建長寺 びゃくしんの木(2009年秋)
建長寺には燃える木がある ― 。
生きている木がある。生きてもだえる木がある。
鎌倉建長寺に行くたび、そう思う。樹木の名は柏槇(びゃくしん)。三門を抜けて、針葉樹の巨大古木群が巨人たちのように並ぶ。大きいのは樹齢750年、高さ13メートル、樹木の周囲は7メートルもある。成長は遅いが、修行すればここまで大きくなるという禅の教えに通じるということでよく禅寺に植えられると言われます。(冒頭の写真は建長寺では小さいものです。)
あの、燃える炎のような針葉樹の葉のかたまり、上へ上へと命のように燃える、もだえるような形は、一度見たら忘れられません。三門から列をなして並ぶ樹木群は、すごいな、という以前に見とれてしまいます。あれは、生きているかたまりです。植物や動物というより、命のかたまりに見えます。
太い幹はよじれ、肉体のままです。よじれながら太く、大きく、空を目指していく。奔放に枝を、太い腕を、肉体の関節を無視して空間を侵食して伸びていく。しばらく、圧倒されてしまいます。
木は、鑑賞されるものではなく、まさしくたくましく生きていくものであることをまざまざ見せてくれます。こんな情欲っぽい、幹や枝や、炎のような針葉の束を見て、禅僧は修行ができたのだろうか。いや、こんな命の炎のような激しさを見るからこそ、修行になるのだろうか。
法堂の天井画「雲龍図」小泉淳作画伯
またまた、龍。(残された名宝 ― 竜虎と麗しき官女)
境内の柏槇(びゃくしん)に感嘆しながら、法堂(はっとう)の入口をくぐって天井を仰ぐと、巨大な龍が描かれています。日光東照宮の天井画「鳴き龍」は有名ですが、十余メートル四方のこの龍も、あれと同じくらい迫力があります。鳴いたりはしませんが、音なき音で、無音の声を発している感じです。(この「雲龍図」は平成14年に公開されたばかりです。)
「燃える木」と龍と禅僧―。いつか、そんな組み合わせの物語を、ここ鎌倉の禅寺を舞台に展開してみたい、そんな激しくも落ち着いた心の境地になりました。(2009年秋の頃)
最新の画像[もっと見る]
※コメント投稿者のブログIDはブログ作成者のみに通知されます