明日に向けて

福島原発事故・・・ゆっくりと、長く、大量に続く放射能漏れの中で、私たちはいかに生きればよいのか。共に考えましょう。

明日に向けて(1040)高浜原発再稼働阻止-原発事故から4年、脱原発行動をさらに盛り上げよう!

2015年02月17日 23時30分00秒 | 明日に向けて(1001~1100)

守田です。(20150217 23:30)

鹿児島県の川内原発に続いて福井県の高浜原発の再稼働に向けた動きが活発化しています。
原子力規制委員会は2月12日、再稼働に必要な審査を進めている関西電力高浜原発3、4号機(福井県)の事実上の合格証となる「審査書」を正式決定。関電に施設の変更などを認める許可書を交付しました。
新規制基準の適合を認められた原発は、九州電力川内(せんだい)原発1、2号機(鹿児島県)に次いで2カ所目となります。
安倍政権がさまざまな案件に高圧的な態度を取り続けていることもあって、こうした報に暗い気持ちになる方もおられるかと思います。

しかし再稼働はまだ決定し、実現したわけではありません。たくさんの点検が残っているし何より「地元」との合意問題が残っています。これにはどこを「地元」と判断するのかと言う点も含みます。
他にも高浜原発の再稼働を認めない仮処分が申請されているほか、さまざまな抵抗が行われています。だからまだまだできることはたくさんあります。
さらに私たちが見ておくべきことは、そもそもあの絶対多数の議席を獲得している安倍政権が原発の再稼働を今日まで実現できずに来ていることです。
一番最後まで稼働していたのは福井県の大飯原発3、4号機でしたが、それが止まったのが2013年9月15日。それから今日まで連続521日間、私たちは原発の運転を食い止めているのです。

そもそも大飯原発は2012年7月5日に稼動原発ゼロの状態から再稼働を強行されたのでしたが、他の原発はそれ以前に止まっていました。
最も長く止まっているのは柏崎刈羽原発2号機です。これまで7年7カ月も止まっている。次は同じく柏崎刈羽原発3、4号機でこれらは7年6カ月も止まっている。
ちなみに柏崎刈羽原発は世界最大の出力を誇ってきた原発です。それが地震などを契機としつつ、民衆の批判の前に止まっているのです。この他、大飯原発を除けば日本のすべての原発がもう3年近くも止まっています。
再稼働が叫ばれている高浜3号機は2年11カ月、4号機は3年6カ月です。それほどに日本の原発は稼働できない期間が続いているのです。止めているのは私たち民衆のパワーです。まずはこのことをしっかりと確認しましょう。

その上で、川内原発についても高浜原発についてもまだまだ問題が山積みとされていることをきちんとおさえておきましょう。これを雄弁に語っているのはなんと原発推進に振り切り、他の面でも安倍首相の絶対的応援団と化している産経新聞です。
なかなか面白い記事を書いています。参考になるのは以下の記事です。

 高浜合格 九電社員「心折れそう…」進まぬ再稼働、四面楚歌の九電経営陣
 産経新聞 2015年2月12日
 http://www.sankei.com/life/news/150212/lif1502120035-n1.html

資料的価値があるので、末尾に全文を貼り付けておきますが、まず語られているのは、川内原発の再稼働への動きが大きく「遅れている」ことです。このため高浜原発が先になる可能性もあるとされている。それだけ川内原発再稼働の動きが進んでいないことが強調されているのです。
記事には次のように書かれています。

 「一気に再稼働に突き進むとみられたが、思わぬハードルが浮上した。原発の機器の設計図など工事計画と保安規定の補正書だ。九電は規制委の指摘を受け、修正した補正書を昨年9月末に再提出する計画だったが、2度にわたって延期となり、現在に至るまで提出できていない。
 規制委の田中俊一委員長は「九電の対応の遅れを懸念している」と語る。」

その結果、九州電力はどんどん苦しい状態に追い込まれているそうです。記事は以下のように続いています。

 「そうこうしている間に、九電は民間企業として存続の危機に陥った。
  平成27年3月期の連結決算は4期連続の最終赤字となる見通しだ。債務超過が現実味を帯びる九電に、金融機関は「電気料金再値上げ」を融資条件に挙げるようになったという。
  しかし、原発再稼働を視野に入れながらの再値上げは、利用者の反発が大きい。経済再生を掲げる政府、経済産業省の理解も得がたい。
  社内に亀裂も走り始めた。書類作成が進まない原子力部門への風当たりが強くなり、将来像を社員に示せない経営陣への不満も積み上がる。
  九電経営陣は、まさに四面楚歌といえる状況だ。」

ようするに九電は再稼働に向けて順調に歩んでいるのではまったくないのです。産経新聞は再稼働にまっすぐに向かっているとは言えない九州電力の悲鳴を、ある意味では率直に記事に反映させています。
では川内原発に先んじるかもしれないとも言われ出した高浜原発再稼働の動きは順調なのか。もちろん否です。
この点についても産経新聞は原発推進派の不安を的確に取り上げています。

