発行人日記

図書出版 のぶ工房の発行人の日々です。
本をつくる話、映画や博物館、美術館やコンサートの話など。

竜胆

2024年10月06日 | 日記
 海辺の病院近くにやってくる次のバスまで2時間も待つ気にならない。病院の周辺には家電店と魚屋があるのみ。
 駅まで26分。真夏ではないので歩くことにした。
 夏が暑かったせいか彼岸花が2週間遅れで道端に咲いていた。
 ふと、中学の同級生がこの近くで花屋をしているのを思い出した。
 花屋で検索すると、うろ覚えの店名に近い名前の店が出てきて、地図と営業時間がすぐわかる。いい時代だ。今私がいるところから歩いて3分、しかも営業中だ。
 同級生が留守でも、何か花を買おう。
 脇道にそれて少し歩くと花屋はすぐ見つかった。木のドアの格子のガラス越しに竜胆が見えた。
 店に入った。
 店主は、カウンターに置いた円筒形のガラス花器に、あれはオンシジウムといったか、黄色い蘭の小花を活けているところだった。
 店主はすぐに私の名前を思い出した。
「散らかってるけど……」
 作業中とすればそんなものだろうな。お花がいっぱい。花屋さんだからね。センスの良い花器やリースが飾ってあった。
 見舞いの帰りに寄った旨話す。今日びは生花と食べ物は病院には持って行けないのだ。あとは共通の知り合いの消息などを少し。
 27年前の同窓会以来だった。そのとき彼が、ホテルに入っている大手チェーンの花屋から独立した話をしていたのを覚えていたのだ。
 27年も、立地がいいわけではない場所で商売を続けるには、よほどの営業努力と、研鑚が必要だったに違いない。

 同窓会のとき、他の同級生男子、確か公務員が結婚したいと思っている女性に年末に蟹を贈った話を聞き、ええっ、そう若くもない、ちゃんと収入のある交際相手から年末に贈られたのが蟹ですと? 他のものは贈らなかったの? がっかりしてなかったらよいのだけど。てか私蟹好きだけど、がっかりのガックリだわ。細い細い金鎖でもガラスのついた銀の指輪でもいいわ、なにかロマンチックなものが欲しいところだわ。フォローしとかないと、彼女、正月に親の持ってきた見合い話なんかにうっかり乗ってしまうわよ。今からでも遅くはない。何か宝石っぽいアクセサリー買って、それとS君(花屋さん)に、素敵な花束を作ってもらって、お年玉だ、とサプライズに持って行き、指輪のサイズを聞いてくるのよっ!と発破かけまくったのを覚えているが、それからどうなったのか。S君の作った花束なら効いたんじゃないかと思うが、その話は今回は、しなかった。

 ともかく竜胆を買った。何種類かあるようだったが、「これが一番好き。今日仕入れた」というのを「じゃ、それで」と頼んだ。
「菊と竜胆は、鋏じゃなくて手で折ったほうが水が良く上がるよ」。
 ひとつ賢くなった。対面販売ならではである。また来ます、と言って店を出た。

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