遺す言葉

つぶやき日記

遺す言葉312 小説 心の中の深い川(2) 他 雑句10題

2020-09-20 12:02:51 | つぶやき
          雑句10題(2020.8月作)

  Ⅰ 雲の湧く 彼方に発ちて 七十五年
           (特攻隊 2020.8.15日作)

  2 来てみれば 清水湧く音(ね)が 君の声

  3 さわさわと 清水湧く音(おと) 君の声

  4 白鷺の ポツンと一羽 八月田

  5 秋風に 夏の名残りの 雲の峰

  6 秋風に さやさや揺れる 黄の稲穂

  7 父母の待つ ふるさと遠く コロナ夏

  8 逝く夏の 夕立あとの 蝉むくろ

  9 一生の 虚しさ鳴いて 尽きる蝉

 10  生きている 歓喜の限り 蝉の声
    (人はどうでしょう、一生を嘆いて終わるか
     感謝の気持ちを抱いて 喜びのうちに終わるか
     人 様々)





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         心の中の深い川(2)

 窓ガラスの外に見下ろす通りには、数限りない車と人の動きが見られた。
 志村の姿がその中で、再び、由紀子の眼に入る事はなかった。
 由紀子は力が失せたように、テーブルに向かったままでいた。
 脱け殻になっていた。
 様々な思い出だけが飛び交った。
 志村に初めて会った日の事が急に拡大され、脳裡に浮かんで来た。
 ほぼ一年前。八月の終わりか九月の初めだった。男性ファッションで売って来たB商社が、その年の暮れに女性部門に進出する計画を持っていた。それに先立ち、都心のMデパートを会場に、フッァションフェアが行われる予定だった。志村辰巳はそのフェアの係りの一人だった。
 デザイナーは由紀子の他に三人いた。
 それぞれが一流の名を持つデザイナーだった。無名の、しかも年の若い由紀子が起用された事に周囲は驚いた。その裏に、有吉宗二朗の力が働いていた事は、極一部の事情通にしか知られていなかった。
 最初の打ち合わせが行われたその日、志村はネクタイにスーツのきちんとした装いで現れた。
 由紀子は黄の薄手のセーターに黒のパンタロン、首に 濃紫のネッカチーフという軽装だった。
 二人の男性デザイナーに、あと一人の女性デザイナーは中年だった。
 それぞれが強烈な個性を持っていた。
 それに対して、駆け出しの由紀子には、海のものとも山のものとも付かない危うさがあった。
 そんな由紀子に、志村は何くれとなく気を使い、相談に乗ってくれた。それでも、その関係は催しの済むまでの職業上の付き合いでしかなかった。
 新年になって、志村からの年賀状が届いた。
 有村宗二朗の力は、それ以降も働いた。
 由紀子は取り敢えず、一年間のB商社との契約に成功した。
 一月の終わり、由紀子は志村に再会した。B商社のフェアに出品した男性デザイナーの一人の発表会の会場でだった。
 志村は二週間程、ヨーロッパを廻って来た、と言った。
 友人とも恋人とも付かない関係が続いたのはそれ以降だった。
 B商社の契約デザイナーという由紀子の立場は、志村に会うのには好都合だった。自然にその機会に恵まれ、回数が重なった。
 会えば二人で食事をし、クラブなどにも足を運んだ。
 志村が有吉宗二朗の事に触れたのは、一回きりだった。なんとなく、気軽に会う様になってから間もなくの頃、
「君、有吉さんを知ってるんだって ?」
 と聞いた。
 由紀子はギクリとした。同時に、志村といる時、有吉が全く自分の意識の中になかった事にも気付いた。
「どうして ? 誰に聞いたの ?」 
 由紀子は少し身構えて問い掛けた。
「専務に聞いた。君が有吉さんの紹介だって」
 志村の言葉には由紀子を非難する色合いはなかった。
 それでも由紀子は、志村が何処まで有吉との関係を知っているのか、気になった。
 由紀子には何も分からなかった。
 由紀子は途端に、自分が何か、弱みを握られた人間のような気がして来て、思わず、居直ったとでも思えるような口調になって言っていた。
「ええ、有吉さんには、何くれとなく力になって戴いているわ」
 志村はまだ、何も疑っていないようだった。
「どうして有吉さんと知り合いになったの ? 誰かに紹介して貰ったの ?」
 当時、有吉宗二朗は六十七歳だった。経済界でも名の通った人だった。その名刺には幾つもの肩書が並んでいた。
「死んだ父の知り合いの方に紹介して貰ったの」
 嘘はなんのためらいも無く口を出ていた。
 志村は淡白で物事に疎いのか、或いは、総てを知っていて呑み込んだのか、それ以上は聞かなかった。軽く頷いたきりだった。
 由紀子はその時、もし、有吉との事が知られて、それがもとで志村との間が壊れるのなら、それはそれで仕方がないと思った。有吉との関係を知っている者は、そんなに多くはないはずだったが、志村の言う専務、田畑はそれを嗅ぎ付けているのだろうか ?
 由紀子はその田畑にも会っていた。田畑は五十歳代の品のいい紳士だった。
 志村はだが、それ以降、有吉の事を口にする事はなかった。ひと月の半分程を海外に行っている事が多くて、帰ると、その度に電話をくれた。
 志村と会う事は由紀子に取っても楽しみの一つになっていた。海外のファッション事情を聞けるという事もあったが、志村の厭味のない人間性が、自ずと由紀子の心を解きほぐしてくれるような処がって、二人でいると何かしら、謂われもない安心感で満たされた。


