
あの日から12年、干支でひと回り過ぎたが東日本大震災の復興は続いている。その多くは東電の福島原発事故に関わっている。原発さえなければ目に見える復旧は終わっていたのではと思う。被災された人の声は「この震災を胸に刻み伝えていかなければ」と涙交じりに語られる。一方で忘れられようとしているとの声もある。
そんな原因の一つにTVが寄与していないだろうか。復興し復旧し、その式典が開かれた、こんな映像を多く見せられると大震災を忘れさせることになる。双葉町は立派な役場が建ち、帰還可能地域となったが帰還者はまだ1%に満たないという。あの除染土を入れた黒い袋はどこへいったのだろうか。
原発炉内に置き去りとなっているデブリは880㌧といわれ、これの冷却後のトリチュウムを含む汚染水は増え続け太平洋に放流されようとしている。デブリが安全に除去されないと原発事故は終わりにならない。テストで1㌘採取しようと複数回試みたが失敗している。専門家は百年単位の仕事になるだろうという。それでも原発推進を国は進めるようだ。
あるホトジャーナリストが全国紙に「笑顔の写真だけが被災地の今ではない。その背景も映し出された映像も見て欲しい」と書いていた。掲載されたある祭りの笑顔のアップ写真と、同じ祭りなのに背景に黒い袋が並んだ写真の比較は面白く読んだ。まだまだ原子力発電は人やシステムだけでは制御できないように思う。脱原発を放棄するからには国お得意の親切丁寧な説明にまず努めるべきではなかろうか。中継に合わせ合掌し黙祷をした。
(今日の575) 目に見えず臭いも持たぬ放射線