人生の目的は音楽だ!toraのブログ

クラシック・コンサートを聴いた感想、映画を観た感想、お薦め本等について毎日、その翌日朝に書き綴っています。

思い込み、誤解が殺人の連鎖を呼ぶ~道尾秀介著「球体の蛇」を読む

2013年01月11日 06時56分32秒 | 日記

11日(金)。昨日、本日から当ビル1階ホールで展示する全国の元旦号紙面を東京に送る作業のため、朝から横浜の新聞博物館に出かけました。JR関内駅から博物館に向かう途中、横浜球場の公園にハトが何羽か餌を求めて歩いていました

 

          

 

これを見て、かつて元の職場で働いていた頃の日比谷公園での出来事を思い出しました。国際部の新人・G君に「ハトが何羽か無造作にたむろしている状態を英語で何と言うか?」とクイズを出しました もちろんトンチです。彼はウーンと唸ってしばらく考えていましたが、なかなか答えが出てきません。しばらくして、私とG君とが同じタイミングで次のように回答を叫びました・・・・・・・「ハット・ランダム

という訳で、本日から今月末日まで(日曜・祭日を除く)、当PCビル1階の玄関ホールで全国100紙以上の元旦号紙面を展示します。入場無料です。ふるさとの新聞紙面を是非ご覧ください

 

  閑話休題  

 

道尾秀介著「球体の蛇」(角川文庫)を読み終わりました 道尾秀介の本はこのブログで何度も取り上げているのでお馴染みですね

高校生の友彦は、訳あって両親と別れ隣の橋塚家(白蟻消毒業)に居候しています。ある日、友彦は白蟻駆除のアルバイトで訪れた屋敷で、橋塚家の今は亡きサヨに似た年上の女性(智子)に遭遇します彼女は屋敷の老人の元に自転車で通ってきているらしいことを突き止め、深夜、屋敷の床下に忍び込んで上の部屋の様子を窺うようになります 床上からは苦しそうな彼女の泣き声が聞こえます。数日後、屋敷から火災が発生、老人は焼け死にますが、その夜、彼は彼女に出会い「あなたのおかげで助かったの。あなたが、あの人を殺してくれたおかげで」と言われ、当惑します 彼は、智子こそ犯人ではないかと疑います

その事件をきっかけに、友彦は智子と付き合うようになりますが、智子は過去に自分が放ったタバコの火が、偶然、キャンプのテントに燃え移って中にいた子供がやけどを負った、と告白します 友彦は、そのテントの中にいたのがサヨで、それを苦に彼女が自殺したと智子を責めます その結果、智子は自殺を図ります。しかし、サヨの妹ナオの告白によると、サヨは自分でテントに火を放ったというのです。果たしてナオの言うことは本当のことなのか。そもそも智子は放火をしたのか、しなかったのか・・・・・・

誤解が誤解を呼んで、次々と犠牲者が出ます。思い込みや誤解が殺人の連鎖を呼ぶ悲しい物語です。智子の幻影が目の前に現れる最後のシーンが印象に残ります

  

          

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メンデルスゾーンのピアノ六重奏曲を聴く~JTアートホール「音楽家からの年賀状」コンサート

2013年01月10日 06時59分41秒 | 日記

10日(木)。昨夕、虎の門のJTアートホール”アフィニス”で「音楽家からの年賀状」コンサートを聴きました 今年のコンサート聴き初めで、昨年12月22日以来18日ぶりです コンサートとコンサートの間がこれ程空いたのは久方ぶりです

プログラムは①コダーイ「二重奏曲」、②メンデルスゾーン「ピアノ六重奏曲ニ長調」、③シューベルト「ソナチネ第1番ニ長調」、④シューマン「ピアノ五重奏曲変ホ長調」です この公演はソリストにハープの吉野直子やチェロの向山佳絵子などが出演するため人気があり、毎年チケットを取るのが困難なのですが、今回は発売と同時に手配したため何とか席を押さえることが出来ました

自席は16列5番、センターブロック通路側ですが、最後列。会場は文字通り満席です

ヴァイオリンの徳永二男とチェロの向山佳絵子が登場して、1曲目のコダーイ「ヴァイオリンとチェロのための二重奏曲」が始まります この曲はハンガリーの民謡などを研究したコダーイの曲らしく、民族色豊かな曲でした

この日の目当ては2曲目のメンデルスゾーン「ピアノ六重奏曲ニ長調」です 演奏に先立って徳永二男が次のように挨拶しました

「私が持っている楽器はいつもより大きいと思いませんか?そう、これはヴィオラです。メンデルスゾーンはこの六重奏曲をヴァイオリン2丁ではなく、ヴィオラを2丁にして書いたのです 私がヴィオラを弾くのは35~6年ぶりのことです この楽器はN響のメンバーから借りてきたもので、このコンサートが終わったらすぐに返さなければなりません(笑)。演奏後の休憩時間に、ホワイエでシャンパン、赤・白ワイン、ジュースがどれでもフリーで飲めますのでご堪能ください(会場・ニコニコ顔)」

編成は2011年のヴィエニャフスキ国際ヴァイオリンコンクールで第2位を受賞した小林美樹が第1ヴァイオリンを務め、徳永二男とN響の元首席奏者・川崎和憲がヴィオラ、向山がチェロ、N響の首席奏者・吉田秀がコントラバス、2007年のロン・ティボー国際コンクール第1位の田村響がピアノという布陣です 女性陣は小林が白、向山が赤のドレスです。新春コンサートに相応しい赤白の憎い演出です

