TENZANBOKKA78

アウトドアライフを中心に近況や、時には「天山歩荷」の頃の懐かしい思い出を、写真とともに気ままに綴っています。

新入生歓迎登山レポート

2025年02月08日 | SUWV
すでに終了しているブログですが、今も多くの人に訪問してもらい感謝です。
昨日のアクセストップだった記事は「新歓登山~1年生の感想」でした。
あらためて自分で読み返し懐かしく感じられたので、一部手直しをして再掲することにしました。
A塚君の作文にはワンゲルに籍を置き、そこで青春をおくることになった者たちの原点が書かれていたからです。




「新歓レポート」 A塚  (部誌「木霊」第8号 1980年度版)

 「ちょっとワンゲルのBOXに寄ってみようかな」と思い、ワンゲルのBOXにふらっと寄ってみたのが、実は僕がワンゲルに入部した動機でした。別に、山に登ろうとか、サイクリングをしようという確固たる信念というものは、恥ずかしながら持っていなかったのです。それからです。あっという間に事が運んだのは。いや、運ばされたのは。あれよあれよという間に登山靴を買わされ、ユニフォーム、シュラフ、ニッカなどありとあらゆるものをそろえさせられました。このような悪魔も落涙するようなワンゲルの作戦、たいしたものです。
 さて、登山用具一式をそろえた僕が、最初に行ったところ、それが新歓登山の「九重」でした。前日、びっくりするような大きなキスリングに、たくさんの食糧、テントなどをつめ込み、本当にこんな重いものをかつぐのだろうか?冗談ではないだろうか?と思いましたが、冗談ではありませんでした。
 朝早くBOXに行って、それからてくてく駅まで歩きました。そりゃ、はじめは何ともありませんでした。でも、だんだん苦しくなってきました。駅までの道のりの半分くらいまで来たとき、それは絶頂となり、もうキスリングをおろしたくなりました。そして、ふとM原君の方を見ました。ふだん陽気な彼が、物を言いません。いやそれどころか、顔を赤らめ汗をかいています。ここで僕は思いました。「苦しいのは僕だけじゃないんだ。頑張るぞ」と。
 やっとのことで駅まで着きました。そして、先輩の一人が言いました。「ここまで来ると、終わったも同然さ」と。でも、今思いおこすとそれは、冗談のように思えます。ここまでは地獄の入り口ではないでしょうか。汽車に乗り、豊後中村駅に着き、バスに乗りかえ長者原に着き、それから再び、重い荷物をかつぎました。そのとき僕は何を考えていたか。思い出すにも思い出せません。何故でしょうか。答えは一つ。苦しくて考える余裕というものが、なかったからです。そしてやっとのことで坊ヶツルに着きました。着いたときにはM原君と一緒にひっくり返りました。
 翌日ガスが深い中を、久住山に登りました。荷物はかついでいません。頂上に着いたとき、僕が見た物は、すばらしい景色ではなくガスでした。ガスのみの世界です。それから仕方なくお池を通って帰りました。 ここで皆さんは思うでしょう。「ではおまえは、新歓はきつかっただけなのか」と。もし、その通りだったなら、僕はクラブを、登山道具一式を買ったにもかかわらず、やめていたでしょう。でも、そうじゃありませんでした。 このクラブには僕の知らなかった世界があったのです。それは、先輩等との語らい、歌、苦しささどいろんな魅力が存在していたのです。だからこそこのクラブに、僕は今でも所属しているのです。
 新入生勧誘クラブ紹介の文集の一節に、「私は、ワンゲルに賭けた自分の青春・大学生活に自信があります」と書いてありました。この文章は、うそではありませんでした。


ガスの中だった久住山山頂       
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天山歩荷の道に

2024年12月26日 | SUWV
最終回から1年9ヶ月経っての追記です。

新春に皇居で行われる「歌会始の儀」に、天山歩荷の歌を詠進していました。
(お題は「夢」)

砂と夢背負ひ登りし天山のあの日の道にまた帰り来ぬ


歌に込めた思いは以下の通りです。

学生時代の天山歩荷
山頂までの長い道
背中には砂を詰め込んだ重いキスリング
汗をダラダラ流しながら登ったアスファルトの照り返し道
山道では喘ぎながら一歩、また一歩
それでもあの頃の私たちには大きな夢があった
背負っていた砂以上の とてつもない夢が

