最後の手紙(2022.11.29日作)
「さよなら」の四つの文字を口紅で
あなたのお部屋の白い扉に
書いて来ました
この手紙 あなたの元に届く頃
わたしは一人 遠く離れた海辺の町の
ちっちゃなホテルにいるでしょう
愛されて幸せでした昨日まで
あなたの癖さえ真似て身に付け
生きて来たのに
今はもう 望みも失せたこの心
明日は一人 消えてゆきます哀しみ抱いて
青い真昼の海の底
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華やかな嘘(6)
車内は日曜日のせいか、比較的、空いていた。
明子の隣りにはプログラムを手にした、映画の帰りと思われる十七、八歳の男女の連れがいた。
二人は時々、思い出したように、いま観て来たばかりらしい映画の話題を口にしては小さな声で笑い合っていた。
空席を一つ置いた左隣りにはスーツ姿の中年の男性が、両手でしっかりと押さえた黒革の鞄を膝の上に置いて、眼を閉じたまま静かに座っていた。
そんな車内の雰囲気を意識すると同時に明子は次第に、自分が現実の世界へ引き戻されてゆくような感覚に捉われていた。
豪華なホテルでの川野との思わぬ形での再会は、明子の正装と共にひと時の夢見心地を明子に与えていた。
その夢見心地がありふれた電車内での日常風景と共に遠い彼方へと飛び去っていった。
明子は途端に、蔦模様の織り込まれた黒いベルベットの優雅なスーツにも、滑るように軽やかなシルクのブラウスにも、その他、身に付けた物の総てに借り物のぎごちなさを意識せずにはいられなかった。
純銀の鎖のイヤリング、同じネックレス、三個のダイヤを嵌め込んだ大型の指輪、みな姉からの借り物だった。
明子がホテルのロビーで川野に話した事など、みんな嘘だった。
これから明子が帰る公団の集合住宅四階には確かに、十一歳の息子と九歳の娘がいた。だが、夫は建築家などではなかった。浦和市内の町工場で働く平凡な事務員だった。
現在四十二歳の夫は明子と知り合った十二年前から同じように、変わらぬ暮らしを続けて来た。唯一の趣味が競馬で休日の前夜には、食事の時間も惜しむかのように幾種類もの予想新聞に眼を通していた。
「御飯を食べる時ぐらい、それを見るのをやめたら」
明子が何度注意をしても、五分後にはまた視線は新聞の上に戻っていた。
そんな夫だったが、性格は穏やかで、子供達の面倒見もよかった。
生活費を競馬に注ぎこむ事もなかった。
それが現在まで、二人の結婚生活が続いて来た理由に違いなかった。
明子がそんな夫と知り合ったのは、高校生時代の男友達を通してだった。
その頃の明子はまだ、心身の痛手も払拭されないままに、誰か、身を寄せる事の出来る存在を無意識の裡に求めていた。
初対面の夫は、一見、凡庸な感じではあったが、何処となく人の好さのようなものが感じられて、明子はただ、ひたすらに自分の道を追い求める川野とは正反対の人物像を見ていた。
現在、明子は自分を不幸だとは思わなかった。世間一般の家庭生活とはこんなものに違いないと思った。ごく平凡な夫と二人の子供。そして、慎ましやかな生活、日常、日々。
以前、日本国中を走り廻っていた明子からすれば考えられない現在の境地であったが、明子の裡には既に諦念の思いがあった。
これでいいのだ。
これがわたしの日常、生活、そして人生。
これ以上、望むものはない。
若さに任せていたあの頃は、ただ、華やぎだけを求めていた。
それにしても、と明子は改めて思った。
川野は今、かつて自身が望んでいたような日々を満足感と共に生きているのだろうか。
十何年かぶりで会った川野は中年肥りと共に、頬のたるみも、額の広がりも顕著になっていたが、自信に満ちた口振りで、
「期待をかけている女の子が一人いるので今、躍起になっているところなんです」
と言った。
