明日に向けて

福島原発事故・・・ゆっくりと、長く、大量に続く放射能漏れの中で、私たちはいかに生きればよいのか。共に考えましょう。

明日に向けて(1279)参院選の結果から見えるもの・・・安倍政権を倒す可能性はここにある!

2016年07月13日 08時00分00秒 | 明日に向けて(1201~1300)

守田です。(20160713 08:00)

歴史的な参院選が終わりました。戦争への流れや憲法改悪への流れを食い止めんとそれぞれの場で奮闘されたみなさん、どうもお疲れさまでした。
問題はこの間の奮闘を次の展開にどうつなげるかだと思います。そのことに頭を使い抜きましょう。
そのために選挙の捉え返しを行っておこうと思います。

まず何よりも改憲勢力の3分の2席獲得を食い止められなかったことは残念ですしとても悔しいです。
改憲派の獲得議席は77。当初のラインとされた78議席はぎりぎりで阻止できましたが、非改選議員の4人が改憲派となったため、3分の2をわずかに上回ってしまいました。
これをうけて、さっそく安倍首相から選挙中はまったく出ていなかった改憲の言葉が出始めました。私たちは今後、この流れと全面対決していく必要があります。

その場合、何を捉え返しておく必要があるでしょうか。
今回の安倍与党の選挙の勝利のカギはまたしても完全な争点ぼかしでした。これはこの間の一貫したやり方です。
7月5日の高知新聞にこの点で非常に象徴的な記事が出ました。

 【参院選 土佐から】改憲への「3分の2」 高知で83%意味知らず
 2016.07.05 08:45
 http://www.kochinews.co.jp/article/32968/

高知新聞の記者たちが高知市内で100人に「3分の2」の意味を問うたところ、なんと83人が知らなかったというのです。理解していたのはわずかに17人。
これほど重要なことに8割超の人が気づかないままに選挙が行われてしまったわけです。まったくの騙しの世界です。
しかし今回の選挙ではこの「国民総騙し」という言える構造が通用しなかったところ、ほころびが見えたところも結構あり、それが野党共闘の勝利に繋がりました。

もっとも顕著だったのは沖縄です。与党の閣僚である島尻安伊子沖縄・北方担当相が、島ぐるみ共闘が推した伊波洋一氏に完敗しました。
同じく福島でも与党閣僚である岩城光英法務相が、野党共闘の増子輝彦氏に敗れました。
とても象徴的な気がします。安倍政権がもっとも強権的に襲いかかっている沖縄と、被曝地への帰還強制が行われている福島で現職閣僚が落とされたのです。

さらに一人区でも象徴的だったのは秋田をのぞく東北全県で野党共闘が勝利したことです。野党共闘はこの東北と地続きで柏崎刈羽原発を抱える新潟県でも勝利しました。
ちなみに東北と新潟は、明治維新の際に最後まで新政権に抵抗した土地柄です。會津藩を中心に奥羽越列藩同盟を形成し、抵抗線が闘われました。今でもこの地域の人々はこの戦いを「南北戦争」と呼んでいます。
このときも東北で唯一維新政府側についたのは秋田でした・・・。

その後、長い間、東北地方は日本の経済成長の踏み台になってきました。東電の福島・柏崎刈羽原発はその歴史を象徴もしています。東京に電力を供給していながら、東電の管内の外に作られているからです。
危ないことが分かっているから東京からうんと離して作り、東北電力を電源として稼動させて、遠く離れた東京に電力を送らせてきたのです。

もちろん今回の選挙で、この歴史まで意識した票はそれほど多くはないかもしれませんが、問題は東北が再び三度、棄民政策に遭おうとしていることです。
大震災からの復興も途上なのに、東京オリンピックの大嘘による獲得以降、ゼネコンの多くが東京にひきあげてしまったことに顕著なごとく、酷い切り捨て政策が行われているのです。
そればかりではありません。農業の強いこれらの地域にとって「TPP断固反対」を唱えていた自民党の政権与党になったとたんのたちまちの裏切りは、さらに棄民政策を際立たせるものになっています。

こうした状態の中で、もういい加減、自民党に騙されるのは止めようと言う流れが強まり、東北のJAの多くが伝統だった自民党推薦を止めたのでした。
今回の東北・新潟での野党共闘の秋田をのぞく勝利にはこうした流れがあったことがみてとれます。

同じくかつて満蒙開拓団をもっとも多く輩出して辛酸をなめ尽くした長野で野党共闘が勝利したことも象徴的なことのように僕には思えます。
山梨、三重、大分の勝利は、民進党がなんとか牙城を守ったものと言えると思うのですが、しかしその勝利にも野党共闘の効果が極めて強く表れていました。

