遺す言葉

つぶやき日記

遺す言葉(401) 小説 引き金(完) 他 政治は信念ほか

2022-06-19 11:44:44 | つぶやき
         政治は信念(2022.6.8日)


 政治は信念だ
 信念とは心だ
 心とは言葉だ
 心を持つ政治家は
 紙に書いた文章 文字など
 必要としない
 自分の心 言葉で語る
 紙に書いた文字 
 文章を読むだけの政治家は
 政治家とは 言えない
 官吏にしか過ぎない


       心(2022.6.6日作)

 形式に捉われ 心を忘れるな
 心とは 人間を形成する主体
 人と人とを繋ぐ糸
 人間存在の根本 根源
 心のない人間は
 人間の形をした木偶
 形式は人間が創り出したもの 付属品
 それが人の心を超える事はない
 心は形式を超越する
 心の前で形式は 無 無





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          引き金(完)



 三杉を迎えたのは全く見覚えのない、三杉と同じ年配の男だった。
「西川幸三さんは、いらっしゃいませんか ?」
 三杉の問い掛けに男は訝しげな顔で答えた。
「幸三 ? 幸三っつうのは俺ら家(おらえ)の祖父様(じっつあま)だあ。だけっど、祖父様なら、はあ、五十年近ぐも前(めえ)に死んでるど」
「死んでる  ? 幸三が死んでる ?」
 三杉は思わずそう言った。それから、
「そんなバカな !」
 と、抗議をするような口調で言っていた。
「バガなって言ったって、死んでる者(もん)は死んでるだあ。どう仕様もあんめえ」
 男は言った。
「じゃあ・・・・、源さんや直治さんは ?」
「源さんや直治さん ? 知んねえなあ、そんな人・・・・。ああ、そう言えば新田(しんでん)の祖父様が源さんつう名前(なめえ)だったなあ。聞いだ事(こど)があるよ」
「その人は居るんですか ?」
「居るがって ? バガげだ事ば言うもんでねえ。源さんなら、俺ら家の祖父様よりも、もっとずっと前(めえ)に死んでるよ」
「ちよっと、あなた、おかしいんじゃないの ? いいですか、わたしは昨日、源さんと直治さんと幸三の四人で、猟の為に山に入ったんですよ。それでわたしは山の中で迷ってしまって一夜を明かし、今朝、ようやくこうして戻って来たところなんです。それなのにあなたは、まるで訳の分からない事を言っている。いったい、どういう事なんですか ?」
 話しの辻褄の合わなさに三杉は苛々しながら、思わず男を責めるように荒い口調になっていた。
「どういう事なんだって言ったって、おめえ・・・・」
 男は三杉の剣幕に困惑した様子と共に、どこかしら、尋常ではない人間を相手にする時のような、蔑みと憐みの混じった表情を浮かべて言って言葉を濁した。
 三杉は男の表情の中に蔑みの色を感じ取ると、一歩、後に引いた。それから改めて旅館の名前を確認した。
 「旅館 西川」は表向き、何も変わっていなかった。しかし、何かが変わっていた。その何かがなんであるのかは分からなかった。ただ、人の存在の異なる事だけは確かな事実だった。
 いったい、何が変わってしまってるんだろう ?
 三杉にはその時、自分自身の存在にさえ、不安な思いを抱かずにはいられない気持ちが湧き上がって来ていた。
 その不安から逃れるように三杉はじりじりと、男の前から後退していた。
 一刻も早く、この場を逃れたい。
 そして、次に三杉が気が付いた時には、西川旅館は眼の前から消えていた。
 三杉は再び、荒涼とした芒の原に一人、佇んでいた。
 これから、どの道を辿って行けば、西川達が居る「旅館 西川」に行き着けるのか ?
 既に太陽は高かった。
 仕方がない、もう一度、先程辿って来た道を戻ってみよう。それで今はもう、漁から戻っているかも知れない女に、改めて、確かな道筋を聞いてから再び、帰路に着く事を考えよう・・・・。
 
 いったい、あの夢にはどんな意味があったのだろう ?
 理解不能、不可解な夢は、三杉には、現在、今を生きる自分自身の姿そのものに思えた。生きる事の意味を見失い、日々、虚脱の中に時は過ぎて逝く。何も無い人生。何かをしたいのに何も出来ない人生。心に抱く夢は限りなく大きく膨らむのに、その麓に辿り着く事は永遠に出来ない。自身の肉体が抱く不安が、ことごとくその夢を消し去り、吹き払って行く。死の影が眼の前に立ち塞がり、怯える時間だけが過ぎて逝く日々。本来の三杉の居る場所は今いる場所とは別の所にあった。しかし、その場所に戻る事はもう出来ない。
 ベッドに仰臥したまま三杉は、あの不可解な夢に触発されたように自分の人生への、失望の思いだけを深くせずにはいられなかった。ーー何かが狂ってしまっていた。何処かで狂ってしまっていた。
 その狂ってしまった人生を再びやり直し、元に戻す事は永遠に出来ないのだ。束縛された肉体がその夢を奪っているーー。
 
