三億円の宝くじが二枚当たった。合計六億円。奇跡、奇跡、奇跡、奇跡、奇跡以上のことが起こったのだ。考えられない。信じられない。あり得ない。冗談だ。ウソだ。このどんな言葉も通用しない。何でもいい。どうでもいい。あらゆる否定の言葉を並べたてても事実には敵わない。真実は小説より奇なり。どう足掻いても真実なのだ。真実だから曲げようがない。ユリゲラーでも無理だ。
この歳になって起こったこの奇跡に、有頂天になる前に夢じゃないのかと、頬をつねった。その感覚は判らなかったが、真実だから、事実当ったのだから、感覚を確かめるまでもなかった。心臓がバクバクし思わず後ろを振り向いたほどだ。誰もいなかった。だが、この事実を知られることは、時に犯罪を誘発させることにもなる。それだけは回避しなくては!!!!!!
使い道をいろいろ考える。
この歳だ。今更貯金などを始めても仕方ない。みずほ銀行の窓口に行けば、店長がおそらく出てきて、預金してくれとくるだろう。さらに、公社債なども勧めてくる可能性大である。その時はどうする。ま、取り立ててすぐに大金を使う予定もない。定期預金に一億。一億は公社債に。一億は普通預金に。三億降ろし他の銀行に移し替える。まずはこうしておく。美田は子孫に残すなと昔から言われている。あとは自分がどういう風に使うか、じっくりと考えるとしよう。
当選券二枚を懐に忍ばせ家から銀行に向かう。その道すがら、誰かに声を掛けられた気がした。
ふと横を向いた。
その動きと、硬い枕から頭がずり落ちるのと、全く同じ動きだったのには驚いた。
ま、強いて言えば枕からずり落ちた感覚の方が大きかったかな。
嫌な予感がした。……まさか、………! ……まさか、だよね。
これ、……まさか、……夢、……だったの?……その疑いを抱いた瞬間だった。
あっ、あっ、あ~~消えていく。当選券が……。うっ、消えないで!
消えいりそうになる現実を取り戻すため、必死にもう一度目を瞑った。
が、……………微かに残った券の半分も…………………………無情に消えていった。
たしか、今年の初めあたりにも似たような出来事があった。
この話は本当の話なのです。夢であった数日前の本当の話なのです。
改めて考えてみると、僕にはもうこんなにお金はいらない。あと五十年の寿命。すでにある五十億円。これで十分だ!!^^