ここ1週間、事前にCDで”予習”してあったので、すべての楽章のメロディーが頭に入っています しかし、CDで聴くのと生で聴くのとでは天と地との差があります。目の前で演奏される音楽は何と豊かな響きでしょうか この曲はメンデルスゾーンが15歳の時に作曲したといわれていますが、早熟の天才を感じさせる見事なアンサンブルでした メンデルスゾーンの好きなところは、”前へ、前へ”という推進力ですが、そういう長所がよく現われた演奏でした

休憩時間には赤ワインをいただきました 不届き者はお代わりをしているようでしたが、私はそういうアサマシイことはしません こういうのを”エエカッコシイ”とか”やせ我慢”とか言います

休憩後の第1曲目はシューベルト「ソナチネ第1番」です。この曲はもともとヴァイオリンとピアノのために書かれましたが、この日は、ピアノの代わりにハープで演奏されました ヴァイオリンの徳永二男と、黒とグレーの縦じま模様のシックなドレスに身を包まれた吉野直子が登場します これは、吉野直子のハープに尽きます まるで最初からハープのために書かれた曲のように演奏します JTアートホールは、この1曲の演奏のためだけに吉野直子を呼んでしまうのですから、すごいと思います

最後のシューマン「ピアノ五重奏曲変ホ長調」は1842年9月に数週間のうちに集中的に作曲されたと言われています 初演はクララ・シューマンがピアノ独奏パートを担当し1843年1月にライプツィヒで行われました

編成は向かって左から徳永、小林、川崎、向山、後ろに吉田、ピアノの練木繁夫という布陣です 第1楽章はチェロがよく歌い、第2楽章はヴィオラがよく歌っていました 第3楽章のスケルツォはどの楽器も雄弁に語っていました。そして最後の第4楽章「アレグロ」は、まさに”天翔けるシューマン”といった感じでノリにノッていました

プログラムにアンケートが挟み込まれていたので、希望曲目としてメンデルスゾーンの「八重奏曲」と「ピアノ四重奏曲」を書いて、「ワインごちそうさまでした。おつまみがあるともっと良かったと思います」とアサマシイことを書いてしまいました もっと建設的なことを書いておけばよかったと反省しています

今年初めてのコンサートでしたが、幸先の良いスタートを切った、といったところです 今年も一期一会を大切に1回でも多く生のコンサートを聴いていきたいと思います

 

          

 

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ショスタコーヴィチの第4交響曲の謎~デイヴィッド・ベニオフ著「卵をめぐる祖父の戦争」を読む

2013年01月09日 06時59分47秒 | 日記

9日(水)。昨夕、地下のRでいつもの3人で飲んで、その後、2人は六本木へ、私は都内某所へ 11時半まで飲んでいたので、今朝は朝から頭が痛くて頭痛でガンガンします。すっごいダブっているような気がしますが思うように頭が回らないのです 週の真ん中にしてもはや絶不調

さて、大間のマグロの話です  昨日の日経朝刊に「マグロ初セリ 破格高値に違和感の声 宣伝効果にかなうが・・・・・」という記事が載りました 記事によると、

「築地市場の初セリで大間産のクロマグロが1匹1億5,540万円の史上最高値を付けた 近年、加熱し続ける初セリに関係者も困惑気味だ。過去数年同様、セリではすし店をチェーン展開する2社が競り合った。落札したのは「すしざんまい」を運営する喜代村。1貫当たりの原価は2万~3万円だが同店では128円からと定価で提供した マグロ1匹の収支としては大赤字だが、『マスコミでの露出を広告宣伝費に換算すれば数億円以上。初セリの値段はマグロそのものより、最高値でセリ落とすことによって生じるイメージ向上など様々なマーケティング価値に払われている セリのルール自体は守られているが、魚自体の価値を決めるというセリ本来の趣旨を逸脱してしまった』と電通総研の四元主席はみる」

ここまで読むと、たかが1匹のマグロに億単位の値段を付けることの異常さばかりが目立ちますが、その後の「最後まで競ったのは香港資本のすしチェーンだった」という行を読むと、「外国資本に落とされてなるものか」という日本のすしチェーンの意気込みを感じます もっとも、このチェーンは来年のセリからは撤退するとのこと。来年の今頃、現在を振り返って、関係者はどんな反応を示すのでしょうか 「あの時はセリざんまいだった。大間ちがいだったかなぁ。セリの最高値は去年で一貫の終わり」とでも言っているでしょうか

 

  閑話休題  

 

デイヴィッド・ベニオフ著「卵をめぐる祖父の戦争」(ハヤカワ文庫)を読み終わりました 著者のベニオフは1970年、ニューヨーク生まれ。この本は2008年に発表後、全米で50万部を超えるベストセラーを記録したとのことです

17歳のレフは、ある夜、キーロフ5階消防団の団長として空の見張りをしていると、撃墜されたドイツの爆撃機から落下傘で脱出したドイツ兵が落ちてきます。そこへ駈け付けて、すでに死亡しているドイツ兵の所持品を漁っていると、ソ連軍の警邏兵に発見されてしまいます 彼らの行為は略奪罪に当たるのです。脱走兵のコーリャとともに捕えられたレフは、秘密警察の大佐の元に連れて行かれます。大佐から、娘が結婚するにあたってウエディング・ケーキを作るための卵を1ダース、1週間以内に調達してくるようにという意外な指令を受けます

