上州のなにがしなる村に、
鑿を研ぎ、樹齢400年のけやきに、
彫りを渡世にする男があった。
どんな男か。
頑丈でどんな道でも衝き進んで行ける、
小さい車に乗った、6月のはじめ、
塚原卜伝、護身法印相の免許皆伝を持つ、
武術にも長けた彫物大工は、
1808年、榛名神社の海老紅陵の龍を彫り上げた翌年、
77歳、彫りかけの観音様を見ながら、土間の入り口で、
生涯を閉じた。関口文治郎。
知らせを聞いた、榛名神社の氏子たちは、
「稼ぎを全部神社に寄付をした大棟梁」と、
鍬を置いて、東の空に手を合わせた。
大胆な紅陵の彫りに、
訪れた花輪彫刻集団の彫物大工たちは、
独自の流儀を作り出していきます。
チョウセンヨナメ
サワギキョウ