就職してもしばらくは登っていたが
いつの間にか仕事に熱中
山への憧憬は心の片隅に

そして迎えたセカンドライフ
天山歩荷のあの道に
また帰ってきたんだと…


ところで、入選者を伝える新聞記事ですが
「歌会始 入選10人決定」の見出し
本文を読むと10人の筆頭に
「長崎県諫早市の」
一瞬ドキッとしましたが…

別の方でした。


私たちにとって天山歩荷の道は特別です。
今年の1月、先輩のO塚さんから誘いがありました。

「来週佐賀に用事があって、29日に天山歩荷の道を辿って見ようと思っています。S一郎と二人ですが、お知らせまで」

メールをもらい、「天山歩荷の道」に懐かしさがこみ上げ、ぜひご一緒させてもらおうと思ったのですが都合が悪くなり私はいけませんでした。

先輩の登山レポートでは、廃校を過ぎての山道が葛と棘のヤブになってしまっていたということでした。
今は八合目まで車で行く人がほとんどなのでしょう。


天山歩荷の歌
皇居「松の間」で詠み上げられるのを夢見ていたのですが…

拙歌をもう一首
老いてなほ夢中になれる吾が好きあの頃の夢今も追ひつつ



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天山から眉山へ(最終回)

2023年04月14日 | その他
拙ブログ "tenzanbokka78" を、長いことお訪ねいただき、ありがとうございました。
おかげさまで、ブログ開設から10年あまり経ち、アップしたブログは1000を越えました。

セカンドライフが始まったのを機に、"tenzanbokka78" に一つの区切りをつけようと思っています。

そこで、心機一転の新規移転!
「まんやま独歩」という新たなブログを開設することにしました。

「まんやま」は故郷のやま「眉山」のことです。
青春の山「天山」から故郷の山「眉山」を冠したブログに移行し、セカンドライフの歩み(老境)を綴っていこうと思っています。


長い間、tenzanbokka78をご訪問いただきありがとうございました。
新しいブログ「まんやま独歩」もよろしくお願いします。
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大きな活字本で「沈黙」を

2023年04月10日 | 日常
遠藤周作文学館に行ってから無性に「沈黙」が読みたくなりました。
「沈黙」の中のフレーズが所々で紹介されていて、興味がわいてきたからです。

例えば、文学館から車で5分ほどの所にある「沈黙の碑」




石には次のフレーズが刻まれています。

 人間が
 こんなに
 哀しいのに
 主よ
 海があまりに
 碧いのです
    遠藤周作

外海の碧い海




文革館に隣接する思索空間アシャンティ


碧い海に向かって並べられている椅子、そのカウンターには遠藤作品のフレーズを刻んだプレートが貼られていました。


「私がその愛を知るまでには、今日までの全てが必要だった。『沈黙』」


文学館の中は言わずもがなでした。




家に帰り、しばらく遠藤周作文学館の余韻に浸っていました。
その余韻は、日が経つにつれて「沈黙」を読んでみたいという気持ちに変わりました。

幸い、連れが昔読んだという文庫本を持っていたのですが…




字が小さくて読むのが苦になりました。
若い頃は何でもなかったのでしょうが、ちなみにこの本は昭和56年に出版されたものでした。

それでも「沈黙」が読みたくて図書館へ行くと、ありました。
大きな活字の「沈黙」。



先ほどの文庫本と比べると、こんなにも字が大きいのです。


図書館にあったのは「大活字文庫」と名のついた22ポイント・ゴシック体で印刷された本でした。

活字が大きい分、嵩は張ります。
文庫本1冊が3分冊



本の厚さ


文庫本の7倍の厚さになります。

その分文字が大きく、これなら目に負担を掛けないでどんどん読めそうです。



ただ、ページを頻繁にめくらなければなりませんが…
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思索空間アンシャンテ 遠藤周作文学館隣接

2023年04月04日 | お出かけ
長崎市外海町にある遠藤周作文学館、その存在は知っていましたが、先日初めて訪ねました。









文学館の展示物は、どれも興味深く見応えがあるものでしたが、それ以上に私が惹かれたのは、文学館に併設した「思索空間アンシャンテ」でした。



(Enchanteは「はじめまして」を意味するフランス語)

建物に一歩踏み入れたら大きな窓一面に広がる青い海が視界に飛び込んできました。




窓の外は角力灘(すもうなだ)
午後になると、部屋の中にもだんだんと光が差し込み、同時に海が輝きを増します。




ここは元は喫茶店だったそうですが、改装され、大きな窓辺に十分な距離をとって椅子が並べられています。
潮騒のかわりに館内には静かな音楽流れています。
(遠藤周作の遺品のレコード 木管楽器パンフルートの即興曲「グレゴリアンの調べ」だそうです)

椅子に座って海を眺めていると、とっても良い気持ちになっていきました。
目の前に広がる青い海、そして心地よい音楽。
心がどんどん浄化されます。

「思索空間」と名付けられたこの建物には、「忙しい生活から少し離れて、ゆっくり時間を過ごしてほしい」という願いが込められているそうです。しかも入館は無料です。

入り口にあった遠藤周作の奥様のメッセージ



館内にはソファーや本もありました。









本棚から本を借りて、この椅子に座って読書にひたる。


なんて贅沢な空間なんだろう!
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