田中雄二の「映画の王様」

映画のことなら何でも書く

追悼リチャード・ドナー『ラジオ・フライヤー』

2021-07-09 16:01:41 | 映画いろいろ

『ラジオ・フライヤー』(92)(1992.10.9.みゆき座)

 1969年、マイク(イライジャ・ウッド)と弟のボビー(ジョセフ・マゼロ)は、母メアリー(ロレイン・ブラッコ)の再婚相手のキング(アダム・ボールドウィン)と共に、カリフォルニアの田舎町で暮らすことになる。

 だが、キングは粗暴な男で、ボビーは彼からひどい折檻を受ける。兄弟はラジオ・フライヤーという小さなワゴンを引いて心を紛らわせ、“お願い山”という岩山に願をかける。

 細々と公開され、しかもわずか1週間で打ち切られてしまった不幸な映画。危うく見逃してしまうところだったが、自分はこの映画が好きだ。

 リチャード・ドナーという人は、『オーメン』(76)『スーパーマン』(78)『グーニーズ』(85)といった派手なヒット作の監督と思われがちだが、実はその本領は、この映画のような渋い題材に、現実の厳しさを盛り込む骨太さにこそ発揮されるのかもしれない。

 例えば、『サンフランシスコ物語』(82)ではベトナム戦争の傷や身障者の姿や悩みを描き、『3人のゴースト』(88)では視聴率に毒されたテレビ業界の醜さを描いていた。

 『リーサルウェポン』シリーズにしても、最初はベトナム戦争の影を引きずり、派手なアクションよりも白人と黒人の刑事による友情物語としての魅力の方が大きかったのだ。

 この映画も、表向きはノスタルジックでファンタスティックな子ども心の世界を描きながら、その奥に児童虐待やいじめの怖さを描くあたりが、ドナーのバランス感覚の良さを表している。

 そしてそれは、『未知との遭遇』(77)『E.T.』(82)を作っていた頃のスピルバーグとも通じるところがある。だから、本家のスピルバーグが、先の『フック』(91)の変化球勝負で失敗したのに比べると、ドナーの緩急の使い分けのうまさが目立つ。ただ、そこには、常に大ヒットを求められる超エースと、多少は余裕が持てる中エースという立場の違いもあるのだろうが…。

 そうした思いを持ちながらこの映画を見ると、達者な2人の子役ブラス犬のけなげさ、かつての伝説の少年の登場のさせ方、特別出演とナレーションを担当したトム・ハンクスの存在感、老優ベン・ジョンソンの扱いなどで、こちらの涙腺を刺激しながら、『スーパーマン』以来の、自らの空や飛ぶことへの憧れも描いていることが分かる。音楽的にも、対位法を使ってあの軽快な「ジャンバラヤ」を不気味に響かせるなど、ドナーの職人技がひときわ目立つ佳作だと思うのだ。

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追悼リチャード・ドナー『3人のゴースト』

2021-07-09 08:45:17 | 映画いろいろ

『3人のゴースト』(88)(1989.12.27.)

 今さらとも思えるチャールズ・ディケンズの『クリスマス・キャロル』の焼き直しだが、主人公のスクルージを、あくの強いビル・マーレーが演じ、しかも彼がなかなか改心しないものだから、単なる教訓映画では終わらない。その点では、リチャード・ドナー監督がしたたかさを示したとも言えるだろう。

 そして、誰もが年に一度ぐらいは奇跡を信じて楽しく過ごしたいと思っているし、この映画の主人公同様、寂しさや孤独も感じているのだから、こうした古くさい話の焼き直しでも十分琴線に触れるのだ。

 さて、この映画のラストシーンではないが、クリスマスを特別な1日だとは思わずに、毎日がクリスマスだと思って過ごせば、世の中、どんなに楽しく平和に暮らせることだろう。

 そんなことは分かっているはずなのに、日々の暮らしに追われ、そんな気分には年に一度だけしかなれない。考えてみれば愚かなことだ。そして、人間がそんなことを繰り返している限り、『クリスマス・キャロル』は形を変えながらも、決して輝きを失わないだろう。

 こうしたテレビ界の裏側の嫌らしさや醜さを見せられるたびに、その末端とはいえ、それに関わる仕事をしている自分が嫌になる。自分にも奇跡が起きないものかと思ってしまう。

【今の一言】あの頃は、テレビの視聴率に関する仕事をしていたので、こんな書き方になったのだろう。

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「午後のロードショー」『LOOPER/ルーパー』

2021-07-09 07:34:37 | ブラウン管の映画館

『LOOPER/ルーパー』(12)(2012.11.14.シネマート六本木)

 タイムマシンで送られてきた人物を消すことを生業とするすご腕の殺し屋ルーパーことジョー(ジョセフ・ゴードン・レビット)が、殺しのターゲットとして転送された未来の自分(ブルース・ウィリス)とのスリリングな追跡を繰り広げるSFアクション。監督はライアン・ジョンソン。

 輪廻→ループ(連鎖)、タイムトラベルを使って、現代の自分が未来の自分を殺せるのかをテーマに描く。また『オーメン』(76)のダミアンや『ゴーストライダー』(07)のような“悪魔の子”をどうするのか、という葛藤も描かれる。

 西部劇を思わせる風景、レトロな未来という背景、主演の2人のほか、『ルビー・スパークス』(12)での作家役に続いてのポール・ダノ、悪役ジェフ・ダニエルズもなかなか面白い。

今年の洋画界はベテラン・スターたちの“アクション”に注目!
https://tvfan.kyodo.co.jp/feature-interview/column/27628

【インタビュー】『スター・ウォーズ/最後のジェダイ』ライアン・ジョンソン監督
https://blog.goo.ne.jp/tanar61/e/8554d6ab41e8bd6e04c9fa7f4f166412

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「BSシネマ」『太陽の中の対決』

2021-07-09 07:16:14 | ブラウン管の映画館

『太陽の中の対決』(67)

西部劇としては異色作
https://blog.goo.ne.jp/tanar61/e/bedd8f49d617366325af10ad6bf49b6b

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