本物(2023.7.7日作)
物事は総て
無意識の行動の域に達しなければ
本物とは言えない
意識しての行動は まだ
その行動が 身に付いた 本物 とは
言えない――未熟
松は松として 無意識の裡に存在する
竹は竹として 無意識の裡に存在する
松は松で 竹にはなれない
竹は竹で 松にはなれない
松は松の本性そのまま 堅固に
松として存在する
竹は竹の本性そのまま 自在に揺れ動き
竹として存在する
人も同じ事 自身の身に備わった
本性そのまま 行動する
その行動こそが 自己を最も顕著に
証明する 本物と言える そこに
計らい 計算はない
計らい 計算の世界は
借り物 無意識裡
自然に手が 身体が 頭が 心が動く
本物の世界は そこに在る
ーーーーーーーーーーーーーーーーーー
いつか来た道 また行く道(17)
わたしは暗い芝生の上を白樺の落葉を踏みながら車庫へ向かった。
中沢はアプローチ(通路)を辿って車を廻して来た。
わたしは車庫の扉を開けると、運転席の窓を開けている中沢に向かって、
「この右側に入れて頂戴」
と、わたしの車が入っている右の場所を指差して言った。
中沢はいったん車を戻して方向を変えて来るとバックで車庫に納めた。
わたしは車庫の入口に立ったまま、ここで一気にやって(殺して)しまう事も出来たのだ、思いをめぐらした。
中沢が車から出るところを一気に襲うーー
しかし、すぐに、わたしより背の高い中沢を殺るには少し無理がある、と思い至った。
それに、ここでは中沢も自由に動けるし、もしもわたしの力が足りずに失敗した時には、取り返しの付かない事になる・・・。
中沢が車から降りて来た。
何故か彼は、ひどく寛いでいる風に見えて警戒する様子はまるで見られなかった。二十日の夜、わたしの車の中で見せた怨念のこもったような暗い翳は微塵もなくて、何時もの彼の身に付いた軽薄さだけが浮き立って見えた。
わたしは中沢が車庫の外へ出ると明かりを消し、電動扉のボタンを押した。
「何処から来たの ? 部落の中を通って来たの ?」
黄色くなった芝生の上を中沢と並んで歩きながらわたしは聞いた。
「そうだよ。だって、それしか道がないじゃん」
中沢はわたし達がまだ親しかった頃の打ち解けた口調で答えた。
当時のわたしにはそんな中沢の軽薄な口調が心地良く感じられたものだったが、今のわたしにはその口調も唾棄したい程の嫌悪感でしか受け止められなかった。
わたしは彼への苛立ちを懸命に抑えながら、
「誰にも会わなかった ?」
と聞いた。
「誰にもって ?」
彼はわたしの質問が理解出来ないように聞き返した。
「部落の人とか、他の車とかに」
「会わないよ。誰か来るの ?」
彼は初めて軽い疑念を抱いたようにわたしを見て聞き返した。
「誰も来ないわよ。なんで、来なければならないの。こんな所に」
わたしは彼に警戒心を抱かせたか、と狼狽の気持ちに捉われながら思わず並んで歩く速度を速めていた。
中沢もわたしの歩調に合わせて後を付いて来たが、別段の疑念も抱かなかったようだった。
わたしが先立って明かりの無い玄関に入ると、中沢も後に従って、
「なんだ、暗いなあ。明かりを点ければいいのに」
と言った。
「大丈夫よ。靴はそこに脱いで置けばいいんだから」
わたしは突き放すように言って先に上がった。
彼はお客ではない !
中沢は大広間に入ると、
「でっけえ部屋だなあ」
と、まず感嘆の声を上げた。
わたしはそんな中沢は無視したまま、窓際のテーブルに向かいながら、
「管理人のおばさんに食事を頼んであるんだけど、夜遅くなるって言ったので、まだ出来て来ないのよ。お腹が空いていたら、そこにあるバンを食べていて」
と言った。
中沢はわたしが指示した袋の中を覗くと缶コーヒーを取り出した。
「クスリはどうしたの ? 持って来たの ?」
やはりその事が気になって聞いた。
「うん。車の中に置いてある」
まるで罪悪感がないように彼は、あっけらかんとして言った。
「嫌よ、わたしの前であんなものをやらないでよ」
わたしは厳しい口調で言った。
親密だった二人の関係に亀裂が入ったのもそこからだった。
「大丈夫だよ」
中沢はわたしの厳しい口調も軽く受け流すように言って、手にした缶コーヒーの蓋を開けた。
「今、お風呂に火を入れて来るから、沸いたら食事が来る前に入っちゃいなさい」
幼い子供に言い聞かせるようにわたしは言った。
「いや、風呂はいいよ」
突飛なわたしの言葉も気にする様子もなく彼は言った。
「駄目よ、汚い身体じゃわたし厭よ」
わたしは言った。
その言葉で中沢はすぐにわたしの真意を理解したらしかった。軽く微笑んで缶コーヒーを口に運んだ。
「明日はどうせ、午後からでないと相手に会えないから、今夜はゆっくり出来るわ」
わたしは以前のような親密感を込めて言った。
彼は軽く肩をすくめてからかうようにわたしを見た。