 夢の中の三杉は再び、芒の原から杉林の中へ入って行った。
 だが、その三杉はもう、女に会う事は出来なかった。のみならず、あの眼を見張るような湖水の透明感と極彩色の色どりの樹々に囲まれた湖に出る事もまた、出来なかった。三杉が歩いて行く先には、杉の巨木の薄暗い闇が広がるばかりで、行けども行けども、湖がその姿を見せて来る事はなかった。
 あの、女の小さな家は兎も角として、湖が探せ出せないはずはない。
 三杉は何度もそう呟いた。
 しかし、依然として、湖も、女の居た小屋も、再び、見い出す事は出来なかった。
 三杉は総てを諦めかけていた。あとは、成る様になるしか仕方がない、と思った時、偶然にも杉の巨木の間を通して、巨大な空間が開けているのが見えて来た。瞬間、三杉は湖かと胸を躍らせた。急かれる気持ちと共に立ち塞がる芒の繁みを掻き分けながら、疲労も忘れて突き進んだ。だが、その期待も結局は虚しく終わった。
 杉の巨木の林をやっと抜け出たと思った時、三杉の眼の前に現れたのは、あの湖の美しさとは比べくもない空間、空虚な空の広がりだけであった。
 ーー夢はそこで終わっていた。
 夢の中の自分がその後、どうしたのか、無論、三杉には知り得なかった。
 俺はあれから、いったい、どうしたんだろう ?
 三杉はふと、思いを巡らせた。
 何も答えは得られなかった。
 枕元では置時計が正確な時を刻んでいた。
 その時計に眼をやった。
 午前二時を少し過ぎていた。
 四時までには、まだ間がある、と三杉は思った。
 何故か、眠れそうになかった。
 夜明けと共に出発する予定の西川達との狩猟を思った。
 それでも気持ちは晴れなかった。暗く沈んでいた。
 何時もは、期待感にワクワクしながら眠れない時間を過ごすのだったが、今夜に限って楽しめなかった。
 夢のせいかと思った。
 孤独感だけが何故か、胸を深く浸して来た。
 自分一人だけがこの世界に取り残されて、こんな深夜に目を覚ましている、そんな気がした。
 ベッドの横の壁には革ケースに収められた猟銃がひっそりと立て掛けられてあった。

 心は静かだった。
 仕事の事も、家庭の事も気にならなかった。
 妻の多美代も、娘の奈緒子も、西川や源さん、直治さんも皆、遠かった。
 光枝だけが僅かに身近に感じられたのは、夢の中で見た女性が、何処か、光枝を連想させたからに違いなかった。
 だが、それも、どうでもいい事であった。
 恐怖心はなかった。
 自分の人生への夢も希望も失った人間には、あとは真性の死が待つばかりだ、と思った。
 少しでも音を消す為には銃身を毛布で包めばいい、と考えた。



              完



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           takeziisan

            何人もの作家の作品に 眼をお通しのtakeziisan様に
            そう おっしゃって戴けると嬉しい限りです
            張り合いになります
            ただ わたくしは自身の人間観 世界観とでも言いますか そのようなものを
            最初の取り留めもない文章と共に 一応 小説と名乗った形式で 書き残して置きたいと思った事から
            始めた事ですので 何分 独り善がりの傾向の多い文章になってしまいますが
            それでも 出来るかぎり人様にお読み戴いても   
            それに耐えられるように書きたいとは思っているところです
            コメントの御言葉を嬉しいお褒めの言葉として頂戴致し
            これからも続けていけたらと考えています
             今回も様々な記事 楽しく拝見させて戴きました
            重い腰を上げて・・・
            結局 この行動が無意識のうちに健康維持に働いているのでは
            ないでしょうか
            億劫だと言って 身体を動かさないでいれば たちまち
            錆びついてしまいそうな気がします
             猫体操はわたくしも毎朝目覚めるとしています
            その後 一時四十分ほどの様々な組み合わせの自己流体操をしています
            その御蔭か 今のところ 少しの腰の痛みを除いて
            不具合を覚える事もありません 猫体操をするようになってからは
            腰も軽くなったような感覚を覚えています それだけに
            無意識裡に猫体操にも力が入ります
             東京のバスガール 懐かしい光景です
            あの当時のわたくし達の年代の人間には馴染の光景で
            わたくし自身も上京をした折りに 秋葉原から山手線(やまて線ーやまのて線ではなかった)に乗り代え
            池袋に向かう途中で全く同じような体験をしています
            当時を思い出させてくれる 良い御文章でした
            時代の証言としても大切なものです
             ナス一本 今年の天候不順 野菜不足 価格の高騰 
            象徴しているようです
             アナベル  この花 見てはいましたが名前は初めて
            いろいろ 今回も楽しませて戴きました
             コメント共々 有難う御座いました

            


          
           桂蓮様


            有難う御座います
           新作 拝見してびっくり 仰天とは正にこの事
           どうぞ ごゆっくりお休みになって 身体を治して下さい
           御作を拝見出来なくなるのは寂しいですが御体を大切に 
           治りました後を楽しみにしております
            それにしても桂蓮様 頑張り屋の御様子 何事も
           突き詰めなければ気が済まないお方のようにお見受けします
           これは持って生まれた性格的なもので なかなか直らないものですが
           人間 息を抜くのも大切と御自分に言い聞かせ くれぐれも
           御無理をなさらないようにして下さい せっかくのバレーの楽しみも
           身体の自由が利かなくなったら失われてしまいます
           神経痛は完治が難しいものですが 痛みと付き合いながら 
           長く御趣味の楽しみを活かして下さい
           せっかくここまで来たのに出来なくなってしまった では
           悔しいですもの
           戴いたコメントではバレーはお続けの御様子 一安心です
           どうぞ気長に頑張り過ぎずお楽しみ下さい
            ポワント 筋肉 了解 素人にも分かります
            バレリーナ―を見て一番 驚く事です
            桂蓮様のこの姿 拝見したいものです
           何時も有難う御座います
            どうか1日も早く 御体を御治し下さい
            陰ながらお祈り致しております