こうして、レフとコーリャは1ダースの卵を求めてレニングラードを離れ、各地を転々として敵陣内に潜入していきます。敵を目前として生きるか死ぬかの経験をしながら、やっと卵1ダースを手に入れ、大佐の元に戻ってきますが、コーリャは息が途絶えていました。しかも、他からも卵は調達されていたのでした

このストーリーが暗くないのは、コーリャの楽観的で明るい性格のためです 危機に直面してもジョークですり抜ける度胸があるコーリャがいたからです

ところで、レフとコーリャがロシアの作曲家ショスタコーヴィチについて語る場面があります

コーリャはわしをじろっと見て、舗道に唾を吐いた。

「ショスコーヴィチはもう3か月も前に疎開させられたよ

「それは嘘だ。ショスタコーヴィチはそこらじゅうのポスターに載ってるじゃないか。あの消防監督官のヘルメットをかぶって

「ああ、彼は偉大な英雄だ。ただ、今はクイビシュフで、マーラーから盗んだ曲を口笛で吹いているだけだ」

「ショスタコーヴィチはマーラーから盗作なんてしてないよ

「きみはマーラーの肩を持つものとばかり思ったけど」とコーリャはわしを見下ろして言った。「異教徒よりもユダヤ人の方がいいんじゃないのかい?」

「ふたりは対立していたわけじゃない。マーラーは偉大な曲を書いたよ。でも、ショスタコーヴィチも偉大な音楽を生み出している

「偉大だって?ははっ。あいつは金儲け主義の盗っ人だ

「君は馬鹿だな。音楽のことは何にも知らないんだね

この会話でコーリャがレフに「異教徒よりもユダヤ人の方がいいんじゃないのかい?」と訊いているのは、レフはユダヤ人なので、同じユダヤ人であるマーラーの方がいいんじゃないのか、と言っているのです

もう一つ。コーリャが「ショスタコーヴィチはマーラーから盗んだ曲を口笛で吹いているだけだ」と言っているのは、多分、ショスタコーヴィチの「交響曲第4番ハ短調」のことを指しているのではないかと思われます ショスタコーヴィチはこの第4番を作曲中、マーラーの作品に熱中しており、彼の手元にはマーラーの第3交響曲と第7交響曲のスコアが置いてあったという証言があります ショスタコーヴィチは先達作曲家のパロディを作るのが得意でしたが、この第4番でもマーラーの第1交響曲などから引用したりパロディにしたりしています

1936年1月~2月に歌劇「ムツェンスク郡のマクベス夫人」がソヴィエト共産党機関紙「プラウダ」で批判され、ショスタコーヴィチはこの第4交響曲が当局の意向に沿わないことを恐れたためか、最終リハーサルまで決まっていたにも拘わらず、初演を撤回してしまいました このため初演は25年後の1961年12月まで待たなければなりませんでした

この本からはそんなことも読み取れます

 

          

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ラヴェル「亡き王女のためのパヴァーヌ」が流れる~映画「キリマンジャロの雪」を観る

2013年01月08日 07時00分40秒 | 日記

8日(火)。昨日は仕事始めでした。当社恒例の社員だけの新年昼食会が記者クラブで開かれ、和食をいただきながら歓談しました

昨日の朝日朝刊に「”木枠が奏でるリアルな森の音 アプリ介し生中継」という記事が載りました 記事によると、

「JVCケンウッドは今春から、季節や天候で移り変わる”森の音”をリアルタイムで聞くことのできるサービスを始める。岐阜県高山市と宮崎県諸塚村の山中に仕掛けたマイクで拾った音が、木製スピーカーから直接流れる仕組み スピーカーはさいころ状の木枠で、栗の木を使い木工職人が一つずつ手作りした。森の音はインターネットで24時間配信される 利用者はスマートフォンなどに専用アプリをダウンロードし、無線通信でスピーカーに送り、楽しむ。アプリの利用には毎月の利用料が必要になる

とあります。これはグッド・アイデアだと思います 精神の安定のためにはいいツールです ということで、スピーカーの値段を確かめると、1辺31センチの大型が30万円、13.6センチの小型が6万円前後とのこと。きっぱり諦めました やっぱり、私は音楽を聴いていた方が幸せです

 

  閑話休題  

 

飯田橋のギンレイホールで映画「キリマンジャロの雪」を観ました 2011年、ロベール・ゲディギャン監督のフランス映画です

ミシェル(ジャン=ピエール・ダルッサン)とマリ・クレール(アリアンヌ・アスカリッド)は港町マルセイユに住む結婚30周年を迎える熟年夫婦です 夫のミシェルは労働組合の委員長として労働条件の改善に尽力してきました 一方、妻のマリ・クレールは正義感の強い夫を支えてきました。子供たち、孫たちに囲まれ幸せな毎日を過ごしていた二人ですが、ミシェルがくじ引きで職を失い、さらに、息子たちが結婚30周年のお祝いにプレゼントしてくれたアフリカ行きの航空券と現金が強盗にあって持ち去られてしまいます 犯人はミシェルと一緒にくじで職を失った同僚の青年だったのです。ミシェルは警察に通報し、青年は逮捕されますが、青年には幼い弟二人がいて、父親はかってに出ていき、母親は滅多に家に帰ってこない複雑な家庭だったのです 青年は借金の返済のため、仲間にかどわかされて犯行に及んだのです。それを知ったミシェルとマリ・クレールは、青年が牢獄から出てくるまで弟たちの面倒をみることを決意します

