其の二の今日は、素直にコース順に、吉備津神社のあれこれを紹介していきます。まずは郷土記念物に指定されている「吉備津の松並木」。吉備津神社参道の両側に生育する県下最大の松並木を横に見ながら進むと、はるか向こうに御神体とされる「吉備の中山」が見えてきました。
境内入口で一際存在感を放つ大岩は、吉備津彦命と温羅の伝説に基づく「矢置き石」。その昔、鬼神・温羅との争いの最中、吉備津彦命が矢を置いた石と伝えられており、また戦いの最中、互いの矢が真正面からぶつかって落ちた場所は「矢喰宮」として残されているそうです。
〆柱から先は神域となります。石段参道を登って境内へと向かう事にしましょう。季節ごとに姿を変えるだろうと思われる木立の中、行く手に朱と白の神門が見えてきました。
神社正面からの北参道途中に建てられている、単層入母屋造檜皮葺の「北随神門」。室町時代・天文11年(1542)の再建で、国重要文化財の指定。
正面からでは中々見ることの出来ない檜皮葺屋根の美しい姿、石段参道の途中から振り返ってみました。
参道突き当たりに建つ「割拝殿」。天井には「崇敬」と書かれた赤い大提灯が吊るされており、独特の雰囲気をかもし出しています。
拝殿正面、注連縄の奥には、漢学者:三島毅氏揮毫による「平賊安民(賊を平らげ民を安んず)」の扁額。
割り拝殿向かって左手が授与所になっており、私たちもここで御朱印を頂きました。授与所の壁には沢山の絵馬や額が奉納されており、特に私達の足を止めさせたのが、備中地方を中心に催される「備中神楽」の神楽面。
「備中神楽」とは神官で国学者の西林国橋が文化・文政年間に旧来の荒神神楽に神代神楽を加えて完成させた神楽を指し、吉備津神社では毎月10日のえびす祭で演じられるそうです。(備中神楽は1979年2月24日に国の重要無形民俗文化財に指定されました。)
白い小さな張子の戌は、吉備津神社に数百年も前から伝わる「吉備津のこまいぬ」。立つ犬、座る犬、鳥の3体が1セットになっており、由来書に謂れが表記されています。「・・・「こまいぬ」は盗難・火難を除き 野獣を防ぎ 子供の夜鳴きなどに霊験があり「とり」は、食事の時お膳の上に置くとのどにつまらぬと伝えられ 家の守り・身の守りとし・・(一部抜粋)」
とてもさり気なく展示されている梵鐘ですが、「永正十七年(1520)・大工林但馬守藤原家朝」の刻銘があり、重要文化財の指定。
拝殿前には、やはり岡山県の神社に相応しく、備前焼の灯篭一対が奉納されています。宮獅子と違って目立たない存在ですが、実は大作なんですよ。
祈祷殿の近くには緑の水を湛えた神池があり、人懐こい鯉たちが、近づく人の気配を察して集まって来ます。
池の向こう、築山の入り口には自然石の石段が設けられており、その左右より神域を守護されるのは、一対の狛犬さん。
石の陰に上手に隠していますが、吽形さんの前足は欠損しています。でもそのお顔はとても優しくて穏やかです。
境内中ほど、社殿と向かい合う位置に聳えるのは樹齢約600年とされる「大銀杏」。長い長い時間の中で、ただじっと人の営みを見続けてきた大銀杏は、今も神の木として敬われています。
どの位置から見てもため息がこぼれそうなほどに美しい吉備津造りの社殿。普通なら撮影の「邪魔」と言われそうな生垣や御神木も、ここでは重要なアイテムと化しています。
歴史に裏打ちされた美しい建物を擁する「吉備津神社」、まだまだ紹介は終わりませんが、続きは明日の吉備津神社~3~で。
参拝日:2007年9月22日&2011年8月16日&2015年4月27日