実はこれら激戦が予想された選挙区を自民党は「重点区」と位置づけていました。安倍首相もこれらの県を繰り返し遊説しました。以下の12選挙区です。
青森、岩手、宮城、山形、福島、新潟、長野、山梨、三重、滋賀、大分、沖縄。
しかしこのうち惜しくも野党共闘が敗れたのは滋賀のみで11勝1敗という結果でした。その滋賀選挙区もかなり肉薄した上での惜敗でした。
もちろんこの勝利の内、幾つかは薄氷踏んだ末のものでしたが、それだけにJAが自民党推薦を止めたことが大きな作用を及ぼしたと言えます。その意味でこれらの地域では選挙に関わった人々のさまざまな努力が大きな成果に結びつきました。

そもそも参議院選の1人区は小選挙区であり、しかも農村を基盤としていてもともと自民党に有利な選挙区です。このため野党共闘が成立しなかった前回選挙ではなんと与党の29勝2敗という結果をもたらしました。
こうした民意の反映しない選挙のあり方そのものが今後問い直されるべきですが、今回その1人区で11議席も野党共闘が獲得できたのは極めて大きなことです。
端的に言って保守層の一部が野党共闘側にまわったのです。このことをしっかりと見据えておくことが大事です。

さて今回はもう一つ、極めて特徴的なことがありました。参院選と同時に行われた鹿児島知事選で、現職の伊藤祐一郎氏を脱原発派の三反園訓氏が破ったことです。これまた凄い。
三反園氏は「熊本地震を受け、原発をいったん停止して再検査し、活断層の調査をすべきだ」と訴えて当選しました。これで稼働原発が再びゼロになる可能性も出てきました。
明らかに熊本・九州地震のあの最中に、川内原発が停められなかったことへの不安、怒りがこの結果に結びついたのです。大分の勝利にもこれが幾分かは影響していたと思われます。
残念ながら野党共闘はまだ原発ゼロ共闘にまで発展はしていないので、熊本や鹿児島での参院選には・・・争点ぼかしによって・・・十分に波及しきらなかったのでしょう。

こうしてみると安倍政権の悪政による被害がより顕著に見えだしているところでとくに野党共闘がうまく機能したと言えることが見えてきます。
この点から見えてくることは、安倍与党の戦略は徹底した争点ぼかしによる議席の獲得ですが、矛盾が表面化しているところではそれが通用しなくなっているということです。
とくに与党を支持してきた人々からの離反が始まっていることが極めて重要です。

だとすれば大事なポイントは、こちらからどんどん積極的に安倍政治の矛盾を明らかにし、争点を作っていくことだということです。
とくに安倍政権の狙う憲法改悪ステップでは国民投票というハードルがあるわけで、こればかりは争点隠しができません。この点をしっかりと見据えておく必要があります。
もちろん安倍政権はその点を踏まえて、「受け入れやすいものから」行ってくるでしょう。あるいは緊急事態条項がそれでしょう。
しかしそうであれば今から、こちらから、この条項がどんなに民主主義に反するものであり、なおかつ緊急事態への対応そのものとしても役に立たないものであるかを積極的に明らかにすることが大切です。

この点でもぜひとも注目しておくべきことは、すでに東北各県の知事たちが、東日本大震災の教訓として「こんな非常大権はいらない。むしろ地方自治体の権限を上げて欲しい。その方がリアルな対策がとれる」という声をあげていることです。
僕自身、災害対策に積極的に取り組んできているので、その点のリアリティからもこうした発言を増やしていきたいと思います。
これも含めて「改憲」論議を与党のペースでやらせず、こちら側からどんどん争点を作りだしていくこと、そのための大きな運動を草の根的に巻き起こしていくことが重要です。

また「国民投票」ばかりでなく衆院解散-総選挙も近いうちに行われる可能性がありますが、これに向けても今から積極的な準備をしていきましょう。
数ある小選挙区で再び野党共闘を成立させることが大きなポイントです。
そのために今回の11勝がどのように実現されたのか、また滋賀を含めていかに肉薄した選挙戦が展開できたのか、学ぶべき点を積極的に交流しあい、互いの力に変えていきましょう。

安倍政治は大きくほころび始めています。冷静に分析すれば今回の選挙にもそれが象徴されていたことが分かります。
このことをしっかりと見据えて、ただちに次に向かって歩み始めましょう!

続く

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守田敏也 MORITA Toshiya
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[著書]『原発からの命の守り方』(海象社)
http://www.kaizosha.co.jp/HTML/DEKaizo58.html
[共著]『内部被曝』(岩波ブックレット)
https://www.iwanami.co.jp/cgi-bin/isearch?isbn=ISBN978-4-00-270832-4

コメント (3)
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