この映画は、厳しい状況に置かれても人を思いやることの大切さを描いたヒューマンドラマですが、さて、強盗に入った犯人の家族を引き取って育てるなんて本当に出来るのでしょうか とりわけ、今の世知辛い日本に当てはめてみてどうでしょうか

この作品はヴィクトル・ユゴーの長編詩「哀れな人々」から着想されたとのことです また、「キリマンジャロの雪」というタイトルは、ヘミングウェイの短編小説からとられたとのことですが、フランスで大ヒットしたシャンソンのタイトルにもなっているそうです

さて、映画を観ていていつも気になるのは音楽です。ミシェルとマリ・クレールがチラシ情報紙を配る時に、聴き覚えのあるメロディーが流れてきました 優しさに満ちていて、ちょっぴり哀しみを帯びた旋律・・・・ドビュッシーか?・・・・違う・・・・ラヴェルか?・・・・「ダフニスとクロエ」か?・・・・いや、違う・・・・分かった ラヴェルの「亡き王女のためのパヴァーヌ」だ

この曲は、後のシーンでも何度か流れてきて、この映画のテーマミュージックのように使われていますこの曲はラヴェルがまだパリ音楽院に在学中の1899年に作曲されたピアノ曲を、11年後の1910年にオーケストレーションしたものです 「パヴァーヌ」というのは、16世紀の初期に宮廷で流行した舞曲で、Pavoというのはラテン語で「孔雀」という意味を持ち、この踊りはあたかも孔雀のように高雅に、しかも威厳を持って踊られます 一方「亡き王女」についてラヴェルは「単なる修辞句に過ぎない」と言っています。

この映画で「亡き王女のためのパヴァーヌ」が使われたのは、曲の持つ意味よりも、優しくも哀しいメロディーの美しさで選んだのだと思います。この映画にぴったりの選曲だと思います

 

          

 

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”非日常”を思う~映画「星の旅人たち」を観る

2013年01月07日 06時53分10秒 | 日記

7日(月)。9連休最終日の昨日、飯田橋のギンレイホールで映画「星の旅人たち」を観ました エミリオ・エステヴェス監督による2010年、アメリカ・スペイン合作映画です

眼科医トム(マーティン・シーン)のもとに、ある日、一人息子ダニエル(監督自身が出演。マーティンの実の息子)の訃報が届きます 彼は世界を見たいと言ってキリスト教三大聖地の一つスペイン北西部サンティアゴ・デ・コンポステーラ(”星の平原”と呼ばれる)への巡礼の旅の途中で事故死したのです。父子はいつも対立してきた関係で、トムは息子が何を思って巡礼の旅に出たのか理解できません ダニエルの遺志を継ぐためトムは息子の遺灰をリュックにつめ、ダニエルが成し遂げられなかった巡礼の旅に出ることを決意します 彼は行く先々でダニエルの遺灰を置いていきます。旅の途中、減量のために巡礼しているオランダ人・ヨスト(ヨリック・ヴァン・ヴァーへニング)に出会い道連れになります そして、宿泊所で喫煙癖が止められないカナダ人女性のサラ(デボラ・カーラ・アンガー)に出会います。さらに、草原で作家希望で現在旅行ライターのアイルランド人・ジャック(ジェームズ・ネスビット)と出会い4人の旅が続きます 途中、トムのリュックが少年に盗まれる事件があったり、4人の間で喧嘩もありますが、巡礼の旅を達成し、最終的には海に遺灰を撒き、息子ダニエルの遺志を達成します

この映画はスペインの山岳地方を巡って旅を続ける”ロードムービー”です 東京に居ながらにして、スペインを旅する気分が味わえ、いつかスペインを旅してみたいという想いに駆られます

この映画を観ていて、ふと感じたのは「自分はなぜ映画を観るのだろう」ということでした。映画だけではなく、コンサートに行くことも同じ、読書することも同じです。その答えは”非日常を求めて”ということになるでしょう ”日常生活から断絶し、まったく違う環境に自分を置く”ということです。もっとも、私の場合は、どれも回数が多いので”非日常”ではなく”日常”になってしまっていると言えなくもないですが いずれにしても”日常生活”に流されて毎日を何気なく過ごすことは私には出来ません

 

          

 

映画の帰り、年が明けてからまだ初詣に行っていないことを思い出して、地元の高岩寺(”とげぬき地蔵”で有名)に参拝してきました 6日とは言え、日曜日ということもあってか、たくさんの人出がありました。日本人は信心深いのですね

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ガランチャ最高!~METライブビューイング、モーツアルト「皇帝ティートの慈悲」を観る

