7日(日)。わが家に来てから今日で2493日目を迎え、「聞く力」を掲げる岸田文雄首相は就任後の10月9日、車座対話の第1弾で新型コロナウイルス患者を受け入れる東京都内の病院を訪れ、「コロナの重症患者に対応するのがすごく不安」と訴える新人看護師に、「政治にしてもらいたいことはありますか」と言葉をかけた というニュースを見て感想を述べるモコタロです
岸田首相の言葉を聞いて 新人看護師さんは ますます不安を募らせたと想像します
新文芸坐でマルセル・カルネ監督、ジャック・プレヴェール脚本による1945年製作フランス映画「天井桟敷の人々」(4K修復版・モノクロ・190分)を観ました
物語の舞台は1830年代、劇場が立ち並ぶパリの犯罪大通り 女たらしで無名の俳優フレデリック・ルメートル(ピエール・ブラッスール)はパリの街角で女芸人ガランスに一目惚れする
饒舌に愛を語るが軽くあしらわれる
ガランス(アルレッティ)は悪漢の友人ピエール・ラスネール(マルセル・エラン)と無言劇団「フュナンビュール座」のパントマイムの余興を楽しんでいた
そこで、ピエールは余興に見入っていた裕福そうな紳士から懐中時計を巧みに盗み去る
そのことで濡れ衣を着せられたガランスだったが、盗難の一部始終を芸人のジャン・バチスト(ジャン=ルイ・バロー)がパントマイムによって再現し、彼女の疑いは晴れる
それがきっかけになり、バチストは恋に目覚める
一方、フレデリックは公演中のトラブルに際して代役を演じたことにがきっかけで、「フュナンビュール座」で俳優として働くことになる
その後、バチストは偶然にもガランスと再会するが、内気な彼のせいで恋が成就しない
そんな彼だが、パントマイムが評判になり、フレデリックとガランスも同じ舞台で共演するようになる
ある日、舞台上のガランスを見たモントレー伯爵は彼女の虜になり財力でガランスを口説く
しかし、彼女は申し出を断る。その後、ガランスはまたしてもピエールのせいで刑事の取り調べを受け、殺人未遂の共犯者として逮捕されそうになり、ついに伯爵に助けを求めることになる
(以上第1幕「犯罪大通り」)
それから数年後、ガランスは伯爵夫人として暮らし、一方バチストは座長の娘ナタリー(マリア・カザレス)と結婚し男の子を授かっている フレデリックは「フュナンビュール座」を辞め、別の劇団に移ったが、相変わらず女遊びに明け暮れ、借金取りに追われたりしていた
フレデリックはバチストのパントマイムを観に行った劇場でガランスと再会し、バチストとガランスを再会させようとするが、結局2人は会えなかった
その時バチストはガランスが彼の芝居を観に来ていると聞き、本番中に舞台を飛び出したが会えず失意に暮れていた
その後、バチストはフレデリックの芝居「オセロ」を観に行ったときようやくガランスと再会、2人は一夜を共にする
一方、財力でガランスを手に入れたものの、彼女からは愛してもらえない伯爵は、ガランスの思いがフレデリックに向けられていると勘違いし、嫉妬の矛先をフレデリックに向けパーティーの席上で決闘を申し込む
そこにピエールが割って入り、カーテンの向こう側で逢引していたガランスとバチストを2人に見せる
激怒する伯爵にピエールは不敵な笑みを浮かべてその場を去る。翌日、謝肉祭の喧騒の中、ピエールは伯爵を刺し殺す
そのころ、ナタリーは夫バチストの定宿を訪ね、ガランスと密会している現場に遭遇する
夫婦の会話を聞いたガランスは状況を察し、一人部屋を出ていく。バチストは祭りの喧騒の中、ガランスを追うが彼女は馬車で旅立つ
何事もなく謝肉祭は続いている(以上第2幕「白い男」)
この映画は、第2次世界大戦の最中、ナチスドイツ占領下のフランスで約2年の歳月をかけて製作されました 映画のパンフレットに映画評論家・目白大学准教授の杉原賢彦氏が本作の完成までを次のように書いています
「時はドイツの占領下。撮影初期こそまだしも平和なニースのヴィクトリーヌ・スタジオだったが、やがてパリ18区のフランクール・スタジオで、そして3区はタンプル大通りに実在するデジャゼ劇場で撮影続行 とはいえ、その成り行きは困難だらけだったと伝わっている
ひっきりなしの空襲警報はおろか、占領下ゆえの不自由に悩まされ続ける
撮影に欠かすことができないカメラと照明を停電が襲い、フィルムの調達すらままならず、おまけに予算は超過のし放題というありさま
かてて加えて、ナチスに目を付けられたら最後というユダヤ系のクルーたちをどう匿い守ればよいのやら
音楽のジョゼフ・コスマ、美術のアレクサンドル・トローネル、この映画に決して欠かすことができない二人はともにユダヤ系であり、その名を隠しての、まさに決死の撮影参加だったのだ
」
まさに「奇跡の映画」と言ってもよいかもしれません
原題は「Les enfants du Paradis」(「天国の子どもたち)です 邦題にある「天井桟敷」とは、劇場で最後方・最上階の天井に近い場所にある観客席のことを指します
「天井桟敷」は舞台から遠く 観にくいので安い料金設定になっています
この席に詰め掛けて無邪気に声援や野次を飛ばす最下層の民衆は、子どものように賑やかだったことから「天国の子どもたち」と呼ばれていました
また、第1幕の「犯罪大通り」とは、かつてパリに存在した地域の通称で、殺人や拷問が頻繁に行われる芝居(メロ・ドラマ)を上演する劇場が立ち並んでいたことからきています
現在はパリ改造により消滅しています。第2幕の「白い男」とは、バチストの舞台衣装を指しています
パントマイム役者のバチストや、シェークスピア俳優のフレデリックは実在の人物をモデルにしているそうです またバチストを演じたジャン=ルイ・バローのパントマイムが半端なく上手いと思ったら、1930年にシャルル・デュランの下で演技を学び、35年からはエチェンヌ・ドゥクルーにパントマイムを学んでいるとのことです
パントマイムのプロですね
音楽はジョゼフ・コスマとモーリス・ティリエが手掛けていますが、演奏はコンセルヴァトワール管弦楽団、指揮は「幻想交響曲」の決定盤でお馴染みのシャルル・ミュンシュです
この映画、いつか観たことがあると思っていましたが、今回新文芸坐で観て まったくストーリーが思い出せなかったので、今回初めて観たのかもしれないと思い直しました なお、今回公開された作品は「4K修復版」によるもので、モノクロ映像ながら画像は鮮明で、音割れもありません
この「4K修復版」はフランス本国では2011年に完成し、その年の5月のカンヌ国際映画祭で初めて披露されましたが、日本では2020年公開となりました
「天井桟敷」(4K修復版)は新文芸坐で明日=8日(月)10:30から13:55まで(開場は10:10)、12日(金)19:00から22:25まで(開場は18:40)の2回上映されます 第1幕と第2幕の間に10分間の休憩があります。入場料は一般:1800円、学生・友の会・シニア:1500円です