、たかが知れているものだしさ。

性格って変えられる? それとも、変えられない? なんか、どうしても手抜きができなくてさ。空回りしても、突っ走りすぎちゃんだよ。自分の尻尾を追いかける犬みたいな情景だけどさ。滑稽でも、仕様がないよね。そうプログラミングされているのかな。まあ、成功したかったら、多かれ少なかれ、狂気を含んだ執着も必要になってきてしまうと思うしね。でも、そう考えても無駄にしている時間って、多いよね。中毒だよ。自分を切羽詰った状況に追い込むのがね。だけど、深夜に呼び出される医者に比べたら、ストレスなんか足りないぐらいだけど。

そうなんだ、どうしても人の役に立ちたいな、とか、最後は考えてしまうんだよ。ぼくのゲームが多少、売れたって、機械を持っていない子供にとっては、大人にもだけど、関係ない話になってしまうものね。そう、全員に影響を与えたいとか、名声の範囲を伸ばしたいとも、言っているんじゃないよ。ただ、少しでも不幸とか飢餓とかあるなら、自分もそれに関わらなきゃ駄目だとも、考えるんだ。自分は指示して、対岸にいるわけにもいかないしね。そうした、人が多すぎるんだよ。批評は、一人前にするくせにね。怒りじゃないよ、ただ絶望と悲哀だよ。手を汚したいと思っているんだ。将来、そうしたことに打ち込むよう、いまから道を作っていこうかな、と思案中なんだ。
結局、といってまとめないことも多いけど、人生って短すぎるなと思ったりね。なんか人に良いことをしてあげたいな、としても永続するには、気が散ってしなうことも多々あるし、もっと優しい人間になりたいな、とかそうした人間をみつけたいな、とか思ってしまうね。まだまだいるよね。心底、人のためになるよう生き抜こうと実行している人が。墓になんて書かれたい? 自分のことを最優先させる人でした、自分のメリットしか考えない人でした、とか?
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2006年06月18日 | Weblog
心地良い 風頬撫でて 菖蒲にも
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作品(3)-7

2006年06月16日 | 作品3
システム・エラー


育てられ方なんて、大袈裟に言っちゃったけど、大したことないんだ。ただ、運動部のアイデンティティみたいなものがあるでしょう。目上の人や先輩を立てるというあれだよ。自分より能力がない人でも、尽くす美学があるじゃない? あれ、自分に酔っちゃうのかな? こんなに頑張っているオレ、とか認められないのに健気とかさ。神の視線、そんなのに満足感をすり替えちゃうのかね。そうなんだ、人のためになることで、頑張れちゃうこともあるんだろうね。

でも、その小さい世界だけど、一種のセンセーションを起こした形になったんだ。何か変わったって? それは、ぼくは本来、服装とかずっと無関心だったんだ。だけど、そうもいかなくてさ。たどり着いたのが、ボタンダウンのシャツなんだ。あれ着ると、なんか、まあ文化のことも知ってそうだし、ちょっとまともにも見られるのかなと計算もしたりしてね。だから、自分でもボタンダウン・フリークと呼んでいるんだ。あのシャツ、ポロの時にイギリスの選手が、襟がひらひらしないようにボタンで留めたのが、ヒントらしいよ。なんか素敵なエピソードじゃない?

だから、正直女性の服装とかも、よく分からないんだ。そりゃ、一緒に買い物に付き合わされたりするけど、男性って直ぐ飽きない? 本屋とかCDを見てるから、お好きに、とか言ったら、その後、数時間も口を聞かなくなっちゃうし。なんだろうね。そうしたところからも、プレゼントとかも困るよね。「なにが欲しい、今回は?」とか聞きまわりたくなっちゃうよ。でも、それって反則だろう。

とか言いながら、服装のセンスの悪い女性って、セクシーだと思わない。無防備な感じがするのかね。個人的なものかな。まあ、一点のすきもない人よりは、ルーズな印象はするよね。ゲームの主人公のことも耐えず考えているんだ。理想てきな顔の造形とかも興味あるよ。あまり普遍的過ぎて、人の受ける印象が薄っぺらになってしまうこともあるよ。その時には、的確なアドバイスをしてくれる友人がいるんだ。ぼくの最終チェックをする人だよ。最初から、なにかを生み出す人ではないんだけど、そうした枠に合うよう、見栄えを訂正できる人っているんだよね。でも、爆発的な想像力は残念ながら、持っていないんだよね。でも、人なんか役割をこなすのが目的にもなってしまうしね。

先刻のスポーツをしていたので、ちょっと従順さが残っている、という所がもっと知りたいんだね。まだ、修行中で完成されていないんだ。でも、どっかで本気で喧嘩を売ったりすることもあるよ。年下には、しないけど、本気で腹が立つのは、そりゃ、年上の傍若無人ぐらいだろう。なんどか仕掛けたこともあるけど、見事に負けて帰ってきたよ。それでもいいけどね。活力が与えられれば。正しいことをして、栄光を受けないことに、本来の良さがあるんだ、と考えたりもしてね。でも、思ったことが、実行して成功につながる気持ちよさもあるけどね。みんな、どっかで自分は失敗する、成功には向いていないとか、不運を寄せ付けちゃうのかもしれないね。あら、また、本屋のサクセス棚みたいな意見が出てきちゃった。喉渇かない? 喋りすぎたかな。ぼくは飲むね。