 「高浜原発にも再稼働に向けたハードルがいくつかある。その最たる物が訴訟リスクだ。
  昨年12月、反原発団体が高浜、大飯両原発の再稼働差し止めを求めて、福井地裁に仮処分を申請した。福井地裁は同5月に、大飯原発運転差し止めを認める判決を下した裁判所だ。仮処分を認める可能性は十分にあり、その場合、関電は法廷闘争を強いられる。」

産経新聞が取り上げているのは、福井地裁が再稼働差し止め訴訟で仮処分を認める可能性があるということです。これが「高浜には訴訟リスク」という小見出しのもとに書かれている。
先にも述べましたが、産経新聞は安倍政権断固応援新聞です。そのためここで産経新聞が表明している不安は、安倍政権そのものの不安と重なっているとも言えます。
産経新聞はさらにこんな記事も書いています。

 原発再稼働1号は高浜か 「合格証」きょう確定、川内は遅れ
 産経新聞 2015年2月12日
 http://www.sankei.com/affairs/news/150212/afr1502120002-n1.html

ここでは高浜原発再稼働に向けた道のりよりも、川内原発再稼働に向けた道のりの方が有利な点を取り上げて、高浜原発再稼働への障壁を指摘しています。

 「川内が有利な点は、再稼働に向けた「地元の同意」だ。昨年10、11月に立地自治体の薩摩川内市と鹿児島県が同意を表明し、大きなハードルをクリアした。
  高浜では防災指針の目安となる半径30キロ圏に京都府や滋賀県も含まれるため、地元の範囲をめぐって争いがあり、同意がスムーズに得られるかは不透明だ。」

川内原発とて「大きなハードルをクリアした」ことになっていると僕は思いませんが、それはともあれ産経新聞はここで高浜原発に関しては「地元の範囲」をめぐって「争い」があると指摘されていることが重要です。
具体的には関西広域連合がいざというときに被害を受ける地元として認めよというまっとうな声を上げており、それが大きな障壁になっているのです。

だとするならば私たちの歩む道は鮮明です。産経新聞が、安倍政権を慮って心配している通りの道を歩もうではありませんか。
一つに両原発ともに、再稼働に向けて順調な道を歩んでいるとはとても言えない現状をしっかりと見据えて、原発再稼働反対のさらに大きな声を響き渡らせることです。
とくに重要なのは3月11日の福島原発事故以降4周年を迎えるにあたって、全国いたるところで大きな集会や企画、デモンストレーションが行われようとしていることです。
ぜひこれらに参加し、また周りの方を誘い、「原発再稼働反対」「このまま原発ゼロを社会を実現しよう」という声を全国で高めようではありませんか。

続いて大事なのは裁判の動きです。首相の応援新聞である産経新聞が裁判を懸念しているのですから、私たちはこれらの裁判をぜひとも応援しましょう。
そのために募集の行われている訴訟団があれば積極的に参加しましょう。裁判傍聴などにも行きましょう。弁護団へのエールを送りましょう。
この点で昨年5月に福井地裁で下された大飯原発稼働停止命令は画期的でした。今からでもこの内容を広め、これに続く判決を出すように当該の裁判所に要請を行うことが大事です。

続いて大事なのは、高浜原発をめぐる「地元」問題です。
高浜原発は福井県の一番西にある高浜町の中のさらに一番西にある内浦湾に押し付けられた原発です。このためわずか数キロで京都府舞鶴市になります。舞鶴市は半径30キロ以内にほとんどが入ってしまう。
政府は原発から30キロ以内の市町村に避難計画の策定を義務付けました。これは政府自身が、これらの市町村が事故が起これば被害が発生することを認定したことと同じです。にも関わらずこれらの市町村やそれらを含む府県を当事者とみなさないのはあまりに理不尽です。
この点を踏まえて、関西広域連合は「原子力防災対策に関する申し入れ」を行っています。ぜひこれを支持し、拡散していきましょう。その中で「地元」とは何かの論議をも広げて行きましょう。

 原子力防災対策に関する申し入れ
 http://www.kouiki-kansai.jp/data_upload01/1420608484.pdf

ここで述べてきたことは私たちができることのほんの一例です。
想像力を働かせていけばもっとたくさんのことができるはずです。ぜひそれぞれで思いついたことを実行に移してください。どんどんやりましょう!
大事な点は、原発問題に関しては今なお私たち民衆の側が大きくイニシアチブを握っているということです。戒めなければいけないのは国家権力を過大視してしまうことです。これはインテリの方ほど陥りやすい限界であるように思えます。
繰り返しますが、原発はもう521日まったく動いていない。大飯原発を除けばもう3年近く動いてないのです。私たちが止めているのです。このことに自信と誇りを持ちましょう。そして前に進みましょう。

3月に脱原発の大きなうねりを全国津々浦々から巻き起こしましょう!