2013年01月06日 06時57分51秒 | 日記

6日(日)。昨日の日経朝刊のコラム「文化往来」に「”レコード・アカデミー賞”半世紀の節目」という記事が載りました 要約すると、

「1年に1回、日本のレコード会社から発売されたクラシックのレコード・CDを顕彰する”レコード・アカデミー賞”(音楽の友社主催)が50回目という節目を迎えた この間、録音媒体のあり方が大きく変わり、クラシックでもCD不振が叫ばれてきたが、それだけに同賞の責任は重くなったといえるのではないか。同賞には現在の選定委員約30人のうち5人が設立当初から関わっているという・・・・・・最近の新譜が少ないCD事情を反映して審査環境は厳しさを増しているようだ レコード会社の再編が進み、今ではオーケストラやソリストの自主レーベルが増えている。過去の名盤も高品質のCDや廉価盤として続々と再発売される。何を買うべきか迷う聴き手も少なくないはず。”レコード・アカデミー賞”の存在意義は確実に高まっている

記事にある通り、録音媒体のあり方は大きく変わってきました 長く続いたLPレコード時代(この時代に発刊された音楽の友社の「レコード芸術」誌が”レコード・アカデミー賞”を発表。さらにこの時代にモノラルからステレオへと変わった)を経て、CDの時代がとって代わります 同時に映像ではビデオ・テープ(β方式対VHS方式)からレーザー・ディスクへ、さらにDVDに変わっています

私もかつては「レコード芸術」誌の定期購読者でした。今でも玄関の靴箱の上には1995年から2000年までの「レコード芸術」誌が並べられています 世紀が20世紀から21世紀に代わり、所有CDも4,000枚を超えたのを機に、私は定期購読を止めました このころから徐々にコンサート重視に傾きつつあったのです ”本当の感動はCDからは得られない。生きている限り、2度と同じ演奏が聴けない生のコンサートを1回でも多く聴くべきだ”、”10枚のCDは1回のコンサートにしかずという方針に転換していったのです 

したがって、今では”レコード・アカデミー賞”でどのCDが大賞を取ったのかということにはまったく興味がありません CDが欲しくなった時は直接、新宿や渋谷のタワーレコードに行って、片っ端から”クルージング”して買うようにしています。それは楽しいひと時です

 

  閑話休題  

 

昨日、新宿ピカデリーでMETライブビューイング、モーツアルトの歌劇「皇帝ティートの慈悲」を観ましたキャストはティートにジュゼッペ・フィリアノーティ(テノール)、セストにエリーナ・ガランチャ(メゾソプラノ)、ヴィッテリアにバルバラ・フリットリ(ソプラノ)、アン二オにケイト・リンジー(メゾソプラノ)、セルヴィリアにルーシー・クロウ(ソプラノ)ほか、指揮はハリー・ビケット、演出はジャン=ピエール・ポネルです。昨年12月1日、ニューヨークのメトロポリタン歌劇場で上演された公演のライブ映像です

このオペラの題材は紀元1世紀に実在したローマ帝国の伝説的名君、皇帝ティートをめぐる友情と寛大な心をテーマとするドラマです

前皇帝の娘ヴィッテリア(フリットリ)は、父から王座を奪ったティートを亡き者にしようと、自分を愛しているセスト(ガランチャ)に暗殺させようと企みます しかしセストは皇帝の部下であるとともに親友でもあったのです。ヴィッテリアに対する恋心を貫徹するため、セストは神殿に火を放ってティートの殺害を企てますが、驚いたことにティートはヴィッテリアを皇妃に選びます セストは自らの罪を告白し、次いでヴィッテリアはセストをそそのかした罪を告白します それを聞いたティートは寛大な心をもって二人を許します

オーケストラ・ピットの中で序曲を演奏するオケの面々が映し出されます。編成は左から第1ヴァイオリン、チェロ、ヴィオラ、第2ヴァイオリンという対向配置を取ります ヴァイオリン・セクションにはアジア人の女性奏者が目立ちます。いよいよMETにもアジア旋風が吹き荒れているのでしょうか

幕が開くと、中央にベッドが置かれ、ズボン役(男役の女性歌手)のガランチャとフリットリがそばにいます。一瞬、これはR.シュトラウスの「バラの騎士」と同じではないか、と思いました 同時に「皇帝ティートの慈悲」というオペラはこういう幕開けで始まったかな、と違和感を覚えました よく考えてみると、私は、モーツアルトの晩年のもう一つの歌劇「イドメネオ」と勘違いしていたこと、さらに私がこのオペラを観るのは初めてであることに気が付きました。このオペラは滅多にマナで上演されることがないので、一度も観たことがなかったのです。CDは持っていますが、DVDなどの映像媒体は持っていないので、聴いたことはあっても観たことはなかったのでした

このオペラは「皇帝ティートの慈悲」というタイトルが付いているように、主役はティートなのですが、ストーリーの鍵を握る中心的な役割を果たしているのはセストなのです その意味で、セストを歌い演じたガランチャの歌唱力と演技力は他の追随を許さないものがありました 彼女は前シーズンで「カルメン」のタイトルロールを歌ってその存在感を示しましたが、このモーツアルトでも素晴らしいメゾソプラノを聴かせてくれました 幕間のインタビューで、スーザン・グラハムから「アリアを歌いながら階段を下りる時、足元を見ないで下りてきたわね」と言われ、”よくそこに気が付いてくれた”と言わんばかりに、その場で飛び上がって「そうなのよ、練習したのよ」と答えているのが印象的でした

