職場にある注射液の棚をみていたら、懐かしいことを思い出しました。
研修医のころ、色々な事を先輩から教えて頂いたのですがそのひとつ、「静脈注射の時はその薬を20%ブドウ糖液20ccにうすめてゆっくり」と。いまもそのとおりなのですが、以前に「なんで5%じゃなく20%なんだろう?5%なら等張で注射漏れしても痛みが少ないはずなのに?」と思ったことがあります。
当時はもちろんネットで調べるなんて事もなかったので、まじめな後輩に「これってなぜだか調べておいで」って押しつけてしまいました。
その後輩は一晩考えて、翌日私にその理由(らしい)ものを話してくれました。
人の循環血液量は約4,000ml、そして通常の血糖値は100mg/dlほどなので、ひとりの血管の中を流れているブドウ糖はたったの4gです。そして20%ブドウ糖液20mlはブドウ糖として4gと同じ。静脈注射を必要とするような人は、「弱ってる」から一気に血糖値を倍に上げてゲンキにするんじゃないですか?
研修医(消化器外科)としての意見としては「?」なものでしたが、妙に納得したのを覚えています。
いまもその理由は分からないままですが、5%ブドウ糖液でも生理的食塩水20ccでもなく、糖尿病のない人にはやっぱり20%ブドウ糖液(ニジュプロツッカー・日独折衷語?)なのです。
※ Prozento(独):パーセント(%)のこと
Zucker(独):糖の意味
でも手書きのカルテには「20%Tz 20ml」って、Tzって何?
で、さすがに点滴の時は20%というわけにはいかず、もちろん病態に応じてですが、5%ブドウ糖液を使うことも多くなります。
「たんぼの仕事で疲れとるねん。元気のでる点滴してや」って来られることもあります。でもこの写真のように、よく使う5%ブドウ糖液250mlの点滴を行っても12.5gのブドウ糖、カロリーにすると4kcal/gなので、一本点滴しても50kcalだけの補給にしかなりません。チョコレート2個分ぐらいかな。
「帰って、ポカリ飲んどくわ」って事になります。