明子は結婚した当初、何時まで経っても川野幸二の作詞家としての名前が歌番組のテレビ画面に見えない事で、もう、作詞家は辞めてしっまたのだろうか、と思ったりした事もあったが、そのうちに、最初の子供を身籠ったり、出産したりで、何時か、川野への関心もなくしていた。そして今日会った川野は新人発掘のプロデューサーをしているという事で、川野の名前を見る事のなかったのも、その為だったのか、と改めて納得する思いだった。
だが、明子の心の裡ではその言葉を聞くのと同時に、微妙な感情もまた蠢いていた。
明子自身が意識しない、川野への報復の思いだった。
プロデューサーをしている・・・・。
明子は無意識の裡に川野の凋落を望んでいた自分がいる事に気付いた。と同時に、川野の現在の境遇に対抗するように、より高い場所に自分を置きたい思いに捉われていた。
夫は建築家です、と言った言葉は無意識のうちに咄嗟に出た言葉だった。
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takeziisan様
有難う御座います
何だかんだとこぼしながら お元気な御様子
ちょこっと歩いて八千歩 恐れ入りました
日頃 歩きなれていないと こういう訳にはゆきません
感服です
美しい写真 堪能です わが家でも今 ナナカマドがきれいに色付いています
ひと時 安らぎの気持ちに誘われます
わが家では今年 ボケの花が結実しました
焼酎漬けなどにすると良いと聞きましたがが なんだか怖くて食する気にはなれません
バレル―おぶさる
ショウシイソイー恥ずかしい
初めてですが関東の言葉とは違った優しい心持が偲ばれる言葉です
何処の方言でも 方言には独特の響きと良さがあります
荒い言葉には荒いなりに良さがあります
方言は大事にして貰いたいものですね
里芋 大豊作 その新鮮な美しさ 白菜の瑞々しさ 豊富なゆず
いいですね 豊かな自然の恵み
それにしてもネギの雑草 一仕事の苦労がしのばれます
この苦労があってこその自然の恵みなんですね
マイウエイ ミラボー橋
何時聴いても良い曲です
ミラボー橋は芦野宏が得意としていた曲ですね
事実 良かったです
堀口大学の訳が有名ですが わたくしの手元にあるフランス名詩選には
安藤元雄の訳があります
訳す人によってそれぞれ異なりますので何時かも書きましたが
原文で読んでみたいものです
今回もいろいろ楽しませて戴きました
毎回 駄文にお眼をお通し戴く事への感謝と共に
御礼申し上げます
桂連鎖
有難う御座います
神経痛 ? あまり無理をなさいません様に
わたくしは神経痛は何年もかけ 自分で治しました
筋を伸ばす事だと思います 激しい運動ではなく
静かに筋を 筋肉を伸ばす 血行の悪くなる事が原因の場合が多いようですので
無理をしてはかえって良くないと思います
バレー公演 羨ましい限りです 何と言っても
映像で見るのとは迫力が違いますから
御主人様との仲御睦まじい御様子 良い写真です
意識を超える 新作 拝見しました
意識を超えるーー自分を無くす事 何事でも他人の眼を気にしている限り
良い仕事は出来ません
自分が無くなれば他人もない 禅の境地です
総ては無 無の中に自分を置く
キリスト教の神の信仰なども そこに辿り着くのではないでしょうか
総てを神の御心のままに・・・・ 結局赤裸々の自分を堅持出来れば
怖いものはなくなります 言いたい人はどうぞ御勝手に好きな事を言いなさい
わたしは何時でもここに居ます あなたが何を言おうとわたしはわたし
変わる事はありません わたしはわたしを生きてゆく
自身 気持ちさえしっかりしていれば 何も怖れる事はない
わたしはわたしの道を行く
昔から言われている事ですが それがまた難しいーー
人間は煩悩を背負った塔ですから
どうぞ 余り御無理をなさらずにバレーも根を詰めずに楽しみながらして下さい
有難う御座いました お身体お大事に
あまりここへ来る時間がないものですから
新作がない時でも来た時には 旧作の英文との合わせ読み楽しませて戴いております