次のアイデアもあることは、あるんだけど。具体的にはね。能力が尽きないことを、チームの後輩に見せ付けたいと思っているところなんだ。彼らも、そろそろ個人的な名声を望んでいるところだけど、まだまだ、この分野の先駆けは、自分だった、という証も示しておかないと。そうしたら、やっぱりビーチでのんびりしたいな。犬が砂浜なんか走り回ってさ。ぼくも普通の生活に憧れてきたよ。もう若くないのかな。両親も安心させてあげたいな、とかほんのたまに頭の片隅をよぎるんだ。酔った後に、一人になった時なんか、とくにね。
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作品(3)-6

2006年06月14日 | 作品3
システム・エラー


そうなんだ。それで、スピーチもしちゃったんだ。もう、その手前でかなり酔っていたのも確かだけどね。そう、彼女は、とてもきれいだったよ。こうして話していると、ぼくは女性のことばかり考えすぎていないかな? 複数の女性がごっちゃになっていない? いま、話しているのは、ぼくのチームの後輩の女性と、馬鹿な後輩のあの男の話だよ。口が悪いね。いや、その男性も一人前になるまで、ぼくが必死に手をかけたんだ。なんか一人前にしすぎたかな。

話は、なかなか上手くこなしたんだけど、やっぱり一人になると切なくなってくるよ。個人的な意見なんだけど、女性の28歳から32歳までの期間を知りたいと思っているんだ。なんか理想なんだよ。その彼女がちょうど28歳だったんだ。その4、5年の間というものが完成間近みたいな気がするんだよ。それを過ぎたらどうか、なんてぼくの口から言わせないでよ。

また、逆にだよ、ぼくの20代を知らない人と、新たな関係を作るのって、面倒くさくない? もう大人になってからの自分なんて、面白みがないようにも感じるしね。あの失敗とたくさんの格闘をしていた自分を知っている人との方が安心できるんだ。これも、違う考えの人もいるらしいことも知っているけどね。自分のみじめさを認められない人も、どうかと思うよ。

そうスピーチに戻るね。ちょっと誤解を与えちゃったかな。いかにもぼくが彼女のことを職場の仲間以上に考えているのがばれてしまいそうでさ、自分自身に心配したよ。でも一人で強い慟哭、そうだこの言葉だ、一人で悲しんだよ。大体、いつも投げやりなんだけど、失ってから、いつもいつも後悔するのが、ある種の趣味なのかね。でも、幸せそうだったし、個人的な執着で、その幸福を破壊するのもよくないよね。

その後、新婚旅行から戻ってきた二人とも、なかなか上手くやっていたよ。でも、ぼくの手からは離れてしまったね。また、新しい才能を発掘したいな、とも考えたり実際に移行する時期だったんだろうね。また、目の前に表れたんだ。ぼくの存在をおびやかす能力の持ち主がね。でも、追い越されても、ぼくは全然問題にしないんだ。もっと嫉妬深かった気もしたけど、ちょっと違う観点からみれば、ぼくの影響を受けているのが分かってしまうんだ。早く、そんな青い時期から脱出してほしいね。ぼくも、その若い才能から刺激を受けたんだ。それは、眠りを控えるぐらいのことは、するさ。なかなか負けず嫌いだし。

しかし、彼の才能のお陰で、会社自体の売り上げも上がったし、ぼくもつまらない仕事から、弾き出されるように自由になった部分も大きいんだ。人間の魅力ってなんだろう? 良い人間が平和な社会を作るわけでもないし、こんなに問題をかかえた人間でも、子供たちが夢中になるゲームを作ったりできるんだからね。あとからあとから、追われているような感覚はあるよ。ヒットがないと、その人を抹殺するぐらい時代はエネルギーを持っているし。そんな馬鹿げた競争から、はやく脱出したいとも思っているけど、卵を割ってもらうのを待っている雛のように、その作品たちもぼくの手を借りて、生まれてこようとしているんだ。だから、はっきりいうとぼくの才能ではないのかもしれないし、ただの助産婦みたいな役なのかもね。でも、観賞されて終わりじゃないし、ゲームというのも難しいよ。その若い子のお陰で、ぼくは映画の分野とか、音楽の分野に交友の幅もひろげていくことが出来るようになった。簡単なアドバイスで、すごく喜ばれたり、一部の子たちの間では、時代の寵児とかも呼ばれてね。なぜ、浮かれないのか? 不思議でしょう。そんなに、自分が分からなくなってしまうほど、恥知らずでもないし、これが育てられ方の差なんだろうね。
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単純さ

2006年06月14日 | Weblog
トッティの 髪形見ては 散髪し
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負けるが勝ち

2006年06月13日 | Weblog
ヒディングと 我がジーコの差 愕然と
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熱と痛みのファンタジー

2006年06月13日 | Weblog
風邪ひいて テンション低く 節痛く

熱下がり 洗濯物と 格闘し
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