相撲は際物でも、単なるスポーツでもない
この映画の主人公は教立大学4年生の山本秋平(本木雅弘)。彼は、穴山教授(柄本明)に呼び出され、卒業に必要な単位と引き換えに相撲部に入ることを提案されます。ところが部は廃部寸前で、部員は相撲通なのにまだ一度も勝ったことがない8年生の青木(竹中直人)たった一人でした…。
この映画は、フランスの詩人ジャン・コクトーが相撲について書いた「力士たちは、桃色の若い巨人で、シクスティン礼拝堂の天井画から抜け出して来た類稀な人種のように思える~」という文章を、相撲部のOBで顧問の穴山が暗唱するシーンから始まります。オープニングで、相撲は際物でも、単なるスポーツでもないということをきちんと明示しているのです。
そして、端々に穴山と青木の“相撲ガイド”を交えながら、全く相撲に興味がなかった秋平が、相撲に対して本気になっていく姿を描いていきます。演じる俳優たちの取り組みが段々と様になっていき、まわし姿がかっこ良く見えてきます。
監督の周防正行は、『ファンシイダンス』(89)の修行僧、『Shall we ダンス?』(96)の社交ダンスなど、ハウツー物を得意としていますが、この映画では相撲の仕組みや魅力を分かりやすく説明しています。もちろんクライマックスは部の生き残りを懸けた大学対抗のリーグ戦ですが、結果は見てのお楽しみ。一種の“スポ根”物なのに見た後にはさわやかな印象が残ります。