田中雄二の「映画の王様」

映画のことなら何でも書く

「驚きももの木20世紀」「遥かなるメジャーリーグ 江夏豊・ジャッキー・ロビンソン」

2023-04-17 11:44:20 | 名画と野球のコラボ

「驚きももの木20世紀」「遥かなるメジャーリーグ 江夏豊・ジャッキー・ロビンソン」(1995.10.13.)

 ロサンゼルス・ドジャースの野茂英雄の活躍にあやかって、こうしてメジャーリーグ関連の番組が作られるのはうれしいのだが、逆にそこからメジャーリーグの暗部が見えてくるところもある。

 例えば、タイ・カッブ、ベーブ・ルースらは、不世出のプレーヤーだが、1人の人間としては決して褒められたものではなかった。

 黒人初のメジャーリーガー、ブルックリン・ドジャースのジャッキー・ロビンソンの存在、忍耐、勇気、影響などはどれも素晴らしいのだが、彼の登場は約50年前、つまりメジャーリーグのおよそ130年の歴史の半分以上は、白人だけで行われていたことが分かる。

 ロベルト・クレメンテ。今でこそラテン、ヒスパニック系の選手たちは珍しくもないが、彼らのパイオニアは肌の色に加えて、言葉の壁とも戦わなければならなかったという事実がある。

 ただ、この場合、ロビンソンやクレメンテらがこじ開けた扉が、今のグローバルなメジャーリーグに発展したことを素直に喜ぶべきなのかもしれない。その軌跡の上に今の野茂の活躍もあるわけだから。

 そして、最初はロビンソンを差別していたドジャースの白人選手たちが、プレーを通じてロビンソンを認め、理解を深めていったところにスポーツの素晴らしさを見ることができる。

 その意味では、今年ルー・ゲーリッグの連続試合出場記録を破ったボルチモア・オリオールズのカル・リプケンが野茂に贈った「日本人である野茂がメジャーリーグで活躍していることにちっとも違和感なんかない。才能を持った選手ならば、どこの国の誰だろうが、結局はここ、メジャーリーグに来ることになるんだよ」という一言が心に響く。


 

【今の一言】この後、イチローや松井秀喜が続き、その延長線上に今の大谷翔平の活躍がある。日本では42という数字は“死人”につながるとして嫌われるが、日本に来た外国人選手は喜んで背番号42を付ける。それは42はロビンソンが付けていた背番号であり、メジャーリーグでは今は全球団で欠番となっているからだ。毎年4月15日には、ロビンソンの功績をたたえ、全30球団の全選手が背番号42を付けてプレーをする。日本では、中日ドラゴンズのドラフト1位ブライト健太(父がガーナ出身)が今年から背番号42を付けている。
 

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『メジャーリーグ2』タカ・タナカ

2023-04-14 22:45:18 | 名画と野球のコラボ

 『メジャーリーグ2』で日本人メジャーリーガー、タカ・タナカを演じた石橋貴明がアーロン・ジャッジらヤンキースの選手たちに歓迎されたらしい。映画の力は大きいということか。思えばタナカは、イチローや松井秀喜や大谷翔平よりも早く、日本人野手として“メジャー入り"していた選手なのだ。

『メジャーリーグ2』(94)(1994.6.27.日本劇場)

 前作とこの映画のモデルになった、実際のクリーブランド・インディアンスは映画の効用もむなしく相変わらず弱い。だからこそ作られた続編なのだろうが、残念ながら前作ほどの面白さはなかった。

 これは、前作との5年というブランクの間に、見る側の印象がいささかぼやけていたにも関わらず、話の方はブランクなく続いていたので、予習でもしない限り、見ながら各キャラクターのおさらいをしなければならなかったことも大きく影響している。

 しかも続編にしては、キャラクターに膨らみが見られない。従って、ハリウッド進出を果たした石橋貴明のタカ・タナカと新人キャッチャーのエピソードぐらいしか面白味がないのである。だから、前作で見られたような、弱小チームが強くなって勝ち進む高揚感も浮かんではこなかった。

 ただ、監督のデビッド・S・ワードのインディアンスに対する思い入れの強さは伝わってくるものがあり、前作の地区優勝、この映画でのリーグ優勝とくれば、次はワールドシリーズなのだから、恐らく3も製作されることだろう。もう一度、ふんどしを締め直しての健闘に期待しようと思う。

