昔々のことじゃった。
竹久夢二の本を読んでいた おとうは、ひとつの絵を指差して娘に言った。
「お峰よ。この絵を描いてくれんか」
「あいあーい」
娘のお峰は、おとうの頼みを快く引き受けて、色鉛筆を使って模写したのじゃった。
出来上がった絵を見て、おとうは言うた。
「どうもおまえが描くと、明るくなっちゃうなあ」
たしかに元絵はもっと暗かった。
しかし、おとうはその絵を額に入れて、しばらくは壁に飾ってくれていたのよ。
年月が過ぎ、おとうは亡くなり、家も人手に渡って無うなることになった。
お峰は片付けていて、この絵を見つけた。
一瞬、「古道具屋さんを試してみようよ…」 と、耳元で悪魔が囁いたけれども、
小心者のお峰は、額からはずして持ち帰ったとさ。
だって、ご丁寧にサインまで偽造してあったから。
もし古道具屋さんが騙されちゃったら、犯罪じゃもの。
くわばら くわばら。
竹久夢二の本を読んでいた おとうは、ひとつの絵を指差して娘に言った。
「お峰よ。この絵を描いてくれんか」
「あいあーい」
娘のお峰は、おとうの頼みを快く引き受けて、色鉛筆を使って模写したのじゃった。
出来上がった絵を見て、おとうは言うた。
「どうもおまえが描くと、明るくなっちゃうなあ」
たしかに元絵はもっと暗かった。
しかし、おとうはその絵を額に入れて、しばらくは壁に飾ってくれていたのよ。
年月が過ぎ、おとうは亡くなり、家も人手に渡って無うなることになった。
お峰は片付けていて、この絵を見つけた。
一瞬、「古道具屋さんを試してみようよ…」 と、耳元で悪魔が囁いたけれども、
小心者のお峰は、額からはずして持ち帰ったとさ。
だって、ご丁寧にサインまで偽造してあったから。
もし古道具屋さんが騙されちゃったら、犯罪じゃもの。
くわばら くわばら。