家族ってやっかいだけど愛おしい
山田洋次監督が好んで描くテーマは、家族、故郷、労働、青春、そして不器用な恋愛です『男はつらいよ』シリーズにもそうしたテーマがちりばめられていました。
この映画の横糸は、東北で一人暮らしをする老父(三國連太郎)が、かつて出稼ぎで訪れた東京を再訪する話です。そして縦糸として、彼の次男のフリーターの若者(永瀬正敏)とろうあの女性(和久井映見)との恋が描かれ、やがてその二本の糸が交差していきます。
できのいい長男よりもできの悪い次男の方がかわいくて気が許せると思う父。そんな父は、好きな人がそこにいれば苦しい仕事もなんのその、相手に障害があってもそんなことは構わないという次男の生き方を見てなんだかうれしくなってしまうのです。
この映画の、親が上京して子供のもとを訪ねるというパターンは小津安二郎監督の『東京物語』(53)にならっています。その中で描かれる「家族って、やっかいだけど、愛おしい」という思いは、山田監督の近作『東京家族』(13)や『家族はつらいよ』(16)にも通じています。