田中雄二の「映画の王様」

映画のことなら何でも書く

ビデオ通話で西部劇談議『ワイルドバンチ』

2021-07-10 18:29:30 | 駅馬車の会 西部劇Zoomミーティング

 今回のお題は、サム・ペキンパー監督の『ワイルドバンチ』(69)。熱狂的なファンが多い映画だが、正直なところ、自分としてはあまり熱くは語れない。嫌いではないが、もろ手を挙げて好きというわけでもないからだ
 
 初めて見たのは、1974年「日曜洋画劇場」の前後編。その時は、マカロニウエスタンみたいだと思ったことを覚えている。その後、何度も見ているのだが、なぜかいつも途中で眠くなってしまう。多分、この映画のテンポが自分には合わないのだろう。

 ペキンパーという監督は、いろいろと問題があって、自分の思い通りに撮れた(完成した)映画はほとんどない。そのためか、彼の映画からは未完成で雑な印象を受ける。ただ、その分、見る側には、突っ込みどころや勝手な解釈や想像を与える余地が生まれる。それが彼を神格化したり、彼の映画に熱狂するファンを生む理由の一つなのではないかと思う。

 この映画で最も魅力的に映るキャラクターは、ロバート・ライアンが演じたソーントンだ。

『ワイルドバンチ』
https://blog.goo.ne.jp/tanar61/e/bc7ea8ef41f9f58ec736f20b1808a0f4

『サム・ペキンパー 情熱と美学』
https://blog.goo.ne.jp/tanar61/e/96a0cab264ba3d53e14786426865d915

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『ファイナル・プラン』

2021-07-10 08:01:58 | 新作映画を見てみた

くどい説明や深い人物描写は不要

 すご腕の爆破強盗カーター(リーアム・ニーソン)は、アニー(ケイト・ウォルシュ)と恋に落ちたことをきっかけに、強盗稼業から足を洗うことを決意する。

 過去を償い、アニーとの新たな一歩を踏み出すために、FBIに自首する覚悟で罪を告白するカーター。だが、現れた2人の捜査官(ジェイ・コートニー、アンソニー・ラモス)は、金を横領するためにカーターを罠にはめ、アニーにも危害を加える。怒りを爆発させたカーターは復讐に乗り出す。

 初老を迎えてから、何故かアクション映画に目覚めたニーソンには、ジャウマ・コレット・セラ監督と組んだ、『アンノウン』(11)『フライト・ゲーム』(14)『ラン・オールナイト』(15)『トレイン・ミッション』(18)、そして元CIA工作員のブライアンを演じた『96時間』(08)『96時間/リベンジ』(12)『96時間/レクイエム』(14)、という二つの大きな流れがあるが、この映画は、前者の系譜につながるだろう。監督・脚本はイギリス出身のマーク・ウィリアムズ。

 主人公カーターの改心の動機や敵役の捜査官の間抜けぶりには思わず笑ってしまうところもあるのだが、この映画の場合は、くどい説明や深い人物描写は不要。98分という短時間の中で、テンポのいい展開を見せてくれるところに真骨頂がある。何にしてもニーソンのお達者ぶりには驚かされる。

 善玉捜査官役演じたロバート・パトリック(『ターミネーター2』(91)のT-1000役)とジェフリー・ドノバンが、なかなかいい味を出していた。

『フライト・ゲーム』
https://blog.goo.ne.jp/tanar61/e/557f1afd12f18e2c892dbc3c4dbd416a

『ラン・オールナイト』
https://blog.goo.ne.jp/tanar61/e/afa58b4a9cb9bec84ae51be97933a9f2

『トレイン・ミッション』
https://blog.goo.ne.jp/tanar61/e/59dc2cd81a7576341554166a64a460e3

『96時間/レクイエム』
https://blog.goo.ne.jp/tanar61/e/3b1c7fd1765ef316e3a2baed771e0082

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『キネマの神様』

2021-07-10 07:30:56 | 新作映画を見てみた

小説と映画は別物なのだ

 かって「松竹大船撮影所50周年記念」で『キネマの天地』(86)を撮った山田洋次が、それから35年後の今、「松竹映画100周年記念作品」として原田マハ原作の『キネマの神様』を映画化した。

 原作の設定は、大手企業を辞めた39歳独身の歩が、映画雑誌「映友」の編集部に採用され、ひょんなことから、映画狂の父ゴウのブログをスタートさせると、それが評判となって…というもの。

 ところが、映画の方は、ゴウを松竹撮影所の元助監督とし、過去と現在を交錯させながら描くという、全く別の話になっている。つまり、意地悪な言い方をすれば、山田洋次が原作を利用して、自分の思い出用に改変したと思えなくもないのだ。

 そんな疑問を感じて、映画の脚本を原田自らが小説化した『キネマの神様ディレクターズ・カット』も読んでみたが、もやもやした思いは消えなかった。

 ところが、実際に完成した映画を見ると、これが見事に山田洋次の世界に昇華されていた。小説と映画は別物だということを、改めて知らされた気がした。特に俳優たちの生かし方が素晴らしかった。まず、菅田正輝、野田洋次郎、永野芽郁といった若手に生き生きと“昔”を演じさせている。

 また、北川景子を原節子的なイメージでめいっぱい美しく撮っている。さすがは「男はつらいよ」シリーズでマドンナとして名だたる女優たちを撮ってきた監督だと、思わずにはいられなかった。

 そして、志村けんの後を継いだジュリーが、多少のぎこちなさを感じさせながらも、精いっぱい頑張ってゴウを演じ(「東村山音頭」を歌うシーンは泣けた)、大林宣彦の遺作『海辺の映画館 キネマの玉手箱』(19)でも映写技師を演じ、『鉄道員(ぽっぽや)』(99)同様に、主人公を支える相棒役の小林稔侍も、久しぶりに好演を見せる(こういう役の時の稔侍はいい!)。宮本信子、寺島しのぶの母子役もなかなかよかった。

 そこに、清水宏、小津安二郎、黒澤明、チャールズ・チャップリン、フランク・キャプラ、ベティ・デイビス、グレタ・ガルボ、『素晴らしき哉、人生!』(46)『東京物語』(53)『キートンの探偵学入門』(24)…といった、過去の映画人や作品へのオマージュがはさまれてくる。

 こうなると、映画好きにはたまらないのだが、そうしたことを知らない若い世代がこの映画を見た時、どんなことを感じるのだろうかという疑問は残るが、そもそもそうした者たちは、初めからこの映画には興味を示さないかもしれないなあ。

『キネマの神様 ディレクターズ・カット』
https://blog.goo.ne.jp/tanar61/e/600fdcea2dba43c6ddf198a108a5b768

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