冥王星が太陽の惑星から消えた日、年上の友人が死んだ。プルーテルと言って大変優しい男だった。食道にガンが発見されて術後3年目の夏だった。昔の仕事仲間でもあった。社会的には、立派な肩書きを持った男でもあった。そして何より心の交流があった男だった。タウンに住んでいてハーバーヒルへいつも遊びに来ては、冗談を言っては人を笑わしているような男だった。処世術は、誰よりも身に付けている男だった。つまり、大きな組織の中での泳ぎ方と生き残る術を知っている男だった。しかし、本当の男の生き方に憧れを持っていたとしても実行する勇気をもてないで逡巡していた男だった。そんな男が、肩書きもキャリアも通用しない世界へ飛び込んできた。偶然だったけど、とにかくやって来た。初めてクライアントの前に連れて行き頭を下げない営業スタイルというのを見せた。それがひどくプルーテルには奇妙に見えたらしい。それから毎日プルーテルは、やって来て、二人で開拓という営業をやった。成功もしたし、失敗もした。そして徐々に、体中がぶよぶよした日常から、脱却していくように心の核に硬いものを持った。当たりは柔らかいままだったが、ペコペコするのは、やめた。彼もまた、どこかでハードボイルドに近づいたのかもしれない。もう大丈夫だなと思った日、男を引きずりながら彼は帰っていった。その日から8年位会っていなかった。突然の訃報。夏の空を見上げながら、彼の笑顔を思い浮かべるフェンネル氏でありました。合掌
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