『陽のあたる教室』(95)
音楽を媒介とした心の交流
1960年代から現代まで、音楽教師ホランズ(リチャード・ドレイファス)の半生を編年体で描きます。原題は「ホランズ氏の作品」。その作品とは生徒たちのことです。生活のために教師となり、音楽家になる夢を捨てた自分は人生の敗者だと思っていた男が、教師として多くの生徒に影響を与えた人生の勝者だったというのが大きなテーマです。監督のスティーブン・ヘレクは、よく似たテーマを描いたフランク・キャプラの『素晴らしき哉、人生!』(46)を参考にしたと語っています。
主人公が音楽教師ということで、もちろん授業ではバッハ、ベートーベンといったクラシックが流れます。また、ホランズは、クラリネットが苦手な女生徒のためにアッカー・ビルクの「白い渚のブルース」を教え、耳の不自由な息子のために手話を交えながらジョン・レノンの「ビューティフル・ボーイ」を歌ったりもします。
ほかにもジョージ・ガーシュインの「アイ・ガット・リズム」やジャクソン・ブラウンの「プリテンダー」などが登場します。そして最後は、定年を迎えたホランズを送るために、生徒たちが一同に会して彼が作曲した交響曲を演奏するのです。音楽を媒介とした教師と生徒の心の交流が心地良く展開していきます。ヒット曲を使って時代の変化を表すという手法は、同時代の『フォレスト・ガンプ/一期一会』(94)とも共通するものです。