山本周五郎の『赤ひげ診療譚』を連続ドラマ化した「赤ひげ」がNHK BSで放送中。船越英一郎の新出去定(赤ひげ)と中村蒼の保本登という配役を聞いて、見る前は、一体どうなることかと思ったが、実際に見てみると両者ともなかなか頑張っており、結局毎回見ている。何より、ほぼ連作短編集である原作通りにドラマ化しているところがいいのだ。
『赤ひげ診療譚』の映像化に関しては、黒澤明が、三船敏郎の去定、加山雄三の登で映画化した『赤ひげ』(65)が決定版だが、テレビドラマ「赤ひげ」としても、去定=小林桂樹、登=あおい輝彦(72)、去定=萬屋錦之介、登=田原俊彦(89)、去定=藤田まこと、登=高嶋政宏(97)、去定=江口洋介、登=伊藤英明(02)がある。
このうち、72年版では途中まで倉本聰が脚本を書いていたが、倉本は周五郎の短編『人情裏長屋』を連続ドラマ化した高橋英樹主演の「ぶらり新兵衛道場破り」(73)の脚本にも参加している。このドラマは、周五郎の他の短編も取り入れた趣向が冴えを見せる、なかなかの名作。その「人情裏長屋」は、最近も、高橋克典主演で「子連れ新兵衛」としてドラマ化された。
黒澤は『赤ひげ』の他にも、周五郎の原作から、短編『日日平安』を『椿三十郎』(62)として、連作短編集『季節のない街』を『どですかでん』(70)として映画化した。その他、黒澤が周五郎の原作を基に書いた遺稿シナリオを、小泉堯史が『雨あがる』(99)として、熊井啓が『海は見ていた』(02)として映画化している。黒澤は周五郎の小説が大好きで、しかもあまり強くない者を主人公にしたものがお気に入りだったという。
(続く)
黒澤の『赤ひげ』については↓
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