『青春デンデケデケデケ』(92)
時代を超えた青春映画の名作
芦原すなおの直木賞受賞小説を大林宣彦監督が映画化しました。今回の舞台は、大林監督が得意とする地元・尾道ではなく、1960年代の香川県観音寺です。
ベンチャーズの「パイプライン」(サビの部分が”デンデケデケデケ”と聴こえる)に感化されてバンドを組んだ4人の高校生(林泰文、大森嘉之、浅野忠信、永堀剛敏)のロックに明け暮れる高校生活を描きます。
大林監督は、あえてくすんだ色調の画面にし、手持ちカメラでの撮影による揺れや移動を生かして、ドキュメンタリータッチで彼らの姿を追います。
彼らや周囲の人々の日常を極普通のものとして描いたからこそ、この映画は時代を超えた青春映画の名作足り得たのです。
クライマックスは町の皆が集う学園祭での演奏会。そして彼らにも、卒業、別れ、青春の終わりが訪れます。
見終わった後に、もう一度高校時代に戻りたい、けれども決して戻れない、と気づいてちょっと切なくなるような、すてきな映画です。
全編を彩る当時のヒット曲に加えて、久石譲の音楽も印象に残ります。特にメインテーマ曲の「青春のモニュメント」が絶品です。