TENZANBOKKA78

アウトドアライフを中心に近況や、時には「天山歩荷」の頃の懐かしい思い出を、写真とともに気ままに綴っています。

大晦日の雪に思う

2012年12月31日 | エッセイ
 今年の大晦日も雪がちらちらと舞っている。
昨年も確か雪だった。
タイヤにチェーンを巻いて帰省する息子を駅まで迎えに行ったのを覚えている。

 「犬はよろこび庭かけまわり…」

 私も犬の気があるのだろう、いまだに雪が降ると興奮する。
血が騒ぐ。無性に山に登りたくなる。
寒いけれど、そこには美しい世界が待っているからだ。

 「枯れ木残らず花が咲く」

 冬枯れの木々はもちろんのこと、汚れたものすべてを純白の雪でおおい隠し
最高に美しい白銀の世界がそこにはある。

 というのは「衣食に憂いのない」人間の言い分であって、
木々にとっては試練の冬、試練の雪であろう。
下の写真は、多良岳のシャクナゲである。


葉っぱを折りたたみ傘のように下に折り曲げたたずむシャクナゲ。
高度を上げるにつれ、その意味が分かってきた。
木々に積もった雪は見た目には美しいが、
木々には相当の重み、負担なのである、時には枝が裂けるほどの。

シャクナゲは葉っぱを下に折りたたむことで、
雪の負担を軽減し厳しい冬に耐えていたのである。
冬でも葉を落とすことのない常緑樹の冬を生き抜く術であろう。



 暖かくした部屋の中から舞う雪を見ていると、昔のことが思い出される。
普段は仕事で忙しくしていても、雪が降ると血が騒ぎ、
子ども達を一度だけ雪を見せに山に連れて行ったことがあった。

下の写真は、仁田峠の駐車場で雪を集めてミニかまくらを作ったときのものである。



 その息子も来春からは社会人。
最後の冬休みということで、
年末年始は友達と最後の学生時代の思い出を作るという。
元旦には帰ってこれないというが、それもよかろう。
寂しい気はするが、息子の成長と門出を祝いたい。
 ただ、いつでも迎えに行けるようにタイヤチェーンは準備している。
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年の瀬に思う

2012年12月30日 | エッセイ
冬の雲仙普賢岳 2012年2月撮影(現在は足の療養中…) 



 読書三昧もあまりに過ぎると、からだのあちこちに異常をきたす。
肩がこる、目がかすむ、ひいては偏頭痛が…、といった具合に。
昔から言われるように、「何事もほどほどに」が一番。
「晴耕雨読」これこそが最高に贅沢な生き方なのかもしれない。

 さて、年の瀬である。
長引く不況で新年を迎えるのが容易でない人も少なくないのでは。
毎日新聞の「余録」にも、「銭金がなくては超えられない冬と春の峠」と
「世間胸算用」の一節を引用して年の暮れのことを書いていたが、
今年は特にそのことが気にかかる。
というのも、次の一文が脳裏に焼き付いてはなれないからだ。


  「奈落の底にうごめいている浪人物の悲哀は、
 衣食に憂いのない人々に、しょせんわかってもらえることではなかった。
 血迷った求女(主人公の娘婿)のみれんをあざけり笑ったその人々が、
 同じ立場に立たされた時、どれだけのことができるというのか」


 今、私がハマっている、滝口康彦氏の「異聞浪人記」の一節である。
わずか30ページの短編小説だが、
主人公のせりふ一語一語に込めた滝口氏の悲痛の訴えが胸に突き刺さる。
私も、「衣食に憂いのない人々」の一人で、
本当に生活に苦しんでいる人の大変さを慮っていなかったと反省させられる。

 滝口氏は長崎県の出身だが、佐賀県多久市で執筆活動をされた。
昨年「一命」というタイトルで、「異聞浪人記」の2回目の映画化が実現したが、
これをを記念して、佐賀県立図書館は「佐賀が生んだ時代小説家 滝口康彦」
ということで特別展を企画されたという。すばらしい企画である。
もっともっと滝口氏のことを紹介して、
多くの人に滝口作品を読んでもらいたいと切に思う。
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読書三昧 滝口康彦氏の短編歴史小説