*****

 高浜合格 九電社員「心折れそう…」進まぬ再稼働、四面楚歌の九電経営陣
 産経新聞 2015年2月12日

 原子力規制委が12日、関西電力高浜原発3、4号機(福井県高浜町)の新規制基準への適合を認めた。だが、安全審査で先行する九州電力川内原発1、2号機(鹿児島県薩摩川内市)の再稼働は、規制基準合格から5カ月が経過してもまったく見えない。九電、規制委・規制庁双方の不手際を指摘する声が上がる。(小路克明)

 「低廉で安定した電力供給は、日本経済の生命線であり、責任あるエネルギー政策を進める。原子力規制委員会が新規制基準に適合すると認めた原発は、その科学的・技術的な判断を尊重し、再稼働を進める」
  安倍晋三首相は12日の施政方針演説でこう語った。
  だが、原発再稼働の歩みは停滞している。

  「規制庁職員から連日連夜の呼び出しを受け、かなり厳しいことを言われる。正直言うと、心が折れそうです」
  東京・六本木の九電東京分室で、規制委・規制庁との折衝にあたる九電社員はこう愚痴をこぼす。
  東京分室には九電全社員の2%にもあたる260人が詰め、規制委・規制庁からのヒアリング、書類作成に追われている。それでも、再稼働は夏以降となりそうだ。

  ■4万ページが6万ページに

 川内原発が、再稼働の前提となる新規制基準に合格したのは平成26年9月だった。同年11月までに地元の薩摩川内市、鹿児島県が再稼働に「同意」した。
 一気に再稼働に突き進むとみられたが、思わぬハードルが浮上した。原発の機器の設計図など工事計画と保安規定の補正書だ。九電は規制委の指摘を受け、修正した補正書を昨年9月末に再提出する計画だったが、2度にわたって延期となり、現在に至るまで提出できていない。
 規制委の田中俊一委員長は「九電の対応の遅れを懸念している」と語る。

 これに対し、九電の瓜生道明社長は「われわれはまな板の鯉。規制委の求めに真摯(しんし)に応えていく」という姿勢を崩さない。原発再稼働という電力会社の“命綱”を握る規制委に対し、多くは語らない。
 だが、補正書をめぐり、九電の原発部門に対する規制庁側の要求は、厳しさを増している。内容だけでなく、書式を含めて細かいチェックが入り、作り直しが続く。現在計4万ページの補正書は大幅な修正の結果、6万ページにも達しそうだという。規制庁側との意思疎通の難しさを嘆く声も出る。
 そうこうしている間に、九電は民間企業として存続の危機に陥った。

 平成27年3月期の連結決算は4期連続の最終赤字となる見通しだ。債務超過が現実味を帯びる九電に、金融機関は「電気料金再値上げ」を融資条件に挙げるようになったという。
 しかし、原発再稼働を視野に入れながらの再値上げは、利用者の反発が大きい。経済再生を掲げる政府、経済産業省の理解も得がたい。
 社内に亀裂も走り始めた。書類作成が進まない原子力部門への風当たりが強くなり、将来像を社員に示せない経営陣への不満も積み上がる。
 九電経営陣は、まさに四面楚歌といえる状況だ。

  ■高浜には訴訟リスク

 高浜原発の合格を獲得した関電は、したたかだった。
 九電との折衝における規制庁の言動を逐一つかみ、自社の書類に即座に反映させている。この結果、関電は高浜原発の補正書の大半をすでに提出した。8万2千ページにも達したという。
 「川内ではなく、高浜が再稼働一番乗りではないか」。こんな観測さえ規制庁内で浮上する。

  とはいえ、高浜原発にも再稼働に向けたハードルがいくつかある。その最たる物が訴訟リスクだ。
  昨年12月、反原発団体が高浜、大飯両原発の再稼働差し止めを求めて、福井地裁に仮処分を申請した。福井地裁は同5月に、大飯原発運転差し止めを認める判決を下した裁判所だ。仮処分を認める可能性は十分にあり、その場合、関電は法廷闘争を強いられる。

  25年9月以来、国内の全原発は停止した。原発ゼロの影響は、電気料金上昇や各地域をリードしてきた電力会社の弱体化という形で表面化した。これ以上の原発ゼロは日本経済に回復不能な打撃を与えかねない。
  原子力規制委員会設置法は、第1条で規制委の目的を「原子力利用における安全の確保を図るため必要な施策を策定し、実施する事務を一元的につかさどる(中略)もって国民の生命、健康及び財産の保護、環境の保全並びにわが国の安全保障に資することを目的とする」と記す。
  福島第1原発事故を教訓にしつつ、規制委・規制庁は今こそ「安全に原子力を利用する」という原点に立ち返らなければならない。

 

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