鬼山竜也の住宅業界 商売の王道

良い家づくりに真剣に取り組んでいる方々が、お客様のためにより良い仕事が出来るようになるためのヒントになれば、嬉しいです。

【第18回】 見えない部分を感じられるかどうか

2011年01月18日 | 住宅コンサルタントとして
先日、とある方から

「協力業者さんを集めて業者会をやりたいのですが、その講演をお願い出来ますか?」

と依頼をいただきました。

ただ、ご希望の日程は、私の方で予定が入っていたので無理ということをお伝えしました。

すると、

「どうしても(私に)お願いしたいんです。もし(私が)ダメなら、誰か良い人を紹介して下さい」

ということを一所懸命おっしゃったので、私の方で、

「私が心から信頼出来る師匠をご紹介させていただくことなら出来ますが・・・」

という代替案を出させていただきました。

先方は、

「是非、ご紹介下さい」

とおっしゃったので、私はすぐに信頼できる師匠に電話をしました。

もちろん講演の依頼ですから、「講演料は発生します」ということは先方にお伝えしました。
当然ながら、先方もそのことについてはご了承いただきました。

師匠に講演の依頼が可能かどうか、確認したところ、
先方が業者会を企画している日程は、実は師匠も日程が入っていたのです。
ただ、師匠は私の依頼ということもあり、気を遣って

「その日、私もクライアントに言って、日程を変えてもらえるかどうか、交渉してみます」

とおっしゃっていただいたのです。
おそらく、私を応援したい、と思って下さったのでしょう。

しばらくして師匠から

「(自分の)日程変更が出来ましたので、その依頼、対応できます」

というお返事を頂戴しました。
わざわざ、私の依頼に対してご自分のスケジュールを変更して下さったのです。

そして翌日、講演の依頼をいただいた方に、

「その依頼、お受けできます。大丈夫です」

というお話をさせていただいたところ、先方もホッとしていただきました。

そして料金の話になったのです。

すると、金額は先方がイメージしていた金額よりも高かったのでしょう。
先方の声が、急に変わったのです。

そして次のようにおっしゃいました。

「実は、協力業者会の講演自体は、1時間ちょっとなので、
そんな短い時間にご高名な先生に来ていただくのは、申し訳ないと思います。
ですので、今回の件はなかったことに・・・」

その言葉を聞いた瞬間、私は師匠の苦労が頭に浮かび、

「本当に申し訳ないことをしてしまった・・・」

と凹んでしまいました。

師匠くらいの売れっ子のコンサルタントは、基本的に3か月~半年先まで予定が詰まっています。
予定変更といっても、

「A社さんをB社さんの日程に変更して、B社さんの日程をC社さんの日程に・・・」

と、かなりのパワーでもって、いろんなクライアントに無理を言わなければならないのです。

場合によっては、航空券やホテルを先に予約しているので、それらをすべてキャンセルし、
さらに飛行機などの場合、キャンセル料金が発生したりするのです。

「今回、私が無理に師匠にお願いをしたばかりに・・・」

と、本当に師匠に申し訳なく思いました。

私も他のクライアントの日程変更の依頼で、
何社かのクライアントに無理を言って、日程変更をお願いすることがあります。

しかしその際、先に日程を決めさせていただいていたクライアントの都合を考え、
本当に申し訳ない、という気持ちを込めてお願いさせていただいているつもりです。

今回、私は講演を依頼された方が、真剣に依頼されている、と感じ、
何とか力になれればという思いで、師匠に無理を言ってしまったのです。

基本的に、他の人に真剣に依頼をした場合、
その人は自分が感じられない部分で一所懸命応えようと努力してくれているのです。

自分の時間を使って、無理をして下さっているのです。

だからこそ、依頼をした側にも、責任が発生するのです。

こうした、相手の時間を奪って、無理を言っている、ということを感じられる人か、
それとも自分の都合を優先し、相手の見えない苦労や立場を考えられないかで、
その人の度量が分かりますね。

皆さんは人に依頼をする際、その人の見えない部分での努力を感じることは出来ていますか?
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