わたしには親しい彼の眼差しだった。
わたしは、総てがわたしの計画通りに進んでいる、と自覚しながら浴室に向かった。
湯船の湯はそれ程冷めていなかった。
すぐにガス栓をひねって火を入れ、トレーニングルームの入口に置いてあるタオルにくるんだダンベルを確認してから居間に戻った。
中沢は菓子パンを取り出して食べていた。その様子を見て、このバカ者は自分が脅迫した相手に対して、こうも無防備でいられるのだろうかと、わたしはその軽薄さに驚きの感情をさえ覚えていた。いずれにしても、わたしに取っては好都合な事だったが。
わたしは軽いほくそ笑みの気持ちと共に気を良くして言った。
「ちょっと、おばさんに電話をして来るわ。その椅子に座って待っていて」
無論、電話などする気はなかった。彼と顔を突き合わせていたくなかっただけだった。心の内を悟られる事への警戒心が働いた。
わたしは電話機の前へ行くと電話を掛ける振りをして三、四分を過ごした。
その後、浴室へ行った。
湯船の湯は適温になっていた。
わたしは広間に戻った。
中沢は菓子パンも食べ終わって、ソファーの背もたれに頭をもたせ掛け、天井を見つめてぼんやりしていた。
「お風呂が出来たわ、入ってみて。入っているうちに食事も出来て来そうだから」
中沢の背後からわたしは言った。
中沢は体を起こし、振り返ってわたしを見た。
「タオルを出して来るからお風呂場へ行っていて」
中沢は素直にわたしの言葉に従った。
彼にしてみれば二人の関係は既に完全に元の関係に戻っている、そうとしか思えなかった。
それに彼の眼にはは、この広い部屋の豪華さが総て新鮮に映るらしかった。その驚きで疑いの気持ちも忘れているようだった。
わたしが洗顔タオルとバスタオルを持って浴室へ行くと、彼は既に脱衣室に居て浴室を覗いていた。
浴室は金色をあちこちに散りばめた贅沢な造りになっていた。彼はそこに興味を引かれていたらしかった。
わたしがタオルを持って近付くと、正面の大きな鏡の中でわたしを見付けて振り返り、
「一緒に入ろう」
と、わたしの肩を掴んで言った。
と、わたしの肩を掴んで言った。
わたしはその手を振り払って、
「駄目よ。おばさんが何時、食事を持って来るか分からないわよ」
と言った。
ーーーーーーーーーーーーーーー
桂蓮様
御身体不調の中 御眼をお通し戴き有難う御座います
術後 間もない御身体 余り無理をなさらぬ様にして下さい
わたくしも大腸がんを手術した経験があります その時の
身体に器具をつながれて身動きの出来なかった時の苦しさ
経験があります 二度と病気はしたくないとつくづく思いました
バレー まだまだ無理 慌てず焦らず 気軽に気楽にゆきましょう
それにしても冒頭の写真 いつも見惚れています
良い絵です 同じ湖 同じ樹でありながら 何故か
日本に見る雰囲気とは異なって見えるのは何故でしょう
アメリカと日本 国土のスケールの違いが 自ずと雰囲気として
醸し出されるのかも知れません
それにしてもあの巨木が切り倒される ちよっと残念な気がします
あの大きさになるのに何年かかった事か でも人の身に降り掛かる災害を思う時
仕方のない事もあるのかも知れません
日本でも神宮の森の巨木が切り倒される事への賛否が沸き起こっています
わたくしとしては勿論 切り倒し反対です 貴重なこの地球上の証拠品を
一気に葬り去ってしまう訳ですから
金銭的 商業的思惑の罷り通る世の中を憂うる思いです
とうぞ 御身体が元の状態に快復するまでくれぐれも無理を
なさらないで下さい
有難う御座いました
takeziisan様
何時も有難う御座います
美しい花々の数々 存分に眼を楽しませて戴きました
それにしてもこれらの花々 正に花博士といったところです
なんだか見ているだけで楽しくなって来ます
野に咲く小さな花々 田舎に居た時の自然を思い出します
懐かしい風景です 先日も書きましたが あの自然の中に
当時の状況のまま身を置いてみたいです
トウモロコシ失敗 ?
トウモロコシは易しいものだとばかり思っていました
子供の頃の田舎道は畑の中が多くてその畑の畔には夏の間
何処でもトウモロコシが稔っていました
わたくしにとってはトウモロコシの稔る風景は夏の風物詩です
昔は確か 農薬などは使わなかったはずです
記事を拝見して意外感に打たれました
ゴーヤ ブルーベリー 近所付き合いの暖かさ
気持ちがほのぼのします
昔の農村では当たり前の風景でした
都々逸 浪曲 漫才 とんち教室・・・
ラジオが唯一の娯楽 懐かしいですね
これも以前に書きましたが 夏のお盆の夜など
庭で遊びながらラジオから流れて来る 俗曲の時間 の
放送を聞いていました 都々逸 新内 民謡 端唄 小唄
今でもあの時の景色が記事と共に鮮明に蘇って来ます
楽しい記事の数々 有難う御座いました
束の間 息抜きの時間です
世の中 余りに悲惨な出来事が多過ぎます