ティート役のフィリアノーティは、最初のうちは何とも頼りなげな感じがしましたが、後半にいくにしたがって”慈悲深い皇帝”に相応しい存在として認識するようになりました

ヴィッテリア役のフリットリは、幕間のインタビューで「この役は悪女の役だけど、どう思う?」と訊かれて「満足しているわ。ヴェルディのオペラのように刺されて殺されたり、首を絞められて死んだりしないで、最後まで生きているからね ヴィッテリアはたしかに悪女だけど、最後に悔悛するところがいいわね」と答えていました。

前日観た映画「レ・ミゼラブル」に出演していたアン・ハサウェイによく似ている歌手がMETに出ていたと書きましたが、何とその歌手がこのオペラに出ていたのです 配役表を見て、ズボン役のアン二オを歌ったケイト・リンジーというメゾソプラノであることがわかりました

あらためて二人を比べると、そっくりとまではいかないのですが、よく似ています まだ若い歌手で、METへの出演もまだ5~6回といったところのようです。ただ、最後のカーテンコールではガランチャやフリットリに負けないほどの拍手喝さいを浴びていました ケイト・リンジー・・・・これからの活躍が楽しみな歌手です

今回の公演が良かった要因の一つは極めてオーソドックスなジャン=ピエール・ポネルの演出です モーツアルトのオペラでは、演出でこねまわしてほしくないのです もう一つ、古楽奏法の権威者でもあるハリー・ビケットの指揮はメリハリが効いていて素晴らしかったです

METライブビューイング、モーツアルト「皇帝ティートの慈悲」はインタビュー等の特典映像・休憩時間を含めて上映時間:3時間6分で、入場料は3,500円(事前に座席指定を!)。11日(金)まで新宿ピカデリー、東劇ほかで上映中です

 

          

 

 

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ビクトル・ユーゴーの不朽の名作~映画「レ・ミゼラブル」を観る

2013年01月05日 06時59分09秒 | 日記

5日(土)。年末年始の9連休も残すところ今日・明日の2日間のみとなってしまいました 今年もあっという間に過ぎてしまいそうな予感がします 目標達成に向けて頑張ろう

話は変わりますが、私が小学生のころ、大正生まれの母は時々自分自身が小学生(尋常小学校と言っていた)だった時のことを話してくれたものです 授業が始まると、生徒たちは授業よりも先生の話の方が面白いので、みんな揃って「ジャンバルジャン ジャンバルジャン」とはやし立てて”ああ、無情”(レ・ミゼラブル)の話の続きをせがんだということです。”レ・ミゼラブル”は時代を超えた不朽の名作なのですね

 

  閑話休題  

 

昨日、新宿ピカデリーで映画「レ・ミゼラブル」を観ました 実は、今日から公開されるMETライブビューイング「皇帝ティートの慈愛」(モーツアルト)の指定席を予約するために行ったのですが、時間もたっぷりあるので数ある上映中の映画の中から「レ・ミゼラブル」を選んだわけです

この作品はヴィクトル・ユーゴ―の小説を基に、世界的にミュージカルとして上演されてきた「レ・ミゼラブル」をトム・フーバー監督が映画化したものです

1815年、ジャン・バルジャン(ヒュー・ジャックマン)は、妹のためにパンを盗んだ罪で19年も刑務所に服役していました 彼は仮出獄後に教会の銀食器を盗んで捕まりますが、罪を見逃してくれた司教に感銘を受けて改心します 1823年、工場主として市長にまで登りつめた彼は、以前工場で働いていて、娘を養うため極貧の生活を送るファンティーヌ(アン・ハサウェイ)と知り合い、幼い娘コゼット(成人後=アマンダ・セイフライド)の面倒を見ると約束します ある日、”ジャン・バルジャン逮捕”の知らせを聞いた彼は、無実の人を牢獄に送ることを忍びなく思い、法廷で自分の正体を明かし、再び執念深いジャベール警部の追跡を受けます その後、警部の追跡を逃れて、成人したコゼットとパリで暮らしますが、体制に不満を持つ学生たちの蜂起に巻き込まれ、心に深い傷を負います

ほとんど予備知識のないまま、この映画を観たのですが、ミュージカルを映画化したものだとは思いませんでした あくまでもユーゴ―の小説を映画化したものと思っていたので、最初のシーンで俳優が歌を歌い出した時は、あれっ?と思いました

次に驚いたのは、口パクでなく俳優が本当に歌っているとすれば、すべてのキャストがプロ並みに上手だということです

最後にジャン・バルジャンがファンティーヌの霊に導かれて天に召されていくシーンでは、会場のあちこちでハンケチで目頭を押さえる姿が見受けられました 感動的なシーンでした

キャストの中で最も印象に残っているのはジャベール警部役のラッセル・クロウです どこまでも”法律を守ることが正しいこと”としてジャン・バルジャンを追求していく鋭い目は頭に焼き付いています

もう一人、ファンティーヌを演じたアン・ハサウェイはメトロポリタン歌劇場のソプラノ歌手(ヴェルディの”ドン・カルロ”にも出演していた。名前は不明)にそっくりなのです 初めて見た時は、あの歌手がここで歌っているのでは と本当にびっくりしました。

新年最初に観た映画としては”正解”だったと思います ただ、この作品はやはり本物のミュージカルで観たいと思いました

 

          

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我々は戦闘のさなかにある~西加奈子著「炎上する君」を読む

