明日に向けて

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明日に向けて(1994)そもそも「国」とは幻想的な共同体だ!支配階級の利害が往々にして「国の利害」と言い換えられている 被爆国論の再考ー3

2021年02月26日 22時00分00秒 | 明日に向けて(1901~2100)

守田です(20210226 22:00)

被爆国論再考の3回目です。起承転結の「転」をなす今回、国の幻想共同性について考察します。

そもそも国とは幻想的な共同体だ

これまで日本のことを「被爆国」というのはおかしいのでは?と論じてきました。とくに大日本帝国政府は被害者とはとても言えません。日本国民と住民がアメリカに虐殺され続けたことへの責任を負っています。
今回はさらにもう一歩、深めましょう。そもそも国とは幻想的な共同体で、全成員の共通利害などほとんどありません。むしろ戦争はいつも支配的階級の人々の利害のために起こされ、被支配階級・下層の民衆が戦場に立たされてきたのです。
その際、支配層は自分たちの利害を「国」のものと大義づける。そして本当はそんな利害など、共にしていない民衆が動員されるのです。

原爆のことから少し離れますが例えば「徴用工」問題もそうです。あれはもともと国家間の問題ではない。あのとき徴用された韓国の方たちは日本臣民とされていて、日本の法律で徴用されたのです。
しかも未払いに責任があるのは、当時商工業大臣として徴用の指揮を執った岸信介氏らでした。賃金を払わなかったのは麻生炭鉱などの財閥でした。なんのことはない。岸-安倍家や麻生家の問題が「国家」の問題にすり替えられている。
そうして日本民衆が「お前たちの権利が侵害されている」と騙されてきたのです。そうではない。むしろ元徴用工への賃金未払いは今の日本社会の非正規雇用にもつながっている。元徴用工と私たちの利害こそが重なっているのです。

こうしたことを見事に描いた小説にレマルク著『西部戦線異状なし』があります。映画化もされていますが、第一次世界大戦において国の命令のもと、戦いたくもない他国民との殺し合いに動員された兵士たちの苦悩が描かれています。少しセリフを拾ってみましょう。
ジャーデン「どうして戦争が起こる?」クロップ「それは、ある国が別の国を攻撃するからさ」ジャーデン「国がどうやって別の国を攻撃するんだ?ドイツの山がフランスの野原に怒るのか?」
クロップ「熱病みたいなものさ。特に誰も戦争なんて望んでないのに、突然起こる。俺たちも望んでない。イギリス人も望んでない。でも、俺たちはここで戦ってる」 (二つは別々のシーンです)


階級的なものの見方が必要だ

ここで問いたいのは私たちには「階級的なものの見方」が必要だと言うことです。幻想的共同性から自由になり、支配階級に騙されないようにしなくてはいけない。
階級的なものの見方とは、資本主義の中で大きく人々が資本家階級、労働者階級、地主階級に分かれていることに基づき、被支配階級の立場から国家を捉え返す見方のこと。
区分けにはボーダレスなところがつきまとうので、現代では1%の国の富を独占するものと99%の私たちと捉えた方が良い。橋本健二氏は『新・日本の階級社会』の中で4.3%の資本家階級が日本を牛耳っていると指摘しています。

ただし支配階級に騙され、ないしは強制されたのだとしても、それで被支配階級が他国に侵略し、他国の人々を殺め傷つけてしまった場合、私たち民衆もまた道義的責任を背負わざるをえません。
その点で私たち日本民衆はアジアの人々へのかつての侵略を、自分事として捉え返していかなければならないし、とくに朝鮮半島についていえば、独立後の南北に分かれた戦争の勃発にもいろいろと責任があることを考えなくてはいけない。
日本の平和運動の諸先輩たちは、この点について前進を重ねてくれました。懸命になって日本の侵略のあやまちを捉え返そうとしてきた流れがあります。なお継続が必要ですが、僕は諸先輩方に感謝を述べたいです。

ただその先をもっと進めなければと思うのです。日本民衆もあまりの苦しみを背負わされたのです。とくに戦争で本当にひどい目にった。兵士となった庶民も虐待されつつ人殺しに駆り出された。多くの兵士がショックで拒食症で死んでいきました。
しかしながら諸先輩たちは、日本の侵略責任の捉え返しに一生懸命でそこまで目がまわらなかった。しかしいま私たちはそこにも大きく目を向ける必要があります。それができてこそ、過去の過ちの捉え返しは私たちの幸せの拡大につながるのです。
ちなみに日本と国交を正常化したときの中国共産党政府はこうした観点に立っていました。「日本民衆もまた日本軍国主義の犠牲者だった」という観点から戦時賠償の権利を返上してくれたのです。

私たちも階級的なものの見方にたって原爆の被災を捉え返さなくてはいけません。日本政府の責任をきちんと追及しなくては。だからこそ「被爆国」などという政府に都合の良い言い方を克服しましょう。
そして日本政府に戦争を起こし、アジアと日本の民衆を苦しみにおいやり、被爆すらさせた責任に基づいて核兵器禁止条約に参加せよと迫らなければ。
国の共同幻想性から自分たちを解き放ち、核なき未来に向けた新たなステージを切り開きましょう。

続く

#被爆国の再考を #幻想的共同体 #階級的なものの見方 #西部戦線異状なし #支配階級に騙されるな

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