2012年12月23日 | エッセイ


 今日はクリスマス。
予報通りに西高東低の冬型が強まり、ホワイトクリスマスとなった。
今日の雲仙普賢岳はこんな感じだろうかと、今年2月に登ったときの写真を貼ってみた。
足の怪我さえなければ今頃は…。

 この3連休は、山にこそ登れないが実に充実している。
足が思うように動かない分、読書三昧。
思う存分に滝口康彦氏の小説を堪能しているからだ。

 今図書館から借りているのは、昭和56年に出版された「恨み黒髪」と
昭和54年の「葉隠無残」の2冊。
この1週間で短編を合計で14作読んだことになる。
老眼の進んできた目は悲鳴をあげているのだが、心は感動で打ち震え、頭は喜び冴えわたっている。

 昨年出版された文庫本「一命」を、ある書評で「滝口康彦氏のベスト版」と紹介しているのだが、それはどうだろうか。
確かに、「一命に」に収録されている6編はどれも珠玉の歴史小説に相違ないが、氏の作品群から「ベスト」として何点かを抽出することは容易なことではないからだ。
先に挙げた2冊の中からだけでも、「恨み黒髪」「秋月の桔梗」「切腹にあらず」「遺恨の譜」「血染川」「朽ち葉の記」と、どれも「ベスト版」に選ばれてもおかしくない傑作である。2冊読んだだけでこれである。これからどんな作品に出会えるか楽しみでならない。
 ところが、残念なことに、先に挙げた「一命」をのぞいて、氏の本はそのほとんどが今では絶版になっている。件の2冊だって図書館の書架には置いてなかった。図書館備え付けのパソコンで蔵書を検索し、別階の保管庫にあるものを出してもらったのである。
 氏の作品が私の住む諫早図書館にないわけないと思っていた。
作品が優れていることもだが、何よりも氏は長崎県のご出身だからだ。
地元が生んだ偉大な作家の作品を地元の図書館に置いてないわけがない。
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邂逅 滝口康彦氏

2012年12月23日 | エッセイ


 写真は10月に鹿児島に行ったときのもの。
太陽がまさに山に隠れようとする瞬間の輝き、名付けて
「ダイヤモンド薩摩富士」

 今日は天皇誕生日。この3連休は、霧氷を見に冬山に登ろうと楽しみにしていたのだが…。
家から1歩も出ることなく読書三昧。

 1週間前の12月16日、レクリェーションでバレーボールをしていて
右足首をねんざする。
いまだに、内出血の跡も痛々しく、どす黒くハムのように腫れ上がっている。
しばらくは松葉杖生活で車の運転もできない。

 そんなわけで、今は山をあきらめ、読書にハマっている。
滝口康彦氏の作品にハマっているのだが、これが面白い。
1つの作品を二度、三度と読み返す。
40ページ前後の短編だが、奥が深い、深すぎる。
滝口氏の作品をどうしてもっと早く読まなかったのだろうかと、
悔やまれてならない。

 33年ぶりの邂逅。
実は33年前に、私は滝口氏に会っている。
有難いことに、滝口氏のご講演を拝聴していた。
講演の内容はいまだに鮮明に覚えているというのに、
氏の作品を手にしなかったことが悔やまれる。

 再会のきっかけは「切腹」という映画だ。
1962年上映の古い映画だが、いまだに人気がある。
昨年(2011年)も市川海老蔵主演で再び映画化されるほどに。
私が見たのは、古い方のそれだが、主演仲代達也。
他に丹波哲郎、三國連太郎、岩下志麻…とそうそうたる顔ぶれ。
(今から50年も前だから出演者も当然のことながら若い)