2013年01月04日 07時03分01秒 | 日記

4日(金)。年末年始はコンサートの予定が入っていないので映画と読書が中心となっていますが、家で時間がある時はBGM代わりにクラシックを流しながら読書をしています ここ数日はクラウディオ・アバド指揮ロンドン交響楽団によるメンデルスゾーンの交響曲全集を聴いています 全交響曲(第1番~第5番)のほか「真夏の夜の夢」序曲などが収録されていますが、どれもが若き日のアバドの溌剌とした演奏です これまで、まとめてメンデルスゾーンを聴く機会はなかったですが、こうやって集中的に聴いてみると、あらためて彼の天才を感じます。どのオーケストラでもよいから「メンデルスゾーン・ツィクルス」をやってくれないでしょうか メンデルスゾーンは”ヴァイオリン協奏曲ホ短調”や”真夏の夜の夢”や”交響曲第4番『イタリア』”ばかりではありません。ほかにもいい曲がたくさんあります

 

          

          

 

  閑話休題  

 

西加奈子著「炎上する君」(角川文庫)を読み終わりました 著者のプロフィールによると、1977年テヘラン生まれ、大阪育ち。関西大学法学部卒業後、2004年「あおい」でデビュー、2008年に「通天閣」で織田作之助賞を受賞しています 数年前、NHK-BSテレビの「週刊ブックレビュー」でコメンテーターの一人として出演していて、関西弁でお薦め本をコメントしていたのを思い出します

この本は「太陽の上」、「空を待つ」、「甘い果実」、「炎上する君」、「トロフィーワイフ」、「私のお尻」、「舟の街」、「ある風船の落下」の8つの短編から成ります

「空を待つ」は、作家である私は、ある日散歩中に自分と同じ機種の携帯電話を拾います。待ち受け画面は”空”でした その携帯に届いたメールに何の気なしに返信したところ、また返信がきます 相手は自分のことを知らないはずなのに、作家としてスランプに落ち込んでいる自分を励ましてくれます。そして遂に自分でも納得のいく作品を書き上げます。最後まで男か女かも分からない相手からの返信を待ちます

この作品は、自分自身がケータイを失くして間もない時に読んだので、他人事とは思えませんでした 誰かが私のケータイを拾って、そこに誰かからメールが届きます。発信者は私が知っている人ですが、ケータイを拾った人は発信者を知らない人です その人はどうするでしょうか?そんなことを考えてしましました

「炎上する君」は、男っぽい女二人、梨田と浜中は、足が炎上している男の噂話ばかりしていましたが、ある日、銭湯にその男が現われ、彼女たちは彼を追いかけます 彼と会話をした彼女たちは、間もなく自分たちの足が炎上することに気が付きます

梨田も浜中もあえて女性を意識した化粧や言葉使いを避け、お互いに監視していましたが、”炎上する男”に会った時から”女”を意識するようになります そして宣言します。「我々は、戦闘のさなかにある。恋という、戦闘である

そして恋愛中の者たちに向けメッセージを送ります

「恋愛のさなかにいる君、恋の詩をつづる君、恋の歌を歌う君よ。

周辺の人間に、馬鹿にされるだろう、笑われるだろう、身の程知らずだと、おのれを恥じる気持ちにも、なるだろう。だがそれが何だというのか

君は戦闘にいる。恋という戦闘のさなかにいる。誰がそれを、笑うことが出来ようか 

君は炎上している

その炎は、きっと誰かを照らす。煌煌と。熱く。

君は、炎上している

著者のこのメッセージは強いものです。チャラチャラしてないで本気であたれ これは戦闘だ と言っているようです。

「ある風船の落下」も面白い作品です ストレスがガスとなり、身体を膨張させて、ついには体が浮き上がる「風船病」にかかったハナの話です。風船病にかかった多くの患者が空に浮かぶ中にハナも仲間入りしますが、そこで知り合ったギョームに説得されて再び地上に落ちていくことになります 西加奈子の作品を読むのは初めてですが、発想が面白いと思いました

 

          

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西加奈子「炎上する君」、道尾秀介「球体の蛇」、ローレンス・ブロック「償いの報酬」他を買う

2013年01月03日 07時45分05秒 | 日記

3日(木)。昨日は狭山の実家に年始のあいさつに行き、母の入院するS病院に見舞いに行きました。幸い熱も下がり安定しているとのことで安心して帰ってきました 久しぶりに西武新宿線狭山市駅で降りた息子は、西口再開発が完了してすっかり様変わりした光景に驚いていました 再開発で何もかも新しく便利になったのですが、どこに行っても同じ風景という現状には複雑な思いがします

 

  閑話休題  

 

本を4冊買いました。1冊は西加奈子著「炎上する君」(角川文庫)です。西加奈子は著者略歴によると1977年テヘラン生まれ、大阪育ちとなっています。数年前のNHK-BS「週刊ブック・レビュー」でコメンテーターの一人として大阪弁でお薦め本を解説していたのを思い出します

 

          

 

2冊目は道尾秀介著「球体の蛇」(角川文庫)です。道尾秀介の作品は文庫本になるのを待ってほぼすべて読んでいますが、ハズレがありません

 

          

 

3冊目は桜庭一樹選「謎007 スペシャル・ブレンド・ミステリー」です。猛烈な読書家で有名な桜庭一樹が1976年、1986年、1996年から各年代を代表する作品を厳選した7つの短編集です

