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遺す言葉

つぶやき日記

遺す言葉(374) 小説 岬 または 不条理(3) 他 歌謡詞 あなたの靴音

2021-12-05 12:22:12 | つぶやき
          あなたの靴音(1970.11.12日作)


 哀しみの心に 今も聞こえる  
 あなたの靴音 
 愛が壊れて消えた時
 夜の街に あとも見ないで去った人
 あの時の あなたの靴のかすかな音が
 今でもわたしの心に
 哀しい響きを残してる

 哀しみの心に 今も聞こえる
 あなたの靴音
 誰のせいでもないけれど
 いつか砕け 過去に沈んでいった恋
 さよならも 言わずに一人背中を向けて
 あなたは冷たく去ってゆき
 靴音ばかりが響いてた
 
 二度ともう 帰らぬのなら思い出なんか
 なんにも欲しくはないのに
 消えないあなたの靴の音



          ----------------



          岬
            または
                不条理(3)


 三津田の方からしてみれば不気味だったが、しかし、相手は脅迫めいた事は何もしていない。ただ、用事を頼まれてくれ、と言うだけだった。第三者から見た場合、この事はどのように受け取られるのだろうか ? もし、警察が動いた場合、相手の男はどのように弁明するのだろう ?
「わたしはただ、取引をしたいと思ってこの方に、用事を引き受けてくれと、お願いしているだけなんです。それが罪になると言うんですか」
 相手の男はきっと、そう言うだろう。
「だから、わたしは何度も断ってるんです。それなのにこの人は、それでもしつこく夜中に電話を掛けて来たりするんですよ」
 三津田は反論する。
「この人が断っているって言うのに、なぜ、そんなしつこく付き纏うんだね」
 警官は男に言うだろう。
「いいですか、お巡さん。あなたはセールスマンや、何かの勧誘で訪問を受けた事はありませんか  ?」
 男は警察官に向かって言う。
「銀行にしても、証券会社、化粧品販売、新聞の購読勧誘、何かの宗教の勧誘、今ではありとあらゆるものが、訪問販売などをしている世の中じゃあないですか。それなのになぜ、わたし共が少しだけこの方にしつこくお願いしたからといって、それが、罪に当ると言うんですか。わたし共は、この方がお勤め先の会社の優秀な社員だと認識した上で、あるいは、少ししつこいかもしれないですがお願いしているんです」
「あなたは、この人に脅迫されたという事はないですね」
 警察官は三津田に向かって言う。
「それはありませんが、わたしとしては、何度断っても付き纏って来る、その事が堪らなく煩わしいんですよ。やめて欲しいんです」
 三津田は言う。
「わたし共があなたに付き纏う ? それは、あなたの誤解じゃないですか。確かに二度、わたしはあなたにお眼にかかりました。そして、二度、あなに電話を差し上げました。それだけですよ」
 男は心外だという口調で言う。
「事実ですか ?」 
 警官は三津田に聞く
「はい、それは確かです」
「それが、いけないと言うんですかね」
 男は勝ち誇ったように警官に聞く。
 警察官はなんと答えるだろう ?
 三津田にはそれから先は想像が出来なかった。
「それでも、わたし達の生活が、あなた方の勝手な思い込みで、えらい迷惑をこうむってるんですよ。即刻、やめて下さい」
 最後にそう言うり、三津田には残された方法が思い浮かばなかった。
 時子はそれに対して、
「事実、わたし達の生活が脅かされているんだから、一度、警察に相談してみた方がいいわよ」
 と、やはり警察に訴える事を強く主張した。
「うん」 
 と、三津田は言ったが、気持ちは煮え切らなかった。

 これが最後ではす、と言った言葉通り、男からの電話はその後、なかった。
 日常の生活上にも格別な変化は起らなかった。
 三日、四日、一週間と静かな日が続いた。
 三津田の気持ちはそれでもなお、休まらなかった。前回の例があった。一度は、これで安堵と思った事実だった。今は安心出来ないという気持ちの方が強かった。
 時子にもその気持ちは伝わっているようで、以前のように磊落闊達に話しのはずむ事がなかった。心の何処かに芒(ノギ)のように突き刺さって来るものがあった。
 両親のそんな神経質とも言えるような日常での姿は、少なからず、幼い子供達の上にも敏感に反映しているようだった。日頃、ヤンチャだった勝も真紀もどことなく神経質な素振りを見せるようになっていた。
 三津田に取って耐えられないのは、その子供達の変化だった。三津田は子供達の前では出来るだけ明るく振舞ったが、それでも、心の裡での煮えくり返る思いは拭い去れなかった。
 余分な事をしやがって  ! という思いだった。
 子供達を守る思いは、三津田の意識の中では自身の身を守る思いよりもはるかに強く働いていた。その為になら、命を犠牲にしても厭わないという確かな思いだった。
 
