孤独の夜(2022.12.6日作)
涙に濡れて 夢に目覚める
暗い真夜中 心が寒い
灯りも点けず 煙草を探す
ベッドは冷たい 氷のようね
乾いてあせた 唇かんで
割れた鏡に 心を映す
女の幸せ 夢見る夜の
静寂(しじま)が痛い 寒さが沁みる
どこにも居ない 誰もいないわ
遠く遥かな 思い出ばかり
涙の谷間に 浮かんで消える
果てない夜更け 孤独が辛い
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華やかな噓(完)
川野の前に惨めな自分の姿をさらしたくなかった。
" あなたはプロデューサーとして芸能界で生きる事に成功したようですけど、わたしもまた、お陰さまで今では恵まれた生活を営んでいます "
そんな、川野に対抗する思いがあった。
幸い、姉に借りた華やかな衣装がその嘘を見事に補ってくれていた。自信満々で明子は嘘に身をゆだねる事が出来ていた。
現在、麻布に住む姉は明子とは二歳違いだった。姉の夫は建築家で夫婦共々、アメリカに長く暮らしていた。その顔の広さゆえに交際も多彩で、パーティーなどにも頻繁に顔を出していたらしく、姉は数多くの衣装を持っていた。
明子と姉は顔も体型もそっくりな姉妹で、よく双子に間違えられた。姉に借りた衣装はそのままで明子の体に合った。
明子は鏡に向かうと日頃の生活のやつれを打ち消す為に、念入りに化粧をした。アイシャドーも口紅も濃いめに施した。
そうして化粧が終わるとしばし、鏡の中の自分に酔っていた。まだ、昔の感覚もセンスも失われていない、自分で自分に言い聞かせ、満足していた。
そして、あのホテルのロビーで・・・・。
見事に自分を隠しおおせた演技を終えたあとで明子はふと、明子の言葉を聞いた川野の表情の中に何故か、微妙に走る翳りのようなものを意識して、いわれのない優越感に捉われていた。
多分、川野は明子に平凡な家庭の主婦を想像していたのだ。
その明子が今、豪華な衣装を纏って眼の前にいて、自分よりは恵まれた生活環境を生きている・・・・。
多分、川野はそう思ったに違いないのだ。
明子はその時、そんなふうに川野の心のうちを捉えていた。そして今、我が家へ向かう走る電車の中で、自分にはまだ一人の男を狼狽させるだけの力が残っているのだろうか、と微かな自惚れにも似た心地良い心の動きを意識していた。その川野は、
「でも、あなたが幸せでいてくれて、本当に良かった」
と幾分、疲れたような元気のない声で言った。
ホテルのロビーから見える街の景色は夕闇が一段と濃くなっていた。
夕闇が明子の心を急かせた。
「これから帰って夕飯の支度では、もう遅いですね」
外の暗さと共に見せる、明子の何処とない落ち着きのなさを見て家庭の主婦を連想したらしく川野は言った。
だが、その時、明子が気にしていたのは、夕食の支度などではなかった。明子はただ、次第に増して来る川野と向き合っている事への居心地の悪さを意識するようになっていただけだった。
ふと、話題が途切れるのと共にその居心地の悪さは増した。
二人の間がまだ濃密だった頃は、話題の途切れた後の沈黙もまた、なんとはない心地良さをもたらしてくれるものだった。
しかし、歳月を経た今、最早、沈黙の中で二人の間に通い合うものは何もなかった。重苦しさと居心地の悪さだけだった。
明子は川野が家庭の話題を持ち出したのを機に席を立って、クロークルームへ向かった時には、苦痛から解放されたような安堵感を抱いていた。
タクシーの座席に腰を降ろし、ドアが閉められた時にはやっと自分を取り繕う嘘から逃れられた、という感覚の中で深い安堵の溜息をついていた。
川野は意識してなのか、それとも初めからその気はなかったのか、明子の電話番号を聞いて来る事もなかった。
明子はその事を認識するのと共に、もう再び、川野に会う事もないだろう、と自分の胸の中で言っていた。
偶然が思わぬ出会いを二人にもたらしたが、総ては遠く過ぎ去った昔の事のような気がした。
