肝心のユダヤ人問題がぼやける
舞台は1939年、ポーランド、ワルシャワ。動物園を営むヤン(マイケル・マケルハットン)とアントニーナ(ジェシカ・チャスティン)夫妻が主人公。彼らは動物園を隠れ家として、ナチスによってゲットーに追い込まれたユダヤ人たちを救うことを思い立つ。
自らの命の危険をかえりみず、ナチスに立ち向かった夫婦の物語を実話を基に描く。原題は「動物園長(飼育係)の妻」。動物園を巡回するアントニーナの姿を追ったオープニングのシークエンスは素晴らしい。
ただ、チャスティンがプロデュースも兼ねているので、極限状態の中で喜怒哀楽を表現するという、女優冥利に尽きるような役を演じている。そこが少々鼻に付くし、アントニーナに焦点を当て過ぎて肝心のユダヤ人問題がぼやけてしまうところがある。
どちらかといえば、動物学者でナチスの将校でもあるという矛盾を抱え、アントニーナに懸想するヘック(ダニエル・ブリュール)の人物像の方が人間くさくて面白い。