 三津田が無意識のうちに警戒していた男の行動に対する疑念は、間違った判断ではなかった。
 男からの最後の電話があってから、十日が経った朝だった。
 三津田は通勤電車の中で男の姿を眼にした。今までにない事だった。 
 三津田は息を呑んだ。瞬間、あの男だ、と思った。
 男は車両の前方、入り口近くに立って、吊り革に左手をかけ、新聞を読んでいた。
 男が三津田を眼にしていたのかどうかは分からなかった。
 三津田もその時、同じ車両の中ほど、やや後部よりに立ち、吊り革に掴まっていたが、車内はそれなりの混雑で、車両が揺れるたびに男の顔が見えなくなったりした。
 三津田に取ってはだが、見間違いなどするはずのない、明確に意識の中に刻み込まれた男の顔だった。
 三津田は早鐘を打つように高鳴る胸の鼓動を意識した。隣りに立つ男の陰に隠れるように身を摺り寄せると、その陰から男の様子を窺った。
 三津田が見詰める男はだが、まるで何事もないかのように、熱心に新聞に視線を落としたまま、周囲を気にする気配も見せなかった。
 三津田は、男は自分が同じ車両にいる事を知らない、と判断した。
 男もやはり、出勤途中なのかとも思った。
 それにしても、これまで、男の姿など見た事はなかった。
 それが疑念として心に残った。ただ単に、これまでその事に気付かなかっただけとは思えなかった。
 三津田は疑念を抱いたまま、電車が東京駅に到着すると、下車する人々の陰にに隠れるようにして電車を降りた。
 男の様子を窺う余裕はなかった。
 電車を降りて、車両が動き出すと始めて三津田は男が乗っていた方角へ視線を移し、男が同時に下車したかどうかを探った。
 男の姿は見当たらなかった。
 安堵の思いが沸き上がった。男がそのまま車内に残った、という思いが強かった。
 三津田はそれでも用心して、朝の混雑するホームの人混みに紛れるようにして足早に歩いた。
 昇りのエスカレーターの前では、後ろから来る乗客を確かめるようにして踏み段に足をかけた。
 長い昇りエスカレーターを上方に注意を向けたまま運ばれた。
 三津田の前には男の姿は見えなかった。
 やはり、男はこの駅では降りなかったのだ、と納得する思いで、ホッと安堵した。
 同じ車両に乗り合わせたのも或いは、偶然だったのかも知れない、と思えた。事実、車内で男の様子を窺っていた限り、男が三津田を気にする様子は一度も見せなかった。
 三津田は長い昇りエスカレーターを降りるとその時、始めて、後方に続く乗客の様子に視線を向けた。と同時に再び、息の詰まる思いに捉われた。
 エスカレーターの中程に、紛れもない男の姿があった。





          ---------------



          桂蓮様

          有難う御座います
           わたくしへのお気遣い有難う御座います
          確かに年齢と共に体力が落ち 何かと疲れ易く
          なりますが でも 一応 健康体を保っていますので
          なんとか行けそうです 有難う御座います
           心が枯れてゆく お若い頃と違って 取捨選択が
          出来るようになったという事ではないのでしょうか
          若い頃は何でも心が受容しますが 年齢と共に
          余計なものは省いてゆく 人間の知恵ではないので
          しょうか もう 頭の中には一杯 それなりの
          知恵が詰まっているのですよ
           時間の箱 再読させて戴きました
          世界は認識の中にしか存在しない その通りです
          人間という存在 それを認識する人間という存在が
          あってこそ 地球も 宇宙も存在する 認識する
          存在のない所は 無 認識されないものは存在しない
          その通りですね 楽しく拝見させて戴きました
           グランビーの初秋 改めて拝見してやはり この環境
          羨ましく 思います 但し 落ち葉の量 人間トラック  
          のお写真 やっぱり それなりの御苦労がと
          感じ入ります
           何時も 有難う御座います
           どうぞ わたくしのこの文章 どうかお気になさらず
          お気軽にお読み捨て戴ければと思います
          お忙しい中 あまりお気遣い戴いて 無駄な時間を
          お使い下さらないようにお願い致します
           有難う御座います