今の明子には平凡な家庭と、平凡な日常があるだけだった。この平凡な日常をこれから先も、日々、生きてゆくだろう。それ以上を今の明子は望もうとも思わなかった。平凡でも波風のない生活、それさえあれば良いと思った。
川野も今は昔、夢見た作詞家への道を捨てて、世間の眼には触れる事の少ないプロデューサーとして生きている、という事だった。そして、明子に取っては、それもどうでもいい事だった。遠い世界の事のような気がした。
電車は何時の間にか、浦和駅に近付いていた。車内放送がしきりに告げていた。
" ああ、もう浦和だわ "
明子は夢から覚めたような思いで呟いた。
こんなに遅くなってしまった言い訳をどう言ってしようか・・・
夕飯は夫が作ってくれているだろうから、子供達を心配する事はない。
今度の結婚式も、夫の友人の娘さんだという事で、夫自身が出席するはずだったものが、思わぬ脚の骨折でそれが出来なくなり、日時も迫っていた事もあって、急遽、明子が出席するはめになっていた。これも急遽借りた衣装は、明日か明後日にでも、姉の所へ返しに行く心算でいた。
それにしても、と明子は思った。
思わぬ川野との再会であったが、偶然にも、この豪華な衣装を身に纏った華やかな自分の姿を見せる事の出来た幸運に感謝しなければ・・・・
かつて自分を捨てた男に蔑みの眼で見られるような事は、明子にしてみれば耐えられない事であった。
完
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桂蓮様
お忙しい中 お眼をお通し戴き 有難う御座います
和文と後書きなど
この文の中のバレー体験面白いですね
こうして身体で覚えてゆく事で本物になるのでしょうね
そして人の苦労も理解出来るようになるのでしょうね
生半可な人間に限って ああだこうだ 文句を言いたがるものです
本物を知る人間は概して寡黙です
後書き 面白く拝見しました 幾つもの言語を駆使する人にしか
分からない境地です
それにしても 禅の言葉を訳す 並大抵の事ではないと思います
それこそ禅の言葉の中には一つ一つ 隠れた深い意味が込められていますから
何時の日にか禅語録を拝見してみたいものです
お忙しい中 お眼をお通し戴き 御礼申し上げます
takeziisam様
有難う御座います
今回もブログ 楽しませて戴きました
茶色の小瓶 懐かしいですね
むかし見た映画のワンシーンを思い出しました
楽器を左右に振るあの動き 映画のシーンそのままです
繰り返し 二回見ました
シャコバサボテン ほったらかしのままのせいか 今年
わが家では駄目です
川柳 バラは枯れてもバラなんですね
あとについてーー平凡の中に人生の宝がある
まだまだこれからだーーこれから峠の登り路
大根と侮るなかれ 大根無くしておでんはない
小かぶ 今の季節 かぶは美味いですね かぶの味噌汁大好物です
それにしても数々のジャム 食卓の豊かさがしのばれます
羨ましい限りです
入選川柳 皮肉ボヤキたっぷり 川柳は面白い
ビートルズがお分かり お若い わたくしは以前にも書きましたが
プレスリーまで
青い山脈 原節子で観ました 当時 新人の杉葉子が話題になった映画でした
その杉葉子も原節子も亡くなりましたが もう一度観たい映画です
「へんしい へんしい ○○子さん」 恋を変 と書いたラブレターが
話題にもなった映画です
青い山脈は東北を舞台にした映画ですが それにしても東北 北陸の雪は凄いですね
金曜の夜もNHK「新日本紀行」で北陸の冬を放送していましたが
屋根の雪下ろし 冬の一仕事ですね
ブログにお書きのように太平洋側 特に温暖な千葉県などにいる人間には想像も出来ません
五センチ 十センチ積もるともう フウフウです
山茱萸の名前を最近になってお知りとはちょっと意外
民謡にも 庭のサンシュユの木に鈴かけて・・・・という歌があります
物知りじい にしては と意外に思いました
その他 今回もいろいろ美しい写真 花々 楽しませて戴きました
何時もいろいろ 有難う御座います