経済再生は「現場」から始まる―市民・企業・行政の新しい関係 (中公新書)山口 義行中央公論新社このアイテムの詳細を見る |
硬いタイトルなので、最初は引き気味であったが、読んでみると実例をもとに
書いてあるので割合とっつきやすい内容であった。
失われた10年のまっただなかに、金融庁は金融機関の統廃合と不良債権処理
を進めたが、処理を進めることは逆に銀行の自己資本比率を落とし8%を
割る状況になると銀行そのものが貸付を絞らざるを得ない状況になる。
ということをこの歳まで知らなかった。(恥ずかしい話ですが・・・)
自己資本比率が8%に下がると貸付する基礎体力が落ち、それ以上に市場の不安
(拓銀のように解散するのではと)を駆り立て健全な運営をしている銀行にまで
影響がでるということは少し考えてみればわかることである。
そんななかで、中小企業、地方自治の資金繰りの改善が難航することは
容易に想像がつく。本のなかで印象に残ってるのが、常陽銀行が、3ヶ月間
売上0の金属加工メーカーに融資を続けたという話は、胸をなでおろさせる
気持ちにさせた。売上は当時の不景気からありえないことではないが、
金融機関がそのような会社に援助することは意外であった。
金属加工メーカの社長が資金到達を得るためには、企業そのもの評価と独特
な技術によって市場を再度洗い直せば、なんとかなるということを銀行に
理解させることが必要。それで融資がつづいたり、一部を信用金庫が融資
したりとリアリティにあふれる記述もあった。
不良債権化への懸念のある企業への経営改善対策についても概要も興味深い
ものがあった。不景気のときこそ銀行などの金融機関は経営改善策で支援す
べきであるという銀行マンの話などは、少し出来すぎのようにも思えた。
この本では、不景気のときの経済再興へこのような現場での解決方法を
見出す自力を経済はもつもので、国はこれを支援できるよう規制等見直
すべきであると主張しているようだ。
なかなか考えさせられる本であった。