社会の底辺に生きる浪人の悲哀を痛切に描き出した映画で、
胸に迫るものがある。
何という重いテーマなんだと感動にひたりながら,
あらためてスタッフやキャストの一覧を見てみたら、
原作「『異聞浪人記』滝口康彦」と書かれていた。

 「滝口康彦」、頭の中で何かがスパークした。
知っている、聞いたことがある…。
古い資料を調べた。
はたして、33年前、大学4年生の時の九重研修。
その折りの特別講演の講師がまさに滝口康彦氏だった。
「書くことの周辺」という演題で話をされたのだった。

 あのとき、文章や、ことばへのこだわりを話された滝口氏の作品が
この映画だったのかと、また別の感動に包まれた。

 1年前海老蔵主演で話題になり文庫本も出ていた。
「一命」。
今では絶版となっている氏の作品群の中から
代表的な短編6話が納められている。
たちまち虜になった。鳥肌が立つような深い読後感。
33年間の空白が悔やまれるが、新たな目標もできた。
生き甲斐と言っても良いかもしれない。
あと何年生きるかわからないが、
残りの読書人生の全てをかけて氏の作品を堪能したい。
先にも書いたように、一つの作品を二度も三度も読み返しながら。

 ぜひ登ってみたいと思う山がいくつもある。
羅臼岳、トムラウシ、剣、石鎚、南アルプス…。
それと同じくらい滝口氏の作品を読みたいと思っている。

 久しぶりのブログだが、しばらくは滝口氏のシリーズが続きそう。
少なくとも松葉杖がとれるまでは。
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「山の詩」

2012年12月01日 | SUWV
部歌の作詞をお願いしたとき、二つ作ってもらっていた。
前回の「佐大ワンダラー」ともう一つがこの「山の詩」
出だしの一行は目は、私の詩にも使わせてもらっていました。


  「山の詩」    相良正哉・阿比留千代磨作詞

一 あの日あの峰遠い道
  思い出しても懐かしい
  荷歩 縦走 汗まみれ
  酒の肴に消えるのは
  足の痛みか 天山の汗か
  足の痛みか 天山の汗か

二 あの日あの峰遠い道
  山の天気は移り気で
  びしょ濡れ 沈殿 涙雨
  てるてる坊主に願うのは
  明日の天気か 作礼の恋か
  明日の天気か 作礼の恋か

三 あの日あの峰遠い道
  頂上見上げて立ち止まる
  ケルン 風の音 イワシ雲
  両手広げてつかむのは
  はるか稜線 九重の空か
  はるか稜線 九重の空か


(九重新歓登山)

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「佐大ワンダラー」 

2012年12月01日 | SUWV
 これも30年ほど前、部歌をつくりたいと思い立ち、作詞の方を先輩にお願いした。
 詩を作ってくださった両名の先輩、この詩を眠らせたままでごめんなさい。


「佐大ワンダラー」  
 相良正哉・阿比留千代磨作詞

一 酒を飲んだら夜明けまで
   それでも足りなきゃ
   酒屋を起こせ
   飲んで飲ませて
   吐かれて吐いて
   ともに酔おうか明日の夢

二 歌い出したら心はひとつ
  ファイヤー始めりゃ
   最高なのさ
  歌い歌って踊って狂え
  ともに謳おか 明日の夢

三 若さとりえの
   目立ちたがり屋
   記念写真は
   まともじゃないさ
   他人押しのけ
    前出て跳ねて
   ともに現(うつ)そか
    明日の夢

四 佐賀をとび出し
       南へ北へ
   ワンゲル魂 東へ西へ
   歩き歩いて走って倒れ
   ともに登ろか 
       明日の夢



(1978年・秋 宝満山にて)



(1980年・冬 作礼山にて)


※ 佐大ワンゲル関係のみなさんでしょうか。わりとこのページが人気がありますので、阿比留さんの直筆原稿を追加しました。(H25.7.19)

※ また、阿比留・相良両氏作詞の「山の詩」もあわせてご覧いただければ幸いです。

※コメントをくださった吉田様   → 「阿比留千代磨という人」新たにアップしました。(H26.1.11)





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