【今の一言】実際のインディアンスは、この映画が公開された翌年の95年にはワールドシリーズに進出。その後も地区優勝の常連となった。これは映画の効用もあったということか。また、22年からはガーディアンズと名称を変えた。


「映画で見る野球」
https://blog.goo.ne.jp/tanar61/e/80952a2821739214c4c86f2aec76f65d

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2023年プロ野球開幕戦 ヤクルトVS広島

2023-04-01 12:32:41 | 名画と野球のコラボ

2023年プロ野球開幕戦 ヤクルトVS広島(2023.3.31.神宮球場)

 WBCの余勢をかって神宮球場へ。コロナ禍もあり、同球場では約3年ぶりの観戦となった。ヤクルトは初回、村上が広島先発の大瀬良からツーランホームランを放ち、6回にはオスナのバックスクリーン直撃のソロホームランで追加点を挙げた。広島打線は小川の好投もあり沈黙。結果、4対0でヤクルトの勝利。村上、山田、中村のWBC組が活躍を見せた。広島は前途多難の予感。

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世界中の“野球小僧”が集まったWBC

2023-03-22 22:25:01 | 名画と野球のコラボ

 最後の大谷翔平とマイク・トラウトの対決はまるで漫画か映画のようだった。

 WBCの熱い闘いを見ながら、ある歌のことを思い出した。それは、『歌う野球小僧』(51)の主題歌としてヒットした「野球小僧」(作詞:佐伯孝夫・作曲:佐々木俊一・歌:灰田勝彦)というオールドソング。歌詞のモデルは戦死した不滅の大投手・沢村栄治だという説もあるが、2番の歌詞は大谷そのものだ。
 
 今回のWBCは、大谷をはじめ、世界中の“野球小僧”が集まったような感じがして、見ていて本当に楽しかった。

♪野球小僧に 逢ったかい 男らしくて 純情で 燃える憧れ グランドで  じっと見てたよ 背番号 僕のようだね 君のよう オオ マイ・ボーイ  朗らかな 朗らかな 野球小僧♪

♪野球小僧は 腕自慢 凄いピッチャーで バッターで 街の空地じゃ 売れた顔  運がよければ ルーキーに 僕のようだね 君のよう オオ マイ・ボーイ  朗らかな 朗らかな 野球小僧♪

♪野球小僧が 何故くさる 泣くな野球の 神様も たまにゃ三振 エラーもする  ゲーム捨てるな 頑張ろう 僕のようだね 君のよう オオ マイ・ボーイ  朗らかな 朗らかな 野球小僧♪

 灰田はハワイ出身の日系2世で大の野球好き。立教大学の後輩である長嶋茂雄とも交流があった。思えば、長嶋さんも典型的な野球小僧だった気がする。
https://www.youtube.com/watch?v=LSzc-cBfD1U

伊武雅刀も歌っている
https://www.youtube.com/watch?v=cStP2CmiaUc

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関西人より関西人らしいと言われたバルボン

2023-03-19 07:09:40 | 名画と野球のコラボ

 キューバ出身で阪急ブレーブスに所属し、3度の盗塁王に輝き、引退後は通訳としても活躍したロベルト(チコ)・バルボン。

 さすがに現役時代は知らないが、ボビー・マルカーノやブーマー・ウェルズについての“適当な通訳”で大いに楽しませてもらった。その流暢な関西弁から「関西人より関西人らしい」とも言われた。

 キューバ革命のあおりを食って、祖国に帰れなくなり、結果的に日本に住み続けて天寿を全うするという数奇な人生を送った。WBCたけなわの今、中南米出身選手の先駆者となった人が逝ったことに何やら運命的なものを感じる。それにしても、こういう人が野球殿堂に入っていないのは本当におかしい。

 『続・拝啓天皇陛下様』(64)『クレージーの怪盗ジバコ』(67)といった映画や、CMにも出演した。


フィクションの中のダリル・スペンサー
https://blog.goo.ne.jp/tanar61/e/e5b221f484d2d85322bc6b3aa8c49dce

『勇者たちの伝言 いつの日か来た道』(増山実)
https://blog.goo.ne.jp/tanar61/e/7f559b527a7de0bfa83257ea7617daa9

