田中雄二の「映画の王様」

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『花筐 HANAGATAMI』

2017-12-17 07:00:12 | 新作映画を見てみた

大林ワールド、ここに極まれり!



 檀一雄の『花筐』を基に、大林宣彦監督が映画化。太平洋戦争勃発前夜の唐津を舞台に、自身の戦争への思いを込めながら、若者たちの青春群像を描く。

 時にはあきれ、辟易させられ、気恥ずかしさすら覚えながらも、なぜか目が離せない2時間50分。それは、今まで彼の映画をずっと見続けてきたのだから…というこちらの感傷を超えて、齢70を過ぎ、がんを患いながら撮ったこの映画から、良くも悪くも、驚くばかりのパワーが感じられるからだ。こうなるともう怖いものはない。もはや“暴走”を止める者もいない。

 全体的には、かつて大林監督が佐藤春夫の原作を映画化した『野ゆき山ゆき海べゆき』(86)とイメージが重なるが、今回はその比ではない。主人公は自らの分身、ストーリーの無視、特撮を駆使したシュールで前衛的な映像、文学かぶれのセリフ、美少女・美少年趣味、過度なノスタルジー、甘い音楽…と、いった“大林ワールド”の技を駆使しながら、自らがイメージする世界の映像化を、ただひたすら追求した“私映画”といっても過言ではない。

 おまけに、端々に過去のさまざまな作品をほうふつとさせるシーンやショットもあり、ある意味、集大成の感もある。まさに、大林ワールド、ここに極まれり!という映画だ。

コメント
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