峰猫屋敷

覚え書と自己満足の場所

夢二の絵

2006年11月25日 13時20分23秒 | 自作品
昔々のことじゃった。
竹久夢二の本を読んでいた おとうは、ひとつの絵を指差して娘に言った。
「お峰よ。この絵を描いてくれんか」
「あいあーい」
娘のお峰は、おとうの頼みを快く引き受けて、色鉛筆を使って模写したのじゃった。

出来上がった絵を見て、おとうは言うた。
「どうもおまえが描くと、明るくなっちゃうなあ」
たしかに元絵はもっと暗かった。
しかし、おとうはその絵を額に入れて、しばらくは壁に飾ってくれていたのよ。

年月が過ぎ、おとうは亡くなり、家も人手に渡って無うなることになった。
お峰は片付けていて、この絵を見つけた。

一瞬、「古道具屋さんを試してみようよ…」 と、耳元で悪魔が囁いたけれども、
小心者のお峰は、額からはずして持ち帰ったとさ。
だって、ご丁寧にサインまで偽造してあったから。




もし古道具屋さんが騙されちゃったら、犯罪じゃもの。
くわばら くわばら。