          三


 有吉宗二朗との関係。
 それは初めから由紀子の心の内では割り切れていた。
 有吉にしても、由紀子に愛情を求めるなどと言う事はなかった。
 初老の男の単なる気紛れ、とでも言っていいようなものに違いなかった。
 だが、かと言って、由紀子が有吉の気持ちをないがしろにする、というような事はなかった。有吉には心から尽くしていた。
 有吉もまた、孫娘にも近いような由紀子をないがしろにする事はなかった。
 月々の手当てこそ出す事はなかったが、何くれとなく由紀子の相談には乗ってくれて、事実、由紀子がそれで救われた事も数々あった。B商社の一件がそうであった。事務所を持つ時がそうだった。由紀子がデザイナーとして独立する初歩から、有吉の力が何くれとなく、後押しをしてくれていた。
 二人の関係はそんな暗黙の了解のうちに成立していた。
 由紀子が銀座のバー、「ゆめぞの」に入って半年程した時、有吉が来た。
 有吉は一年振りに来た、と言った。
 経済界の大物が大事にされない訳はなかった。



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          hasunohana様

          有難う御座います
          今回も楽しくブログ拝見させて戴きました
          グランビーの初秋
          本当に気持ちの良いお写真です
          こんな環境にお住まいになられている事に
          羨ましさを感じます 都会住まいの現在  
          わたくしに取っては夢見る環境です
          かつて子供時代 このような環境に生活していた
          経験がありますので その良さが実感できます
          お羨ましい限りです  
          バレーと禅 何事も基本は一緒ですね
          それこそ個人的見方ではなく 普遍的真実では
          ないのではないでしょうか
          「禅とは 人間の"根底"にある創造性に徹して
          これに順応 動作する事である」
          禅学者は言っています
          この創造性を圧迫する雑念が入る時 物事は狂い
          煩悶が生じて来る
          バレーも坐禅も無に徹し、その根底に在る
          基本的真実を掴み取る
          その時 本当のものが生まれる という 
          事ではないのでしょうか
          無の心には "そのもの その事" の真実が宿る
          無である事の大切さですね
          
          勝手ながらわたくしのお願いを申し上げますと
          これからもそちらの御様子の窺える
          お写真を御掲載いただけましたら などと
          思っております


          takeziisan様

          いつも 有難う御座います
          暑さ寒さも彼岸まで お写真
          堪能いたしました
          わたくしは特に 道端に何気なく咲く
          彼岸花が好きです
          わたくしが子供の頃いた地方では
          死人花と言って毛嫌いしていたものですが
          
          ワルナスビ という花があるのですね
          初めて知りました
          プール 人間味が溢れていいですね
          田舎芝居 わたくしの居た地方にも時々来ました
          あの頃は映画館も乏しく 地方回りの芝居などが
          大きな楽しみの一つでしたね
          御文章から わたくし共が過ごした当時の様子が
          懐かしさと共に甦ってまいります 素朴な時代でした
          野菜の摘み取り わたくしの屋上プランターでは 
          ニラが今獲れます
          地植え野菜とはもちろん 雲泥の差ですが
          それでもわたくしに取っては楽しみの一つに
          なっております
          これからは冬に向かって野菜の季節も終わりかも  
          知れませんが またのお写真 楽しみにしております