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WBCチェコチーム→アレクサンダー・カートライト→映画でたどる世界遺産

2023-03-14 08:46:18 | 名画と野球のコラボ

 ワールド・ベースボール・クラシック(WBC)の日本対チェコ戦は見ていて実に面白かった。何しろ、160キロ越えの佐々木朗希と120キロそこそこのオンドジェイ・サトリアが投げ合い、どちらも好投を見せたからだ。もちろん、球速は速いに越したことはないが、たとえ速くなくてもバッターを抑えることはできるということ。それこそが野球の面白さ、奥深さにほかならない。

 そのチェコ代表は、選手のほとんどが生活のために仕事を持ちながら野球をしているという。大谷翔平とは違う意味での“二刀流”だ。彼らの職業は、金融関係トレーダー、体育教師、セールスマン、消防士、学生などさまざまで、監督は神経科医だという。

 さて、19世紀に現代の野球のルールを確立したとされるアレクサンダー・カートライトは消防団員で、団員のレクリエーションとしてタウンボール(野球の基)を導入し、1842年にタウンボールを楽しむ社交クラブとして「ニッカーボッカー・ベースボール・クラブ」を設立した。だから“野球の父”と呼ばれている。
 
 つまり、チェコチームは、プロができる前の野球の原点、野球本来の姿を体現しているといってもいいのだ。だから、彼らの姿はわれわれ野球ファンの琴線に触れるのかもしれない。


 実際にチェコに行ったことはないが、こんな記事を書いたことはある。
『シネマアベニュー 文化の泉』vol.5映画でたどる世界遺産


『アマデウス』
https://blog.goo.ne.jp/tanar61/e/e436083c28ccf2851c502c9319b91dfc

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「王に756号を打たれた投手」鈴木康二朗

2023-02-14 08:42:44 | 名画と野球のコラボ

 通算本塁打3位の門田博光(南海、オリックス)、名捕手の岡村浩二(阪急、東映)、そして鈴木康二朗と、このところかつての名選手たちの訃報が続く。

 

 1977年9月3日、後楽園球場で巨人の王貞治が通算本塁打の世界記録となる756号を放ったが、相手投手はヤクルトの鈴木だった。

 あの日、高校の悪友たちと「今日あたり打ちそうな気がする」と思い立って、学校帰りに球場に行き、当日券でレフトスタンドに入ったのだった。

 第1打席はフルカウントからフォアボール。第2打席もフルカウントとなると、球場内には野次とブーイングが広がり、異様な雰囲気に包まれたが、鈴木が投球動作に入ると今度は一転して静かになった。

 そして運命の6球目を王がフルスイングし、打球は一直線にライトスタンドに飛び込んだ。その瞬間、雰囲気は一変し、歓声と叫び声と拍手が湧き上がった。この球場内の劇的な変化は今でもはっきりと覚えている。

 鈴木は、この年は14勝し、翌年は13勝を挙げて、ヤクルトの日本一に貢献。近鉄に移籍後は抑えとして活躍した。長身で眼鏡を掛け、少し体を折り曲げるようにしてスリークオーターから投げるフォームが印象的な投手だった。今考えると、彼はプレッシャーのかかる中、よく勝負したと思う。

 「王に756号を打たれた投手」と呼ばれたが、後年、鈴木は「自分が潰れたら、王さんが一人の投手を殺したことになる。打たれたことで頑張れた」と語っていたという。「王に756号を打たれた投手」は立派な称号だ。

 後日、球場に入場券を持っていくと、王さんのサイン色紙(印刷だったが…)をくれた。赤丸は引き換えの証。

https://www.youtube.com/watch?v=H2TJywe9eoI

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マサカリ投法、サンデー兆治逝く

2022-11-11 12:15:38 | 名画と野球のコラボ

 とても寂しい、かつての大エースの死。それにしても、晩節の過ごし方は難しい。

当時のメモから。

ロッテ・オリオンズ(6)対近鉄バファローズ(7)(1989.4.16.川崎球場.生観戦)