 

          

 

4冊目はローレンス・ブロック著「償いの報酬」(二見文庫)です。ブロックの作品は過去に何冊か読んでいますが、独特の語り口で読者を魅了します

 

          

 

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健さんの飲みっぷりに注目~降旗康男監督、高倉健主演映画「あなたへ」を観る

2013年01月02日 07時25分08秒 | 日記

2日(水)。昨日の年の初めは、いつも通り7時前には起きてブログを書いてアップ、子どもたちはまだ寝ているので、それぞれ100ページにも及ぶ朝日と日経の元旦号を読みました 読み応えがあるのですが、正直言ってまったく興味のない特集もあります 何より新聞配達の皆さんが大変だと思います。もっと他の日に振り分けて平準化してはいかがでしょうか

新聞を読みながらBGMに今年の初CDを聴きました 「ザ・ベスト・オブ・マリア・カラス」の第1集と第3集です。これは年末に観た映画「終(つい)の信託」で使われていたプッチーニ「ジャンニ・スキッキ」のアリアがきっかけです

第1集にそのアリア「私のお父さん」が収録されています。ほかにはベッリーニ「ノルマ」の「清らかな女神よ」、プッチーニ「トスカ」の「歌に生き、恋に生き」などの珠玉のアリアが詰まっています

 

          

 

第3集にはジョルダーノ「アンドレア・シェニエ」の「亡くなった母を」、ヴェルディ「イル・トロヴァトーレ」の「恋はバラ色の翼にのって」などのアリアが収録されています 今は亡きマリア・カラスですが、彼女のドラマチック・ソプラノはCDを通して人々の感動を呼びます

 

          

 

11時過ぎにお雑煮をつくり、アラスカのおせちと一緒にいただきました。年の初めということで、日本酒の冷酒 で乾杯しましたが、息子はお猪口一杯だけ、4合瓶の残りを娘と私とで空けました。娘の日本酒好きはいったい誰に似たんだろう

 

          

 

  閑話休題  

 

池袋の新文芸坐で降旗康男監督「あなたへ」を観ました この映画は健さんの205本目の作品とのことです

富山刑務所の指導技官・島倉英二(高倉健)のもとに、ある日、亡き妻・洋子(田中裕子)が遺した絵手紙が届きます そこには「故郷の海を訪れて散骨してほしい」と書かれていました。島倉は内装を手作りしたキャンピング・カーを運転して長崎まで1,200キロの旅に出ます 途中、山頭火の歌に心酔する自称・元国語教師(北野タケシ)、ずうずうしいが何故か憎めない駅弁の店頭販売員・田宮裕司(草なぎ剛)とその同僚・南原慎一(佐藤浩市)などと出会い、交流を深めながら目的地にたどり着きます現地の郵便局で”局留め”になっていた絵手紙には「さようなら」とだけ書かれていました。島倉は、洋子がどういう気持ちでそれを書いたのか、どういう意味があるのか分からず悩みます 散骨のための船を探す中、ある嵐の夜、食堂の女主人・濱崎多恵子(余貴美子)にその話を打ち明けます。それを聞いて自らの体験を話す彼女の言葉に島倉は救われます。そして、妻の願いどおりに長崎の海に散骨を済ませます。人には、それぞれの時間の流れがある。自分自身の人生を楽しんでほしい。それが「あなたへ」のメッセージだったのです

映画で本当に久しぶりに健さんを観ました。”健さんも年をとったなあ”というのが正直な感想です 1か所だけ昔と変わらないなあ、と思ったシーンがあります。それは、旅の途中で駅弁の店頭販売員の二人と居酒屋でビールを飲むシーンです。大事なものを扱うようにビール・ジョッキを持って、いかにも美味しそうにグッと飲んで”プハー、旨い!”という表情を見せるのです その表情はまさに1977年の山田洋次監督「幸福の黄色いハンカチ」で、網走刑務所から出所したばかりの島勇作(高倉健)が食堂でビールを飲むときの仕草・表情とまったく同じなのです 思えばあの映画から35年以上の年月が流れているわけですが、そこには”変わらぬ健さん”がいました

 

          

 

  も一度、閑話休題  

 

クラシック音楽好きのご家庭では、1日の夜はNHKテレビで「ウィーン・フィル・ニューイヤーコンサート」をご覧になるのが慣例だと思います ところが、クラシック音楽好きな私が居るわが家では、普段、私がテレビを観ないのでチャンネル権が無いに等しいのです もっとも、番組表を見ると今年の指揮は現在のウィーン・フィルの常任指揮者フランツ・ウェルザーメストとのこと。彼のファンには申し訳ないのですが、全く魅力を感じません これが、今は亡き、華麗な指揮者カルロス・クライバーや、いかにもウィーン・フィルのメンバーに自由に演奏させているように見せながら実は巧妙にコントロールしていたジョルジュ・プレートルのような指揮者であれば、何が何でも観るのですが・・・・・・その意味では、今のクラシック音楽界はスター不在とも言え、寂しい思いです

また、このニューイヤーコンサートは毎年、ライブ録音の上ほんの数か月後にはCD化され販売されるので、生の緊迫感や有り難さが薄れているように思います。個人的には指揮者を問わず毎年CD化というのが、いかにも商業主義的で好きではありません

 

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