田中雄二の「映画の王様」

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『子供はわかってあげない』

2021-07-16 11:42:18 | 新作映画を見てみた

『子供はわかってあげない』(2021.7.15.オンライン試写)

彼らをずっと見ていたい気分になる

 田島列島の同名コミックを沖田修一監督が実写映画化。

 高校の水泳部に所属する朔田美波(上白石萌歌)は、母(斉藤由貴)と義父(古舘寛治)と弟と共に幸せに暮らしていた。だが美波は、幼い頃に行方不明になった実父の藁谷友充(豊川悦司)のことが気になり、アニオタ同士ということで意気投合した書道部の門司昭平=もじくん(細田佳央太)と共に、友充の行方を捜すことにする。

 そして、探偵をしているというもじくんの兄の明大(千葉雄大)が、新興宗教の元教祖だった友充を見付ける。美波は今の家族には内緒で、友充に会いに行くが…。

 家族、アニオタ、水泳、書道、初恋など、さまざまな要素を入れ込みながら、少女のひと夏の経験を描く。沖田監督の映画は、総じて独特の間や緩いテンポの中、シュールで、不思議なユーモアが漂い、現実とファンタジーの境目を描きながら、ほのぼのと明るい。そうした“沖田ワールド”は今回も健在だった。

 何よりキャストが皆いい。上白石と細田が体現する初恋と青春、豊川と古舘の“2人のいい父”、見た目は女性で涙もろい千葉(『モヒカン故郷に帰る』(16)に続く怪演)…。“沖田ワールド”の中、脇の脇まで、皆が生き生きと描かれていて、こちらも彼らをずっと見ていたい気分になる。

 特に上白石=美波の、最初は怪しげな父に戸惑いながらも、自然に打ち解けていく姿や、もじくんに不器用な告白をする姿が愛らしく映る。そして学校の屋上でのラストシーンがまた素晴らしい。

 印象に残るこんなセリフもあった。

 「人は教わったことなら人に教えられる」(もじくん→美波)「誰かに教わったことを、また誰かに教えて、そうやって世の中はできているんだな」(友充)、「何だか自分がいいものに見えてくる」(もじくん)「何これ、発狂しそう!」(美波) 

【付記】高橋源一郎が店主役をしていた古書店。見覚えがあると思ってエンドクレジットに注目していたら、案の定、葛飾フィルムコミッション、堀切クローバー商店会とともに、「古書青木書店」と出た。最近ご無沙汰しているが、ここは昔ながらのいい古書店なのだ。

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