 今日は、村田兆治200勝達成という“特別な日”になるはずだった。何と日頃は閑古鳥が鳴く川崎球場を彼一人の存在で超満員にしてしまったのだ。

 ところが、野球の神様は時に残酷な仕打ちをする。結果、村田の延長11回、180球を超える熱投が報われることはなかった。思えば、対戦相手のバファローズは、去年の10月19日に、同じ川崎球場で、これ以上の仕打ちを受けている。

 それにしても、今日の村田の投球内容は、まるで彼の一本気で不器用な野球人生を象徴するかのようで、何だか胸が詰まる思いがした。

 どうして、大事な場面でライオンズの東尾のように、かわすピッチングが出来ないのだろうか、などと歯がゆく思うのだが、それがまた、あえて逃げることをしない、いや出来ない村田という男の生きざまとして、跳ね返ってくるところがあり、敗れたとはいえ、いいものを見せてもらったという思いがした。

 これにめげず、次回の登板での大願成就を願わずにはいられない。


ロッテ・オリオンズ(7)対日本ハム・ファイターズ(5)(1989.5.13.山形県野球場)

 まるで、彼の山あり谷ありの野球人生を象徴するかのような、ドラマチックな試合展開の結果、ついに村田兆治が200勝を達成した。

 22年間の通算成績が、彼のいかにも不器用で頑固な生きざまを浮かび上がらせる。若き日、球は早いがコントロールが悪いという模索の日々、伝家の宝刀フォークボールをマスターした後の全盛期、肘を痛めた苦闘の日々、手術後の奇跡のカムバック、そして現在…。

 もはや、自分が子どもの頃に仰ぎ見た現役選手は、村田を含めて数えるほどしか残っていない。そんな中で、いまだに輝き続ける彼の姿は、その奇跡のカムバックとも相まって、大げさに言えば、生きる勇気のようなものを与えてくれる。そして、サムライの残り香を感じさせる“最後の男”という感じもする。

 200勝は通過点と語る彼の姿が、うれしくもあり、頼もしくもある。今後のますますの活躍を期待したい。


 村田役に名高達郎、妻の淑子役に星野知子という配役の「サンデー兆治の妻」(86)というドラマがあったし、河島英五が村田の姿に影響を受けて作った「地団駄」という歌もあった。

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大谷翔平、規定打席&規定投球回をクリア

2022-10-06 22:01:21 | 名画と野球のコラボ

 2022年のシーズンを終えたロサンゼルス・エンゼルスの大谷翔平が、規定打席&規定投球回をクリアしたメジャーリーグ史上初の選手となった。

 投手としては、28試合に登板し、166回を投げ、15勝9敗 、防御率2.33、219奪三振。打者としては、157試合に出場し、666打数160安打、打率.273、34本塁打、95打点、11盗塁という、とんでもない記録を残し、去年の活躍がフロックではなかったことを証明した。

 ロジャー・マリスの年間本塁打記録(61本)を61年ぶりに破った、ヤンキースのアーロン・ジャッジの打率.311.62本塁打、131打点もすごいが、大谷とは次元が違う気がする。


大谷が同じ試合でルースに並び、イチローを超す
https://blog.goo.ne.jp/tanar61/e/e5c58ba067089226075aa7f443fe6fef

アーロン・ジャッジと「61*」
https://blog.goo.ne.jp/tanar61/e/28424e9e7b476374815274e6a5fafbe5

 

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アーロン・ジャッジと「61*」

2022-09-19 11:43:47 | 名画と野球のコラボ

 日本ではヤクルトの村上宗隆が、1964年の王貞治のシーズン55本塁打に並んだが、ニューヨーク・ヤンキースのアーロン・ジャッジも、61年に同じヤンキースのロジャー・マリスがマークしたシーズン61本のアメリカン・リーグ記録まであと2本に迫った。

 マリスの上にはバリー・ボンズ(73本)、マーク・マグワイア(70・65)、サミー・ソーサ(66・64・63)がいるが、彼らはいずれも薬物使用が明らかになったので、改めてマリスの記録が見直されている。

 だが、そのマリスも、ベーブ・ルースの60本を破った際は、さまざまな差別や中傷に見舞われ、正当に評価されなかった。その苦悩を描いたテレビムービーがあった。ビリー・クリスタルが監督した「61*」である。

https://blog.goo.ne.jp/tanar61/e/0e28a083471a69d72c9d81fb4c9faf03

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