          takeziisan様

          毎回のコンタクト 有難う御座います
          感謝申し上げます
           今回もブログ 楽しく拝見させて戴きました
          詩 是非 一覧コーナーを設けて お纏め下さい
          バラバラでは勿体ないです
           思い出の旅アルバム カナダの紅葉もかなりのものの
          ようですかが 何か 鮮やかさでは日本の紅葉には
          及ばない気がします 世界一の紅葉は アメリカの
          何処かの州にあると聞いた事がありますが 見てみたい
          ものです れにしても カナダという国は落ち着いた  
          雰囲気が感じられ 好きな国の一つです 移住したい 
          国の一番にカナダが選ばれた という話を聞いた事が
          ありますが ちなみに日本が二位だした
           16000歩 よく歩きました 水泳 歩く事 お元気の   
          因かも知れませんね
           柚子 十年ほど前には 実家の跡に木があって よく
          採りに行きました 今では 太陽光パネルが設置されて
          いますが 柚子は輪切りにして 砂糖をかけて食べると
          美味しいですよ
           富士山噴火 何か最近 身近なものに思えて 
          なんとなく 恐れの気持ちを抱いています
           アチャコ 浪速千栄子 懐かしい名前ですね
          浪速千栄子は典型的な関西弁の使い手として
          有名でしたね きれいな関西弁でした それにしても
          昔ほどの芸達者は最近 居ないのではないでしょうか
          何か どたばた騒ぎだけの芸のような気がして
           もっとも テレビの娯楽番組は見ないので やたらな  
          事は言えませんが
           数々の昔懐かしい番組名 でも 現在では
          むかし昔 のお話しのようになってしまいました
          改めて生きて来た道の遠さ 遥かさを 思わずには
          いられません
           今回も美しい写真の数々 拝見させて戴きました
          これもお元気の因かも知れません
           有難う御座いました
 
  
          
              

 
 

2 コメント

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岬または不条理 (takezii)
2021-12-05 13:44:40
平穏な日常に、突然訪れる、黒い影、
電話で、あるいは SNSで・・・、誰にも起こり得る恐怖ですね。なんで、苦しまなくてはならないのか、不条理ですが、現実に、多く発生している社会問題のような気がします。そんな当事者を描いておられる小説。事件性の有無は、まだ不明ですが、ドキドキ感が伝わってきます。
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Unknown (桂蓮アップルバウム)
2021-12-06 14:42:35
今日は腰を痛めたので、簡単にしますね。
Takejiiさんのことばとおり、
ドキドキ感がありますね。

そんな迷惑なストッカーは
経験してみないと分からないと思います。
そういえば、昔電車の中で
よーく痴漢に会いましたね。
ある日、お尻の下になにか異物的な
熱い感覚があったので
びっくりして
後ろを向いたら
男が顔を真赤にして
手をひいていたのです。
そのときには、騒いだら人に迷惑になるとか、
人が集まってややこしくなるとか、
学校に遅れるとかなど
一瞬にして万事が思い浮かぶのです。
私は学校に行かなければならなかったので、
あなたが触ったのですか?と
静かな声で聞きました。
彼、すみません、あなたを見てたら
我慢できなくなりましたと
本当に悔しかったのですが、
それより学校にいかないとだったので
そのまま彼を帰しました。
その時はピンクのミニスカートを着ていたので、
そのことでその服捨てて
二度とミニスカートはいったことなかったです。
他の痴漢行為は、触って逃げられてしまったケースが多かったので、
実際痴漢と話したことは電車でのあのことが初めてでしたね。
だから、わかるのです。
その胸の騒ぎやらが、

でも階段であの男を発見したのですね。
あれはすごく怖い、ですね。


ここは本当に寒くなりました。
池が凍って、車に霧が凍ってへばりついて、削るのに夫が苦労してましたね。

レッスン中に頑張り過ぎて
腰痛めちゃいました。
明日様子をみてよくならなければ
物理治療受けないとです。
こんな問題はややこしいですね。


ところで、文頭の詩、
結構リズム感があって
心に響きますねえ。
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